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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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メモリーデイズ

 
前書き
以前・・・といっても三年近く前にリクエストいただいてたメモリーデイズがようやくうまく構想ができたので書いてみました。
ウェンディが絡まないからどうしようかと思ったけど、エクシードトリオを置いてきぼりにすればいいんじゃね?という楽観的思考の元出来上がりました。
まぁずいぶん前なのでリクエストくれた方がもう読んでいない可能性は大いにありますが( ̄▽ ̄;) 

 
シリルside

「あれ?ナツさんどこにいるのかな?」
「こっちの方にはいないみたいだよ」

遡ること約9年前、これは俺たちが妖精の尻尾(フェアリーテイル)に加入したばかりの頃のお話。ウェンディと俺はギルドの入り口で拾ったものを抱えながらナツさんを探すためにギルドをうろうろと歩いている。

「ナツなら、エルザたちと倉庫の片付けをしてるわよ」

困っている俺たちに声をかけてくれたのはミラさん。カウンターから身を乗り出した彼女からそう言われ、俺は持っていたマフラーを見せながら理由を話す。

「これ、ギルドの入り口に落ちてたので・・・」
「ナツさん困ってるかなって」
「珍しいわね、こんな大切なマフラーを落としちゃうなんて」

このマフラーはナツさんの親であるイグニールからもらったものだから大切にしてるって話だったのに、ギルドの前に無造作に置いてあったから気になってしまったんだよね。

「よほどボーッとしてたんじゃない?」
「それも含めて珍しいよね~」

心ないシャルルの辛口コメントに対しセシリーがそれを宥めるようにそう言う。それを聞いてミラさんは楽しそうに笑っていた。

「じゃあ倉庫まで行こっか」
「そうだね」

早めに渡してあげた方がいいと思い倉庫へと駆けていく俺たち。そう言えばナツさんたち、街の建物をいつものノリで壊したから今日はその罰って言ってたっけ?仕方ないから俺たちも手伝った方がいいかな?

そうこうしているうちに倉庫へと着いた俺たちは静かに扉を開く。そこには散乱している本を片付けているナツさんたちがいた。ただ、ナツさんは具合が悪いのかしゃがみこんでいたけど。

「あのぉ・・・」
「ナツさん、これ・・・」

とりあえずそのまま中に入っていくと俺たちに皆さん気付いていないようでナツさんの方を見ている。そのせいだろうか、脚立に登って作業していたルーシィさんがそれごと倒れそうになってしまった。

「ルーシィ危ない!!」
「きゃあああああ!!」
「「ルーシィさん!!」」

近くにいたナツさんたちと同様に俺とウェンディもマフラーを投げ捨てて彼女を助けるために飛び込む。全員が同様の考えの元に飛び込んだおかげか、ルーシィさんは地面に落下することなく無事に救出することができた。俺たちは全員座布団みたいに重なっちゃってるけど。

「ナツ!?大丈夫!?」
「ウェンディ!?」
「シリル~!!」

反応が遅れたエクシードトリオは慌ててそれぞれの相棒の容態を確認しようと寄ってくる。それに答えようとした時、棚から一冊の本が地面に落ちた衝撃で開かれると、目映いばかりの輝きを放つではないか。

「なんだ!?」
「本が・・・」
「光出した!?」

目をくらますほどの光に飲み込まれた俺たち。そのまま俺たちはその不思議な光を放つ本を眺めていることしかできなかった。
















第三者side

「うぅ・・・」
「眩しかった~」
「何なのよ、もう・・・」

あまりの眩しさに手で顔を覆っていたハッピーたちは少しずつ目を開いていく。すると彼らはある異変に気が付いた。

「あれ!?」
「シリルたちがいない~!?」
「なんで!?」

彼らの目の前にいたはずのシリルたちの姿がその場からいなくなっていたのだ。輝きを放っていた本とともに。
















シリルside

しばらくすると本の輝きが落ち着いていく。元通りになったそれを見ながら俺たちは各々楽な姿勢へと体勢を変えた。

「なんだったんだ?一体」
「すごい光でしたね」
「ビックリしました」

先程のことに驚いていた俺たち。すると、周囲を見回していたグレイさんが何かに気付きました。

「あれ?」
「ここは・・・」

続いてルーシィさんとナツさんも同様にそれに気が付きます。そして俺たちもその明らかな変化にようやく気が付きました。

「外!?」

さっきまで倉庫内にいたはずなのに俺たちはなぜか外にいる状態。しかも、それだけじゃなくもう一つ明らかな変化がありました。

「あの!!こっちを見てください!!」
「うちのギルドってこんな感じでしたっけ?」

俺たちの後ろにあるのは《FAIRYTALE》と書かれていることからうちのギルドだと思われる建物がある。しかし、その外観は俺たちが知っているものとは明らかに違っていました。

「ギルドが昔に戻ってるぅ!?」

今のギルドは幽鬼の支配者(ファントムロード)に壊されて建て直したものだった。しかしそれが元に戻っているというのは一体どういうことなのだろう。

「どうなってるんだ一体・・・」
「この本のせいなのか?」

先程輝いていた本を手に持って困惑しているエルザさん。すると、ギルドの中からこちらへと向かってくる人影が見えてきました。

「誰か出てきた」
「あれ?この匂い・・・」
「ひとまず隠れましょう」
「なんで?」

よくわからないけどここは隠れた方がいいような気がしたため近くにあった木箱の影に隠れ様子を伺う。そして先程の人影の方を見ると、そこには予想外の人たちが出てきました。

「「「「「!!」」」」」

緋色の髪の少女にその後ろから睨み合って出てくる桜髪の少年と黒髪の半裸の少年。それは紛れもなく、ナツさんたちの子供の姿。

「今日は二人がかりか?」
「俺一人で十分だよ!!」
「そりゃこっちのセリフだ!!」

明らかに中が悪そうなナツさんとグレイさん。エルザさんも怒っているようだけど、二人はそれを気にすることなく彼女へと突進する。

「俺は今日こそ!!」
「エルザに勝つ!!」

二人同時に飛びかかったナツさんとグレイさんらしき子供。それを迎え撃ったエルザさんらしき子供は不敵な笑みを浮かべたかと思うと、瞬く間に彼らを叩きのめしていました。

「いや!!強すぎ!!」
「ものの一瞬で・・・」

あまりの出来事に驚いている俺とちょっと引いているウェンディ。その俺たちの横では、ルーシィさんが何やらぶつぶつと呟いていました。

「何これ・・・小さいエルザにナツとグレイ・・・」
「ルーシィさん・・・俺たちもしかして・・・」
「過去の世界に来ちゃったとかじゃないですよね?」
「えぇ!?」

考えられるとしたらそう。だってあまりにも出来すぎてる。エルザさんたちにあの子たちは似すぎているし、ギルドもナツさんたちの記憶にある姿。とても俺たちが夢を見ているとは考えにくい。

「どうした?もう終わりか」

伸びている二人に得意気な表情の小さいエルザさん。そんな彼女とは真逆で、ルーシィさんの顔色は悪い。

「過去・・・そんなまさか・・・ここは、過去の世界ってこと?どうしよう・・・少し整理しなきゃ・・・」
「「小さい俺に何しやがるエルザ!?」」
「うわっ!!もう順応してる!!」
「さすがというか・・・」
「何も考えてなさすぎのような・・・」

困惑している俺たちに対しナツさんとグレイさんはもう理解できているよう。いや、この二人じゃ何も考えてないだけとも思えるけどね。

「私は、この日を覚えているぞ」

俺たち同様に驚いていたエルザさんだったが、彼女もここが過去の世界と理解した途端、そんなことを言い出した。

「『立て、立ち上がるんだ』。幼い私がこの直後に言う言葉だ」
「「え?」」

エルザさんの中でこの日の出来事は相当印象深かったのか、そんな感動的な言葉を言っていたらしい。きっと彼女なりのエールだったのだろうと俺たち全員がその言葉を待っていると、確かに彼女はそう言った。

「立てぇ!!立ち上がるんだぁ!!」

倒れている二人を蹴り上げながら。

「「全然イントネーション違うじゃねぇか!!」」
「う・・・ううむ」

これは彼女も記憶違いだったらしく恥ずかしそうに頬を赤らめていた。その間も小さいエルザさんは相当ご立腹らしく二人を追いかけ回している。どうやら二人が彼女のケーキを食べたみたいだけど、二人とも否定しておりひたすら逃げ回っているみたいだ。

「なんかかわいいね、みんな」
「そうですね」
「仲良しですね」

この頃から三人は仲が良かったのか、この追いかけっこしている姿も微笑ましく見えてしまう。ナツさんとグレイさんは嫌な記憶が蘇ったのか、ドン引きしてましたけど。

「呑気なことを言ってる場合じゃないぞ、元の世界に戻る方法を探さねば」

そんな中真っ先に冷静さを取り戻したエルザさんは険しい表情でそう言う。そもそもなんでこんなことになったのか全然わからないから、まずはそこからの解明になるのだろうか?

「なんで?いいじゃん別に、面白そうだからもう少し見ていこうぜ」
「そいつはいい」
「バカモノ、タイムパラドックスという言葉を知らんのか」
「「タイムパラドックス?」」

聞いたことのない言葉に顔を見合わせる俺とウェンディ。すると、ルーシィさんがわかりやすく解説してくれた。

「本で読んだことがあるわ。過去は未来・・・現代に影響を与える。過去に何かをしたことによって、未来が変わってしまう危険性、逆説の理論」
「もしここが、本当に過去の世界だとしたら、私たちが何かをしたことで未来が・・・歴史までも変わってしまう可能性だってあるんだ」
「「ゴクリッ」」

未来が変わってしまったらもしかしたら大変なことになりかねない。そう考えるとかなり危険であることを理解した俺たちは唾を飲む。

「いいか、ナツ、グレイ---」

この中でもっとも問題を起こしそうな二人に釘を刺そうとしたエルザさん。しかし先程まであったはずの二人の姿がそこにはない。

「もういない!!」
「早っ!?」
「どこにも姿が見えませんよ」

いつの間にいなくなったのか全然わからなかった。するとエルザさんはあまりの状況に呆けたかと思うとすぐに自分を取り戻す。

「な・・・あいつら・・・ここまでバカモノとは思ってなかったぞ!!」
「「「ひいいいい!!」」」

相当ご立腹のようでエルザさんの目が本気になっている。これはまずい、非常にまずい。

「ルーシィ!!シリル!!ウェンディ!!あいつらを探してくるんだ!!私はここで本の解読をする!!」
「「は!!はい!!」」
「行ってきま~す」
「待て」

言われるがままに二人を探しに行こうとした俺たち。しかし、そんな俺たちを指示を出したエルザさんが引き留めたかと思うと、どこから取り出したのか明らかに普通ではない衣装に無理矢理に着替えさせられた。

「うん、これなら誰もお前たちとは気付くまい」
「いやいや!!」
「余計目立つわよ!!」
「エルザさんは・・・猫?」

ウサミミのバニーガールになったルーシィさんとフリフリの犬耳が付いたミニスカ姿にされた俺。ウェンディは肩もお腹も足も露出させられた茶色の・・・なんだこれ?きつねなのかな?そんな可愛らしい衣装に変えさせられており、エルザさんはノリノリで猫耳の衣装になっている。

「てかこの時代って、あたしたち妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいないじゃん」
「だが、いずれ出会うことになる。私たちと接触するのは危険だ」
「それはわかるんですけど・・・」
「この服はさすがに何とかなりませんか?」

ルーシィさんとウェンディは露出も高いし俺に関しては性別が合ってない。元の服に戻してくれないかと尋ねたところ、エルザさんの換装の調子が悪いらしくこの衣装以外出せない上に、元の服がどこにストックされてるかわからなくなったらしい。

「いいから早く行ってこい!!見つけたらここに戻ってくるんだぞ!!」
「「「は~い・・・」」」

しぶしぶ二人を探しに行く俺たち。セシリーたちがいれば、空からすぐに探せ・・・いや、それをするとマグノリアの人たちに俺たちのことがバレるからダメなのか。

「どうします?ルーシィさん」
「手分けして探すしかないわよね。あたしはギルドに行ってみるから、二人も手分けして探してみて」
「わかりました」

とりあえず二組に別れることにした俺たち。ルーシィさんはギルドに向かったけど、三人だとさすがに怪しすぎるので俺たちは街の中を探すことにする。

「二人の匂いする?」
「時代が違うからかな?なんかよくわかんないんだよね」

二人の匂いを追いかければすぐに見つかると思ったけど、時代が違うせいなのかうまく匂いが辿れない。仕方がないのでしばらく人目につかないように注意しながら散策をしていると・・・

「おい」

後ろから不意に声をかけられ、振り返る。

「姉ちゃんたち何?その格好」

そこには白髪をポニーテールに束ねた目付きの悪い女の子がいた。

「あ・・・いや・・・」
「これは・・・」

どこか見覚えがあるような少女にそんなことを言われて恥ずかしさと説明しようのない状況にハニカミしかない。

「姉ちゃん!!」
「お姉ちゃん!!」

どうしようかと考えていると、彼女の後ろからまた二人の小さい子・・・といっても同い年くらいだけど、男の子と女の子が走ってくるって・・・

「あれ?エルフマンさんぽくない?」コソッ
「その隣はリサーナさん?」コソッ

弱々しい印象を受けるけどエルフマンさんの面影が少しある少年とその隣はほぼ間違いなくリサーナさんと思われる少女。ん?待てよ・・・

「その二人がお姉ちゃんということは・・・」
「この子ってまさか・・・」

俺たちの頭の中に浮かんでくる一人の人物。いつも笑顔で優しげな表情を見せ、ギルドの雰囲気を癒してくれている女性の姿。

「あ?何だよ、その顔」

しかし目の前にいる少女はそんな面影など一ミリも残さないほど狂暴な目付きで呆気に取られていた俺たちを睨み付けていた。

「ミラさん・・・ってこと?」
「何?あんたら私のこと知ってるの?」

思わず口走った名前を聞き逃さなかった少女。それで俺たちは何かを確信し、視線を混ぜ合わせると・・・

「さようなら!!」
「逃げろ!!」
「あ!!おい!!」

彼女たちに背を向け振り返ることなくダッシュで走り出す。

「ヤバイヤバイ!!」
「あのミラさんはヤバすぎる」
「いや、そうじゃなくて・・・」

あれが魔人ミラジェーンさんかとも思ったものの、それ以上にこの時代の人と接触してしまったことがまずい。しかもよりによってギルドの人たちに。

「あれ?ウェンディ」
「何?」
「あの人たちも見たことない?」

後ろから追いかけられている気配もないため脚を緩めると、前方に見たことがある男性が二人。あれは・・・マカオさんとワカバさん?

「わぁ!!二人とも若いね」
「ここって何年くらい前なのかな?」

俺たちの記憶よりも遥かに若いマカオさんとワカバさん。その二人が見ているのは、ショートヘアの綺麗な女の人。

「よし、行ってくるぜ」
「おいおい、マジかよ」
「大丈夫だ、俺には勝算がある」

何やら意を決したようにその女性の元へと駆けていくマカオさん。もしかしてあれがマカオさんの奥さん?しかも二人めっちゃ仲良さそうに話してる!!

「なんかすごいところ見ちゃったね」
「びっくりしたね」

ちょっとドキドキしながらこれ以上見るのは申し訳ないとその場を後にする俺たち。その後も行く先々で昔の皆さんのような人たちを見かけたことによりナツさんとグレイさんを探すことができなかった俺たちは、日も落ちてきたため一度ルーシィさんと合流するためにギルドの方へと向かった。
















「ルーシィさん!!」
「シリル、声大きいよ」

バニーガールの姿で何やら叫びながら頭を抱えていたルーシィさんを見つけ、駆け寄っていく。彼女もそれに気が付いたようでこちらに向き返る。

「シリル!!ウェンディ!!どう・・・!!」

こちらを向いた彼女は手をあげたかと思ったら、突然動きが止まった。それと同時に背後から何かが駆けてくる音が次第に大きくなってくる。

「誰かぁ!?」
「「え?」」

その音の方に視線を向けるとこちらへと飛び込んでくる馬車。これにはたまらず俺たち三人は倒れるように回避することしかできない。

「助けてぇ!!馬が暴走しちまった!!」

そう言いながら懸命に馬車を追いかけている小太りのおじさん。彼は力尽きたのかその場に倒れると、とんでもないことを言い出した。

「あの馬車の中にはお客様が・・・」
「「「え?」」」

それを聞いた瞬間、俺たち三人の脚は一斉に動いていた。歴史の改変とかそんなことは関係ない、とにかく目の前の命を守らなければならないと。しかし、馬車に普通に走っては追い付くわけがない。

「待ちなさ~い!!」
「待ってぇ!!」

女子供の脚力ではとても追い付けない、むしろ離されているような感覚まである。そんな時に俺はある名案が思い付いた。

「ルーシィさん!!手を貸して!!」
「え!?」
「いいから早く!!」

思い付いたが吉日、この中で一番受け身がうまそうなルーシィさんの手を取る。

「ウェンディ!!俺にアームズして!!」
「なんで?」
「いいから!!」
「わ!!わかった!!シリルにアームズを付加(エンチャント)!!」

彼女の魔法により攻撃力・・・というか恐らく身体能力が上がったと思われるタイミングでルーシィさんの両手を握り、身体を回転させながら遠心力で彼女を馬車の方へと投じる。

「え・・・ちょ・・・きゃああああああ!!」

悲鳴とともに宙を舞うルーシィさん。彼女は狙い通りに馬車の真上に落ちてくれたことにより、ホッと一安心。

「シリル、さすがにあれは危ないと思うよ」
「でもああでもしなきゃ追い付けなかったじゃん」

さすがに力が入ったことで息が上がっている俺にウェンディが声をかける。その頃ちょうど前方ではルーシィさんが馬の手綱を外したところらしく、馬車は少しずつ減速していた。

「とりあえず、追いかけよっか」
「そ・・・そうだね」

まだ呼吸が荒いけど、これ以上の騒ぎを起こすのは良くないとルーシィさんを迎えに行く。その時後ろから馬車のお客さんと思われる人の名前を叫びながら追いかけてくる人たちがいたけど、俺たちはそこまで意識が向いていなかったため、その名前を聞き取ることはできなかった。
















「ルーシィさん!!」
「シリル!!ウェンディ!!ここから離れよう!!」

俺たちが追い付いたのとほぼ同じタイミングでルーシィさんが止まっていた馬車から飛び降りる。俺たちの後ろの人たちの声が彼女にも聞こえていたことから、すぐにでも離れないとと察してくれたらしい。

「そういえば、ナツとグレイ見つかった?」
「いえ」
「どこにいったんでしょうか」

走りながら探していた二人の話しになるが、案の定ルーシィさんも見つけられなかったらしい。仕方がないので一度エルザさんの元へと戻ろうとしたところ、鬼の形相になっている彼女を見つけた。

「ルーシィ!!シリル!!ウェンディ!!」
「どうしたの?そんなに慌てて」
「どうしたもこうしたもない!!まずいことになった!!」

どうやら彼女は怒っていたわけじゃなくて焦りからそんな顔になっていたらしい。事情を聞こうとしたところ、今度は確実に嗅いだことのある匂いを発見した。

「あっちの方からグレイさんの匂いがします!!」
「何?急がなければ!!」

俺が指さした方向に全速力で駆けていくエルザさん。それに俺たちは困惑したが、後をついていくように駆けていくと、こちらへ向かって歩いてきているグレイさんの姿を発見できた。

「グレイ!!もう逃がさんぞ!!」
「エルザ!?なんだそのゴハッ!!」

グレイさんの顔面目掛けて投じられた分厚い本。それは見事にクリンヒットし、彼は力なく地面に伏していた。

「全く・・・お前たちという奴は・・・」
「痛そう・・・」
「すごいね、エルザさん」

ブーメランのように彼女の手元に戻った本。恐らく大ダメージであろう彼を見て青くなっている俺とは正反対に、ウェンディは目をキラキラとさせていてちょっと引いてしまう。

「あれ?ナツは一緒じゃないの?」
「ナツならまだ土手にいるんじゃねぇのか?つうかお前らその服・・・」
「「/////」」

金髪のカツラを着けて変装しているグレイさんの指摘に赤らめる俺とウェンディ。そうだよ、変装って彼みたいな感じにするのが普通なんだよ、エルザさんの感性がおかしいだけなんだよ。

「まずいぞ、時間がない」
「どうしたっていうんだよ」
「走りながら話す、とにかく今はナツのところに早く向かわねば。このままでは私たちは、元の時代に帰れなくなる」
「「「えぇ!?」」」

まだ事情を聞いていなかった俺たちは?を浮かべることしかできないけど、そんなことを言われてしまってはとにかく彼女についていくしかない。すると、彼女が解読した本『メモリーデイズ』の効果と一緒に話された。

「この本はメモリーデイズといって、本を開いた時、一番思い出そうとしている時間へと飛んでしまうのだ」
「あの時ナツは首の傷のことを思い出そうとしていたでしょ?」
「ここがその傷?がついた時代ということですか?」

倉庫の整理の際に俺たちはいなかったため詳しくはわからないけど、ナツさんの首もとには傷がついていてそれをつけた相手の話を聞こうとしたら彼がひどく恐怖したらしい。ちょうどそのタイミングで俺たちが来て、ルーシィさんが脚立から落ちてしまったらしい。

「恐らくな。だから私たちはナツの思い出の時間に飛ばされてしまったというわけだ」
「それと帰れなくなるっていうのは、どういう関係があるっていうんだよ」
「本来この魔法は思い出した本人・・・つまりナツ一人だけをその時代へ飛ばしてしまうものなのだ。しかし、その時本人に触れていたものにもその力は及んでしまうらしい」
「この本の効果は6時間しかないの。6時間したら自動的に思い出は終了」
「ナツだけが、元の時代へと強制的に戻される」
「「「んな!?」」」

いつの間にかルーシィさんが本の内容を把握していたことは置いておいて、そんなことを言われてしまってはもう焦るしかない。

「ちょっと待て!!俺たちはどうなるんだ!?」
「ナツさんだけが戻されるってことは・・・」
「帰れなくなっちゃうってことですか!?」
「そう言うこと!!ナツの思い出終了の時刻に、ここに来た時と同じようにナツに触れてなきゃいけないのよ」
「「えぇ!?」」
「そんな・・・」
「急げ!!時間がないぞ!!」

どうやらもう強制終了まで残り少ししかないらしくとにかくナツさんの元へと急いで向かう。

「「「「「ナツ(さん)!!」」」」」

しばらくすると俺たちは見たことがない河原で黒い長髪のカツラを被っているナツさんと彼の小さい頃の姿が一緒にいるのが見え、さらに走る速度を加速させる。

「そこを動くなぁ!!」
「誰なんだお前ら!?うわあああああ!!」

ナツさんに何をされていたのかわからないけど涙目になっていた小さいナツさんは俺たちを見てさらに恐怖に刈られたのかその場からマフラーを拾い上げ逃げていく。しかしそんなのとはどうでもいい!!もう残り数秒しかない。俺たちは全員で彼に飛び付くようにジャンプする。

「なんだ!?」

全員の下敷きにされて何がなんだかわからない様子のナツさん。ちょうどそのタイミングで本が光り輝き、俺たちは元いた倉庫へと強制送還されたのだった。
















「はい!!ナツさん」
「これ、マフラーです」
「お!!サンキューな」

無事に元の時代へと帰ってきた俺たちは心配で泣いていたハッピーやセシリーを宥めながら、ラウンジへと戻りながらナツさんへとマフラーを渡す。

「じゃあナツの首の傷って、結局自分でつけた傷だったの?」
「らしいな」
「呆れた」
「でも戻ってこれて良かったね」
「全くだ、なんであんな恐ろしい本がギルドにあったのだ」

古いギルドだからか色んな本があるもんなんだなぁと思いつつも、こちらに帰ってきた際にどうしたのかあの本は失くなってしまっていたらしい。その事にひどく残念がっていたのは金髪の少女。

「もったいない!!確かに危険な本だけどさぁ、使い方によっては過去を変えられちゃうすごい魔法じゃない」
「過去を変える必要なんてねぇさ。過去があるから、今の俺たちがある。あの時あの瞬間の一つ一つの行動が、今の俺たちに繋がってるんだ」
「それもそうだね」

グレイさんの言う通り、もし歴史を変えてしまったら今ここにいる俺たちは存在していないかもしれない。そう考えるとあの本が失くなってしまったことは惜しくもなんともないのかもしれない。

「さあみんな!!倉庫の片付け、終わらせちゃって」
「えぇ!?まだやるのかよ」
「こればかりは仕方ないな」
「オイラお腹減って動けない」
「魚食べながら何言ってんのよ」
「ハッピー泣いてたもんね~」
「あ!!私も手伝います!!」
「じゃあ俺も!!」
「ホント!?ありがとう!!」

ミラさんの言葉に現実に引き戻されたグレイさんたちだったけど、すぐに切り替えたのか倉庫へと向かっていく。俺たちも手伝うために後ろについていきながら、俺はあることを思い出しミラさんの方へと視線を向ける。

「どうしたの?シリル」
「い!!いえ!!」

過去の世界でのヤンキーのようだったミラさんのことを思い出した俺はそれを聞いてみたかったけど、怖くてやめた。時代とともに人は変わっていくということなのだろうかと思うと寂しいような、怖いように感じた。

「いやあ!!それにしてもよぉ---」

離れたところではマカオさんとワカバさんが何やらイヤらしい話をしているのがたまたま耳に入ってしまう。あの時見たマカオさんはすごい健気な印象だったのに・・・

「時の流れって残酷だね」
「そ・・・そうだね」

どうやら俺と同じことをウェンディも考えていたらしくなんだか暗い雰囲気になってしまう。そんな時、彼女は俺の手を取ると、それをギュッと握り締めてきた。

「シリルはああならないでね?」

上目遣いでそんなことを言ってくる彼女に思わず顔を赤らめる。そこからすぐに平静を装うと、俺は笑顔で返事をした。

「うん!!もちろん!!」




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ラストがなかなかいいオチが思い付かなかったけどなんとかなった気がする。特に最後は色んな意味合いを個人的に入れてみたつもりなので読み解いてみてください(>_<)ソンナニフカクハナイカモ
それと本編とシリルたちが絡んだことにより改変されているところがあるのはご容赦くださいm(__)m 
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