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イベリス

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第九十二話 合宿を終えてその十三

「同じです」
「あの人もですか」
「あまりにも酷いので」
「救われなかったんですね」
「そうです」
 まさにというのだ。
「あの人は」
「救われるにもある程度のものが必要ってことですか」
「このことは本当に何度もお話しますが」
「人間でなくなるとですね」
「そうなります」
 咲に真剣な顔で話した。
「救われなくなります」
「どんな宗教でも哲学でも救われないとは」
「あまりと言えばあまりですね」
「はい、本当に」
「そうならない様にします」
 咲は心から思って言った。
「私も」
「そうされて下さい、流石にそうはないですが」
「餓鬼になってですね」
「誰からも救われなくなることは」
 それはというのだ。
「そうはないです、ですが」
「あるんですね」
「そうです、そうした人を見ることは残念なことです」
 速水はこうも言った。
「やはり」
「占い師さんも人を救うことがお仕事だからですね」
「人生の道標を出させてもらって」
 そのうえでというのだ。
「そうさせてもらいます」
「だからそう思われますね」
「はい、本当に」 
 まさにというのだ。
「ですから一人でもそうした人が減ることを祈ります」
「流石にそうはいなくても」
「よりです」
「そうですか」
「それも私の願いの一つです」
 咲に確かな顔で話した。
「流石にそこまで堕ちると難しいですが」
「救われることは」
「何しろどんな宗教も哲学も無理なので」
 救うことはというのだ。
「どうしても」
「やはりそうですね」
「ですが出来るだけです」
「一人でも多くですか」
「そうした人が減って欲しいです」
 こう言うのだった、そしてだった。
 速水は仕事にかかった、咲もまた自分の仕事にそうした。そのうえでこの日一日を過ごしたのだった。


第九十二話   完


                 2022・12・23 
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