仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜
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第十二話『ネオゴルゴム流地獄料理』
それは、ある日の日曜日に突然起きた。
「ぅぐっ!」
飲食店で食事を取っていた男性は口元を抑えながら倒れ、意識を失う。
「お客様、大丈夫ですか!?」
店員は近寄り男性の容態を確認するが、男性の意識はなく、ただうめき声のようなものは聞こえてくることを確認すると、店員はすぐにバックヤードへ向かい救急車を呼び、店舗は急遽営業を終了させた。
『続きまして、現在問題となっております違法性のある香辛料が使用されていたとして、警視庁は本日、飲食店経営者の─』
当然ながら今回の一件はニュースとしてすぐに取り上げられた。
「どうでしょうか、私が調合した超濃縮ナツメグは?」
ネオゴルゴム神殿では柿坂が誇らしげに大怪人達に話し始める。
「まさか、致死量の20倍まで濃縮させることで微量の摂取でも過剰反応。使用方法によっては即死。まさか、こんなものに目をつけるとは、なかなか鋭い目の付け所ではないか、柿坂。」
ソフィルは柿坂を絶賛する。
「薬学の応用です。香辛料の成分は多かれ少なかれ医薬品の成分として利用されやすい傾向にあります。それなら、成分の調整で毒にすることなど容易いものです。」
柿坂は持ち前の知識を語る。
「しかし、たかだか飲食店を閉店に追い込む程度で、なんの成果が得られというのだね?」
そこに麻木が現れる。
「重要な事はただ閉店させることではないんだ。」
そんな麻木にまたか、と呆れるような態度で柿坂は答える。
「そう、人間というものは信用を崩せばすぐに啀み合う。それに、違法なものを食材として利用していれば信用を崩すのは簡単なこと。多くの飲食店で行えば飲食店という分野そのものを衰退させることだって可能なのだ。」
ソフィルは作戦の一部を話す。
「なるほど。柿坂君、君の活躍には期待しているよ。」
麻木はこれ以上あら捜しをすることは不利と判断し柿坂に一言告げると広間から出ていく。
「しかし、麻木は何故ここまで柿坂を目の敵にするのだ?過去に何かあるようだが。」
エピメルは柿坂に疑問を投げかける。
「数年前、ネオゴルゴムにスカウトされる前にある病の特効薬を作ることに成功した。省庁からの認可もおりて実用化の目途が決まっていた頃、麻木は国際医療連盟の会議内でその病に対する薬は存在しないと断言し、その発言を事実にするために俺が作った薬は違法な成分が含まれているという話を捏造し、俺が表の世界を歩けないようにしたんだ。」
柿坂は自身の過去を明かす。
「そうか、そこに我らが現れた、ということか。」
「ああ、俺にとってはネオゴルゴムは唯一の居場所なんだ。俺の才能を認めてくれたネオゴルゴムには、感謝を尽くすだけでは足りない。死ぬまでこの才能を使わせていただきたい。」
エピメルの言葉に柿坂は深く頷く。
「期待外れな真似はするなよ、柿坂。」
そんな柿坂にエピメルは一言釘を差した。
それから1週間後、事件は進展を見せる。
『本日のニュースです。立て続けに発生している飲食店の違法香辛料事件について最新の情報が入りました。警視庁の調査の結果、致死量の20倍になるように遺伝子改良が行われている形跡がナツメグから見つかり、警視庁では引き続きこのナツメグの出処を調べていくとの見解を発表しました。』
「お義兄ちゃん、この事件ネオゴルゴムが関係していない?」
「そうだな。そんな技術力と犯行を行うのは流石にネオゴルゴムの仕業と考えていいだろう。」
ニュースを見た杏子と光太郎はネオゴルゴムの暗躍を疑う。
「だとしても、ネオゴルゴムはどうして飲食店をわざわざ選んだのかしら?」
「玲ちゃん、どういうことだい?」
「だって、ナツメグなんて香辛料、すべての飲食店が使うわけじゃないわ。それこそ、一部の洋食やアジア料理でしか使わない、メジャーではあるものの汎用性のあるものではないわ。実際、事件の起きた飲食店は洋食メインのファミレスやエスニック系の料理店ばっかりよ。そこを狙って、ネオゴルゴムになんの利益があるのかしら?」
「これだけ飲食店での事件が起きたら、みんな飲食店へ行くのを躊躇うだろう。事実、ここ数日はここにだってお客が来ていないんだ。この1週間で人々の中に“外食は何が混入しているかわからないから危険”という認識を植え付けることができてしまった。それに、実際に被害に遭った飲食店に勤めていた人は次の就職に不利になる。人の心に不信感を植え付けるには食を利用するのはうってつけだったってことなんだ。」
光太郎はゴルゴムとの戦いの経験から、ネオゴルゴムの作戦を見抜く。
「確かに、光太郎さんに教えてもらったとおり、ゴルゴムの作戦は人の心を利用した陰湿なものが多いわね。私も記者時代にゴルゴムについて調べていたことがあったけど、近年に書かれた記事には作戦が回りくどいって内容ばっかりで警戒するほどのことではないって思っていたけれど、間接的とはいえこうして被害に遭うと厄介なところが見えてくるわね。」
玲子は光太郎の話を聞き頷く。
「兎に角、一刻も早くこの事件を解決しないと、より多くの被害者が出てしまう。2人にはここを頼むよ。」
光太郎は杏子達に店番を任せてキャピトラを出た。
「柿坂、人間達が飲食店を利用しなくなったが、手は考えてあるのか?」
エピメルは柿坂に聞く。
「はい。この結果は想定の範囲内なので先んじて量販店の店内製造品にターゲットを変更しています。」
「そうか。」
柿坂の返答にエピメルは納得する。
光太郎は走る。しかし、数多の飲食店が営業を自粛しており、ネオゴルゴムの入り込む隙がない状態になっていた。
(考えるんだ。こういうとき、ネオゴルゴムはどこを狙うか…)
光太郎は考える。そして、
「そうか!スーパーやショッピングセンターか!」
光太郎は答えに辿り着き、事件が発生した周辺で一番大きなショッピングセンターへ向かった。
「ソォー…」
光太郎がショッピングセンターの食品売り場へ到着すると、ナツメグ怪人が惣菜売り場の従業員を襲っている瞬間に出くわす。
「そこまでだ、ネオゴルゴム!」
光太郎の存在を認識したナツメグ怪人は従業員を開放し、光太郎めがけて突進してくる。しかし、光太郎はそれを華麗に避ける。
「変…身!」
光太郎の変身の掛け声とともに体組織を変化させる変身ベルト、サンライザーが出現し、キングストーンと太陽、2つのハイブリットエネルギーが全身を駆け巡り、南光太郎は、仮面ライダーBLACK RXへと変身するのだ。
「俺は太陽の子!仮面ライダーBLACK!RX!」
RXが高らかに名乗ると、ナツメグ怪人はクモ怪人を呼び、クモ怪人達は一斉にRXに向かっていく。
「こっちだ!」
RXは怪人達を店外へ連れ出し、駐車場で戦闘を始める。
「ソォー…」
ナツメグ怪人は体に生えているナツメグをもぎ取り、RXに投げつける。
「危ない!」
RXは投げつけられたナツメグをつかみ取り、クモ怪人めがけて投げ、クモ怪人が口で受け止めると、クモ怪人はもがき苦しみながら息絶える。
「そうか、ナツメグ怪人の生成したナツメグが、事件の原因だったのか!食の安全を脅かし、人間同士の不信感を煽ったお前を、絶対に許さん!」
RXは怒りの感情を高め、バイオライダーへと変身する。
「俺は怒りの王!RX、バイオライダー!」
クモ怪人達は糸を吐きバイオライダーを拘束しようとするが、バイオライダーはゲル化しながら攻撃を回避し、打撃攻撃の連撃を浴びせるバイオアタックを炸裂させ、クモ怪人を一体撃破する。
「バイオブレード!」
バイオライダーは鋭利な両刃剣、バイオブレードを出現させ、残ったクモ怪人達を切り伏せる。
「ナツメグ怪人、勝負だ!」
バイオライダーもナツメグ怪人も互いに距離を詰めることはなく見合う。
「ソォー!」
そんな中で先に動いたのはナツメグ怪人であり、ナツメグ怪人はナツメグを投げつける。
「ハァッ!」
バイオライダーは投げつけられるナツメグをバイオブレードで切り払う。
「ソォー!」
ナツメグ怪人は更に口から粉末状のナツメグを吐き出し、バイオライダーに浴びせようとするが、バイオライダーはゲル化してそれを防ぎ、ナツメグ怪人の後ろに立ち、
「ハァッ!」
必殺の袈裟斬り、スパークカッターを放ち、ナツメグ怪人はナツメグの粉末を撒き散らしながら爆発し、蒸発する。
「馬鹿な、俺の研究の成果が…」
ネオゴルゴム神殿の広間では柿坂の嘆く声が響く。
「柿坂、お前には期待外れもいいところだ。」
そこに大怪人達は現れ、ソフィルは柿坂を叱責する。
「ソフィル様、もう一度期会をください!」
柿坂は縋るように言う。しかし、
「カノコソウ怪人の睡眠花粉で失敗し、ユーカリ怪人の高濃度揮発油で失敗し、キツネ怪人のエキノコックス爆弾で失敗し、これで4度目。流石に庇う気も失せた。」
エピメルもゴミを見るような目で柿坂を睨む。
「ですから、そこをなんとか!」
柿坂は必死で説得しようとする。
「くどい!やれ、ヤブカ怪人!柿坂を始末するのだ。」
そんな説得も虚しく、リシュナルの指示を聞き、麻木が現れる。
「麻木、どうしてここへ!」
「そうか、君には話していなかったね。」
麻木は驚く柿坂を見下しながらヤブカ怪人へ姿を変える。
「そうか…俺はもう…用済みなのか…」
目の前の光景を見た柿坂は精神の限界を迎え、笑い出す。
「グブブ…」
ヤブカ怪人は柿坂の血液を吸いながら強力な毒素を注入し、柿坂の命を奪った。
「けっ、クソまずいな。栄養バランスの取れた食事をしろっての。」
ヤブカ怪人は麻木の姿へ戻ると悪態をつきながら唾を吐きつけた。
『本日のニュースです。昨晩、元調剤師の柿坂悟朗さんの遺体が発見されました。警視庁の調査によりますと─』
その翌日、柿坂の死はニュースのトップバッターを飾ることになった。
続く
次回予告
献血支援会場に紛れ込むヤブカ怪人。ネオゴルゴムの採血計画を阻止するのだ、光太郎。『血液泥棒は誰だ!』ぶっちぎるぜ!
後書き
怪人図鑑
ナツメグ怪人
身長:194cm
体重:82km
能力:成分濃縮ナツメグの生成
ナツメグの性質を持つネオゴルゴム怪人。致死性を高めたナツメグを生成し、体内に取り込むことで粉末状にし、一般的に使われるナツメグと同様の状態に偽装できる。そのナツメグを利用し死亡者や薬物の過剰反応者を大量に発生させた。
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