X ーthe another storyー
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第九話 風使その六
「こうしてよ」
「一緒に飲めて」
「会えてお話出来てね」
それでというのだ。
「嬉しいわ」
「そうなの」
「だからよ」
庚はさらに言った。
「私はここに早く七人揃って欲しいし」
「地の龍全員が」
「そして一人もよ」
七人全員が揃ってもというのだ。
「死なないで欲しいわ」
「それで皆でなの」
「ずっとお友達でいたいわ」
「僕もそう思います、ですが」
遊人はここでこう言ってきた、右手にはしっかりとカップがある。
「僕達は地の龍ですから」
「ええ、人間を滅ぼすわね」
庚もこう返した。
「それが地の龍の役目よ」
「ですから」
「私達が残る時はね」
「この世界には僕達しかいなくなっていますね」
「わかっているわ」
このことはとだ、庚は答えた。見ればその顔は俯き真剣なものになっている。
「それはね」
「そうですね、ですが」
「わかっているわ、けれどね」
「それでもですか」
「言ったわね、私は一人だったのよ」
またこのことを話した。
「だからね」
「こうしてですか」
「皆でいたいの」
「そうですか」
「世界を、いえ姉さんを」
「お姉さん?丁さんが何か」
「何でもないわ」
遊人に問われすぐにその言葉を打ち消した。
「気にしないで」
「そうですか」
「兎に角ね、これからもね」
「さらに三人を含めた」
「地の龍を揃えてね」
七人全員でというのだ。
「合わせて八人でよ」
「そうなのですね」
「庚は友達思いなのかしら」
ふとだ、颯姫はこのことを察して述べた。
「若しかして」
「そう思ったのかしら」
「ええ、少し」
「そうなの、そうかも知れないわね」
自嘲気味に微笑んでだ、庚は答えた。
「私はずっと一人だったから」
「だからなの」
「今お話した通りね」
「お姉さんばかり見られて」
「そうだったから」
それでというのだ。
「私は友達が欲しいとね」
「思っていたの」
「しかも近寄り難い雰囲気ってずっと言われてきたから」
このことも話すのだった。
「子供の頃から。大学を出て表のお仕事をはじめて」
「今こうして」
「地の龍を束ねる立場になるまでね」
「私達と会うまでは」
「一人だったから」
それでというのだ。
「こうして皆がいてくれて」
「寂しくないから」
「嬉しいわ」
「そうなのね」
「ええ、だから」
「私達は友達で」
「一緒にいたいわ、だから一人でもいなくなれば」
内心その時のことを心から怖れた、そのうえで今ここにいる友人達に対して心から語るのであった。
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