タイムエスケープ
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第三章
「私自身貴族院議員だが」
「そのランカシャー卿でもです」
「議員の方でもこのことはです」
「お話出来ませんでした」
「首相や限られた閣僚の方でもないとか」
ランカシャーは再び唸った言葉を出した。
「知らないことか」
「開発した我々以外は」
「左様でした」
「既にアメリカや中国は開発しているそうですが」
「日本もまた」
「そして我が国も開発に成功したか」
ランカシャーは航空機のコクピットの様なその装置を観つつ話した。
「タイムマシンを、そしてか」
「はい、マクガフ博士と卿のご息女はです」
「実験も兼ねてタイムマシンを使われてです」
「未来に駆け落ちされました」
「五十年先に」
「道理で世界中探したのに見付からない筈だ」
ここでだ、ランカシャーは真相を理解した。
「未来に逃げていたのではな」
「侯爵があまりにも強く言われるので」
「流石に折れましたが」
「他言されないで下さい」
「タイムマシンの存在は」
「わかっている、国家機密だ」
ランカシャーもそれはと答えた。
「言うことはない、だがな」
「だが?」
「だがといいますと」
「何故未来に駆け落ちしたのだ」
ランカシャーは大学の者達にこのことを問うた。
「一体」
「はい、未来のお二人を確認したく」
「そしてその頃の世界がどうなっているかも確認したいとです」
「博士が言ったので」
「それでその時代に駆け落ちしました」
「そうだったか、二人に伝えておくのだ」
ランカシャーは苦い顔で言った。
「三年待てということは変わらない、だがそれは式の話で同棲や子供が出来てもな」
「いいですか」
「そうですか」
「大幅な譲歩をする」
苦い顔のまま言った。
「事実婚は認める、真の結婚でないといい」
「だからですか」
「帰って来い」
「そう言われますか」
「怒っていないとも伝えてくれ」
駆け落ちした娘と彼女の恋人にというのだ。
「いいな、それではだ」
「はい、博士とご息女にです」
「連絡しまして」
「そうしてです」
「戻ってきてもらいます」
工学部の者達も答えた、そうしてだった。
二人は戻ってきた、そしてランカシャーに謝ったが彼は二人に苦い顔であったがいいと答えた、だが。
二人から話を聞いた後でだ、彼は夜自室で大好物の最高級jのスコッチウイスキーをロックで飲みながらローズに話した。
「五十年先の自分達を見たかったらしい」
「だから未来ですか」
「そうだ、駆け落ちしたらしい」
「そうだったのですか」
「そして未来の自分達を確認するとな」
娘とその恋人がというのだ。
「老夫婦になって息子や孫達に囲まれていたらしい」
「それは何よりですね」
「そして未来の人間の世界はな」
ランカシャーはこちらのことも話した。
「あちこちで戦争もありながら何だかんだでな」
「続いていますか」
「繁栄もしていてな」
そうしてというのだ。
「続いているらしい」
「滅亡はしていないですか」
「そうらしい、悲観する程ではな」
「ないですか」
「戦争もあって災厄も起こったし起こっているが」
五十年の間そして五十年先の世界はというのだ。
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