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ホイールオブフォーチュン

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第一章

                ホイールオブフォーチュン
 渋谷の109のビルの中に自分の店を構えているタロット占い師の速水丈太郎はこの界隈ではよく知られた人物である。
 黒髪で顔の左の部分を隠しているが細面で色白でクールな顔立ちの男である。見えている右目は切れ長で優しい光を放っている。
 長身痩躯の身体を裏が赤の白いコートと青いスーツに赤のネクタイと白のブラウスで包んでいる。占いは当たりかつ悪い結果をもたらさないことで知られている。
 その彼にだ、ある日だった。
 清潔なスーツを着た四角い顔で太い眉と丸い目を持つ黒髪を右で分けた一七〇位の背の男が来た、そのうえで彼に言った。
「私を占って欲しいのですが」
「わかりました」
「あの、実は」
 男はそっとだ、自分の前に座る速水に言った。
「私はです」
「プライベートのお話でしょうか」
「いえ、仕事のことですが」
 こう速水に言うのだった。
「実は都議会議員の居蔵敏次といいます」
「ご自身から名乗られますか」
「駄目でしょうか」
「別に権勢を誇示されませんね」
「そんなことはしません
 居蔵はそれはないと答えた。
「絶対に」
「そうですか」
「そうしたことをする政治家もいる様ですが」
「貴方は違いますか」
「そんなことは小悪党のすることですよね」
「貴方は小悪党ではないですね」
「そうなりたくないです」
 絶対にという返事だった。
「私にしましても」
「そうお考えですか」
「私なりにです」
 居蔵は速水に真剣な顔で言った。
「政治家として東京のことを考えていまして」
「議員をしておられますか」
「都議会において」
 まさにというのだ。
「そうしています、それでなのですが」
「この度はですね」
「次の選挙のことを占って欲しいのです」
 速水に切実な顔で述べた。
「何と言ってもです」
「政治家の方はまずはですね」
「選挙ですから」
 こう言うのだった。
「まずそれに当選するかどうか」
「それ次第ですね」
「はい、ですから私もです」
「次の選挙ですね」
「暫くしたらその時ですが」
 選挙が行われるというのだ、都議会の。
「私は当選出来るかどうか」
「わかりました、では」
「占って頂けますか」
「今回はケルト十字がいいですね」
 速水は選挙と聞いて居蔵に占い方の話をした。
「それでいいですね」
「占い方はお任せします」
 居蔵は即座に答えた。
「私はそちらは専門外なので」
「だからですか」
「はい、そうさせて頂きます」
「それでは」
 速水も応えた、そうしてだった。
 ケルト十字の占いをはじめた、選挙のことを考えると要所で逆のカードが目立ち最後の判定的なそれもだった。 
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