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星河の覇皇

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第八十三部第三章 今だ目覚めずその三十五

「シャイターン主席に勝てる自信はあるか」
「とてもです」
「ありません」
「あの御仁は別格です」
「艦隊の動きも攻撃も見事です」
「防御も統率も」
「真似出来るものではありません」 
 司令官達はアッディーンの問いに口々に答えた。
「あれだけのものは」
「到底です」
「文字通り水際立った指揮です」
「あれだけの戦いを出来るなぞ」
「まさにアッラーが与え給うた才覚です」
「若しここで彼と戦えると言う者がいれば」
 司令官の中にとだ、アッディーンは言った。
「私は己を恥じていた」
「自分と相手の力量を見極められない」
「そうした無能を軍司令官までにした」
「ご自身のその人を見る目のなさをですか」
「恥じておられましたか」
「ある店に馬鹿な店員がいた」
 アッディーンは落ち着いた声で述べた。
「あるおかしな連中がテロを起こして何十人も殺した」
「テロリストの常ですね」
「そうした者は何時でも何処でもいますね」
「それを戦いなどと称して」
「よりによって一般市民を狙いますね」
「そうした外道は何処でも何時でもいるが」
 それでもとだ、アッディーンは話した。
「その外道を権力に反対するからいいだのと言った」
「その店員はですか」
「その様なことを言ったのですか」
「何十人もの罪も関係もない武器を持たない一般市民が犠牲になっても」
「テロを行った連中が権力この場合はその国に反対しているからいいとな」
 その様にというのだ。
「言っていた」
「武器を持つ軍隊や警察を狙っていないのにですね」
「武器を持たない一般市民を攻撃したというのに」
「犠牲になった人達の人生を考えずに」
「その人達の家族や友人達のことを考えずに」
「一切な」
 まさにとだ、アッディーンは言い捨てる様に述べた。
「そう言った、この店員は他人の命の大事さも悲しみも苦しみも一切わからないしわかろうともしていない」
「正真正銘の意味での愚か者ですね」
 ニアメはその店員について唾棄する顔で述べた。
「これ以上はないまでの」
「そうだな」
「テロは許してはなりません」
「そもそもな」
「ましてや一般市民へのそれなぞ」
「権力に反対していようがな」
「はい、ですが」
 ニアメはさらに話した、その顔で。
「それで死んだ何十人もの人の命もですね」
「実行犯が権力に逆らっていると言ってな」
「権力といっても色々ですが」
「国家権力だけではないな」
「それもわかっておらずですね」
「そう言った、しかもその組織は最初からクーデターを宣言していた」
 つまり自分達が政権つまり権力者になることを目論んでいたのだ。 
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