八条学園騒動記
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第六百八十八話 オーストラリア人としてその七
「三十代後半でだよ」
「亡くなってるんだ」
「難病にかかってね」
「それでなんだ」
「物凄く複雑な名前の病気で」
ベンはトブに話した。
「俗にルー=ゲーリック病ってね」
「言われてるんだ」
「そうだったんだ」
「何かね」
クララが言ってきた。
「身体が動かなくなる」
「そうした病気だったよ」
「そうよね」
「本当に名前がややこしくて」
ベンはクララにもこう話した。
「覚えてないけれど」
「正式な名前は」
「俗にね」
「ルー=ゲーリック病ね」
「このひとがなってね」
そうしてというのだ。
「若くして亡くなったから」
「俗にその病気でなのね」
「呼ばれてるよ」
「そうなのね」
「それでルースはね」
あらためて彼の話をした。
「確かに凄かったけれど」
「ずっとはなのね」
「活躍してないよ」
「そうなのね」
「やっぱり衰えて」
「引退したのね」
「そうなったよ」
「そうなのね」
「実際一シーズン六十本ホームランを打ったけれど」
当時はこのことで誰もが驚いた。
「けれどね」
「毎年打ってはないのね」
「七百十四本打ったけれど」
ハルク=アーロンに抜かれるまで記録だった。
「それでもね」
「毎年六十本はなんだ」
「打ってなくて」
「衰えていったのね」
「そうだよ、あと足は遅かったから」
鈍足だったことでも有名だった。
「走塁はね」
「あまり期待されてなかったのね」
「そうだよ」
「ううん、ずっと活躍するっていうのは」
ルーシーは腕を組んで述べた。
「難しいのね」
「どんな選手でもね」
「そうなのね」
「一人のピッチャーにずっと投げさせることも」
「出来ないわね」
「サチェル=ペイジは五十九歳まで投げて」
黒人リーグで活躍したこのピッチャーはというと。
「二千勝したらしいけれど」
「それ本当?」
「どうだろうね」
ベンはルーシーに懐疑的な声で応えた。
「伝説だから」
「二千勝したっていうのは」
「実際のところはね」
「わからないのね」
「二十世紀でもね」
ペイジが生きたその世紀である。
「果たして本当だったか」
「わかってないの」
「スポーツって与太話とか入るしね」
「創作もね」
「だからね」
それでというのだ。
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