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青行燈

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第五章

「もうね」
「ネタですよね」
「ネタもネタで」
「伝説になっていますね」
「今も言われてるよ」
 あのシーズンからかなりの時間が経ったがというのだ。
「インターネットでね」
「そうですよね」
「何か一方的な展開あったら」
 その時はというのだ。
「すぐにだよ」
「誰かがそう書きますね」
「二十年近く経ったのに」
 そのシリーズからだ。
「言われてるからね」
「あのシーズンはね」
「よかったのは制覇までで」
 リーグ優勝まででというのだ。
「そこからはね」
「シリーズはなかったことにしたいですね」
「全くだよ」
 心から言うことだった。
「けれどその本は」
「はい、その時までです」
「リーグ優勝までだね」
「シリーズはそれからだったんで」
「夢で終わってるんだね」
「悪夢はなしです」
 楓は真顔で話した。
「そうなっています」
「なら喜んでね」
「受け取ってくれますね」
「是非ね、それじゃあ」
「はい、明日学校で」
「渡してくれるね」
「そうさせて頂きます」
 こう話してだった。
 楓は翌日小林に大学でその本を渡した、そのうえで彼に言った。
「ベースボールマガジン社発行です」
「野球といえばあそこだけれどね」
「その会社名通り」
「やっぱりちゃんと調べてね」
「公平かつ暖かく書いてますからね」
「それがいいんだよね、これがね」 
 小林は眉を顰めさせて話した。
「夕刊フジとかね」
「フジサンケイグループのスポーツは」
「最低だからね」
「巨人に媚びたりして」
「自分達が嫌いな相手は徹底的に貶めるから」
「あんなの読んだら」
 それこそというのだ。
「馬鹿になるよ」
「野球でもそうですね」
「まともな野球ファンは読まないよ」
 絶対にという言葉だった。
「夕刊フジにサンスポはね」
「どっちもパリーグの敵みたいでしたし」
「特に夕刊フジはね」
「書いている人達の人間性を疑うというか」
「確信出来るね」
「全くです」
 楓も確かな声で頷いた、昨日の心斎橋での軽い調子はなかった。
「あんな記事よく書けますよね」
「相当羞恥心がないとね」
「あんな記事書けないですか」
「読売新聞の社長を礼賛して」
「北朝鮮のプロパガンダみたいに」
「あそこの新聞社北朝鮮大嫌いみたいだけれど」 
 常に批判しているが、というのだ。
「夕刊フジ見てるとね」
「北朝鮮と同じですよね」
「何も変わらないよ、だからまともな野球ファンは」
 それこそというのだ。
「フジサンケイグループ関連は読まないで」
「こうした出版社の本読みますね」
「そうだよ、じゃあね」
「是非読んで下さい」
「家に帰ってからゆっくりそうさせてもらうよ」
 笑顔で応えてだった。
 小林は楓からその雑誌を受け取った、そのうえで家に帰ってからゆっくりと読んで楽しんだ。そして心斎橋の青行燈のことも思い出して今はバイキングのことも含めて楽しかったまたあそこに二人で行こうと思って楓に連絡して明るい返事を貰った。


青行燈   完


                 2023・3・29 
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