イベリス
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第八十九話 遊ぶことその十三
「志賀や三島は武士ですね」
「イケメンでもタイプ違うわね」
「そうですよね」
「それで私としてはね」
「芥川や太宰ですか」
「二人の方が好みね」
そうだというのだ。
「特に芥川」
「あの人ですか」
「写真はじめて見てうわイケメンって思ったから」
実際にそう思ったというのだ。
「だからね」
「芥川の方がいいですか」
「私としてはね」
「そうですか」
「咲っちは誰がタイプ?」
先輩は咲にボールを投げつつ尋ねた。
「それで」
「私ですか」
「作家さんだとね」
「私だったら三島ですかね」
咲はボールを受け取って答えた。
「誰かって聞かれたら」
「あの人なの」
「恰好いい感じで性格も」
「いい人だったみたいね」
「三島由紀夫って人を演じていたかも知れないけれど」
平岡公威という人がというのだ、学習院でも東大でも大蔵省でも三島由紀夫ではなかったのである。
「それでも悪い人かっていうと」
「鷹揚で気さくでね」
「器も大きい」
「いい人だったみたいね」
「しかも文武両道で」
「服装もダンディでね」
「恰好いいうえに」
咲はさらに話した。
「頭もですよね」
「教養もあってね」
「抜群にいいですよね」
「もうその頭のキレでもね」
こちらのことでもというのだ。
「有名だったみたいね」
「あの人は」
「ですから」
「咲っちは三島なのね」
「作家さんでいいますと」
「惚れるのは」
「はい、ただ私まだ誰もです」
「好きになったことないのね」
咲のボールを受けつつ言った。
「そうなの」
「これが」
「じゃあこれからね」
「これからですか」
「経験すればいいのよ」
笑っての言葉だった。
「どんどんね」
「恋愛を」
「そうよ、恋愛を知ることも大事よ」
「高校に入ってから時々言われますけれど」
「そうでしょ、実は中学の頃からね」
既にというのだ。
「恋愛を経験してもいいのよ」
「中学からですか」
「何なら小学生でね」
「小学生は早過ぎますよ」
「何言ってるの、女の子の成長期は小五位からでしょ」
所謂第二次成長期の話であった。
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