魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第二百七十四話
作戦会議が終わり、学習塾跡に向かった。
俺と、奏と、箒と、臥煙。
最悪の場合、この4人で結界を貼る。
そのために四方に散っている。
塾には暦さんが突撃。
やばくなったら俺達が全部吹っ飛ばす。
セルベレスタで周囲の熱エネルギーを集め、そこに箒が倶利伽羅を重ねがけすれば、全ての怪異を焼き尽くすこともできるだろう。
そうすればくらやみは消える。
存在意義を失って。
と思っていたのだが。
「あ、マズい」
羽川がISで突っ込んでくる。
どうしよう。
「臥煙」
インカムに話しかける。
『なんだい?』
「来てるのわかるだろ?」
『ああ、くらやみだろう?』
臥煙はまだ探知範囲外か。
「いや、そっちじゃない。この場を収めることのできる切り札さ」
結界術のために胸の前で重ねていた指輪型CADとフォールドリングの重なりを解き、構えを解除する。
それを感知し、箒、奏も結界術の起点となる得物を下げて構えを解除。
『どういうことだい?』
「そらきた」
座標距離にして数十キロ。上空数千メートル。
純白の機械の翼をはためかせたISだ。
パイロットには猫耳が生えている。
いや猫耳かあれ?
「うっそん。なにあれ」
そのうえこの街の怪異の吹き溜まりより、いっそう濃い不吉。
言うなれば怪異的エネルギーの塊。
それが一直線にここに向かってきている。
ISの欺瞞装備だけじゃない、呪術的な欺瞞まで纏った完璧な対物理ステルス。
ISが持ってるバカでかい旅行カバンの中身は……切り札さんだな。
大丈夫かあれ?
ふと、つながりから暦さんがダメージを負ったことを知覚した。
メティスサイトで覗くと腕が持っていかれている。
「けっこうぎりぎりだな」
そう思ったときだった。
彼女が増速した。
なにやらISとは全く関係ない、白いリボンのような翼を展開している。
ISではない。つまりは怪異としての、純然たる彼女の力だ。
「彼氏のピンチに辛抱たまらんってかぁ?純愛だねぇ」
ちゅどーん、と学習塾跡の上に落着した。
いや違うな。
急制動をかけて、その衝撃波かこれは。
「上はどんな様子だ一夏」
得物を持ったままの箒がこちらに歩いてくる。
少し時間をおいて反対側から奏と臥煙が歩いてきた。
「ん?とりあえずあとで忍野に薬あげないといけない感じ」
ISCやPICの範囲内だったとはいえ、カバンの中で折り畳まれていたんだし体バキバキだろうな。
教室の床から数メートルの位置で、羽川がカバンをあけた。
開いたカバンからスタイリッシュに忍野が降り立つ。
「お、くらやみ消えた」
忍野の一言でくらやみが消失し、静寂が辺りを支配する。
と、そこで通信が入る。
ホロウィンドウの表示に思わず顔を近づける。
”Call from HANEKWA”
なぬ?
”Sound Only”
『一夏くん。ありがとう。でもあとで殴らせてね』
それだけ言って、通信が切れた。
「おぉ、こえぇ」
ホロウィンドウを消し去り、全ての戦闘態勢を解く。
箒もそれを見て刀や各種装備を量子格納し、奏も魔剣スクレップを影に戻した。
正面玄関をじっと見つめる中、ペタペタコツコツ、カツンカツンガシャガシャと足音が聞こえた。
「やぁ、こよみん。お疲れ様」
フルスキンISを纏った羽川翼。
その腕に抱かれた、隻腕の青年。
ぐったりとし、力なく恋人に身を任せたまま、こちらに顔を向ける。
「まったく、我が甥はお人好しだな」
”忍野”扇に視線を向ける。
「ふふ。我がてっs……おっと。あまり口に出すと良くないかな。
はじめまして。忍野扇」
「はじめましてですね。一夏さん」
色黒とした、全てを見透かすような瞳。
「僕ぁ君からのアプローチ待ちのために身内を西サハラまで飛ばしたってのに、振られちまったようだね」
「ははー。貴男に喧嘩を売るほど馬鹿じゃありませんよ。
それに、私はあなたに対しては動けない」
忍野扇がそっと暦さんの頭を撫でた。
「それにしても、せっかく遠ざけたのに強引に結解を突破してきたときは驚きましたよ」
「篠ノ之神社は北白蛇神社と真反対の位置にあるからなぁ。街を依代にした場合は結解の穴になってんだよあそこは。
あとは龍脈と重なった地下水道から入れば結解を崩さず、そして力も吸血鬼としての存在力だけでも突破できるってわけだ」
「そこは盲点でした。そもそも地下水道なんてあったんですねぇ。ま、貴方は此方に直接手を出してくることは無いと分かってましたし。
さして問題ではないんですけど」
彼女は暦さんに向けていた視線をそのまま上へ。
「まさか”叔父さん”を本当に連れてくるとは」
「けっこう苦労したんだよ?」
たしか極地までいってたんだっけか。
しっかしよく忍野連れてこれたな。
”今の”羽川翼って忍野の好みじゃなさそうだが。
そんで当の忍野はフラフラしながら歩いている。
「久しぶり。忍野」
「おー。久しぶり。ユートピア」
「天災兎印の酔覚まし要る?」
「いや。いいよ。そんなおっかない物」
余裕がないのか、こちらへの警戒を隠せていない。
そこでちょうど建物の対角に位置度っていた臥煙が合流しようとする。
「忍野。逃げるなら手を貸すぞ」
建物の影からぬっと出てきた臥煙が忍野に視線をロックオン。
「頼んだ」
忍野の同意を受けて彼を擬似瞬間移動でふっ飛ばす。
臥煙がため息をつき、こちらへ歩いてきて合流。
「まったく。君はいつもそうやって、自分を対価にミラクルを起こすんだから。
私は君が心配だよこよみん」
「はは、すいません」
と力なく笑う暦さん。
今はまだヒトで、出血もしている。
「よし、じゃあ俺たちは退散しようか」
さっさと吸血鬼化させてやらないと、衰弱してしまいかねない。
奏が俺の影に沈む。
「そうだな。ここからは、”家族”の話し合いだ」
箒は忍野扇と暦さんと羽川翼を家族と纏めた。
臥煙に後はよろしくとアイサインを送って、その場を後にする。
「これで、彼の青春の物語は終わりを告げた。のかな?」
「まだ大学生活があるだろう。暦さんが合格していればの話だが」
暦さんは、またきっと吸血鬼になり、我が姉上と暮らすのだろう。
何時までかはわからないけど、きっとその生に飽くまで。
後書き
化物語編・完
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