イベリス
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第八十九話 遊ぶことその十二
「何かをしているからじゃなくて」
「どういった人かですね」
「まあ私芥川傍にいたら惚れるわ」
ここで先輩はこうも言った。
「性格も悪くないみたいだし」
「ああ、芥川は」
咲も言われて頷いた。
「私も」
「でしょ?東大卒は置いて」
「そうでなくてもですよね」
「物凄いイケメンでしょ」
「そうなんですよね、写真観たら」
芥川のそれをというのだ。
「物凄いですよね」
「イケメンよね」
「しかも教養豊かで」
「作家さんとしても凄いから」
「かなりの文学青年ですね」
「だからね」
そうした人間だからだというのだ。
「私芥川が傍にいたら」
「惚れますか」
「頭がよくてあのイケメン」
「しかも性格も悪くないみたいで」
「だったらね」
そこまでの人間ならというのだ。
「惚れるわ、あと太宰もね」
「太宰治もですね」
「やっぱり頭よくてね」
「性格もですね」
「心中事件起こしてるけれど」
それも三度である、一度目は相手は死んでいる。そして三度目で遂に冥土に旅立つことになったのだ。
「暗くも陰険でもね」
「意地悪でもなくて」
「明るい人だったみたいね」
「躁鬱だったかも知れないですね」
「ええ、いい加減なところもあったそうだけれどね」
このことも伝わっている。
「けれどあの人もね」
「頭よくて」
「しかもイケメンだからね」
「芥川に負けてないですね」
「二人共ね」
まさにというのだ。
「文学青年で」
「イケメンなので」
「傍にいたらね」
「惚れますか」
「志賀直哉や三島由紀夫もイケメンだけれど」
「芥川や太宰とタイプ違いますね」
咲はすぐに言った。
「志賀や三島は」
「二人共武士みたいでね」
「お顔立ちが」
「三島由紀夫は剣道とかしてて鍛えてたから」
このことにも熱心な人物であった、ただ上半身は逞しいが足腰は然程ではなかったという話もある。
「元々そうでもなかったのが」
「身体鍛えてですね」
「ああなったそうだけれどね」
「最初は大蔵官僚でしたね、三島」
「東大法学部出てね」
「それで志賀は武士なんですよね」
咲はこの作家の話は自分からした。
「仙台藩の家老のお家で」
「滅茶苦茶格高いわね」
「まさに武士の出で」
それでというのだ。
「そうしたお顔立ちですね」
「そうなのよね」
「芥川や太宰は文学青年で」
顔立ちは整っていてもというのだ。
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