サラリーマンの夕食
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第一章
サラリーマンの夕食
遊佐利治は営業部長になってだった。
日々多忙だった、それでこの日もだった。
「やれやれ、残業だよ」
「部長早く帰らないと駄目ですよ」
「管理職でも休む時は休まないと」
「最近労働時間とか厳しいですから」
「ましてうちホワイトでいようって考えですから」
「昔からそうですしね」
「わかってるけれど忙しいんだよ」
遊佐は部下達に苦笑いで述べた、四十代も後半になってきていて髪の毛に白いものが増えてきている、細面で痩せた顔には皺が増えていて身体も痩せている、背は一七〇あるかないかという位でありくたびれた感じのスーツが似合っている。
その彼がだ、こう言うのだった。
「これが」
「管理職だからですか」
「やることが多いですか」
「どうしても」
「しかも今は特にね」
部下達にこうも話した。
「忙しいんだよ」
「ああ、プロジェクトも完成間近で」
「それで、ですね」
「その詰めに」
「お忙しいですね」
「僕が責任者だからね」
そのプロジェクトのというのだ。
「だからだよ」
「大変ですね」
「じゃあ俺達これで帰りますけれど」
「早く帰って下さいね」
「無理は駄目ですよ」
「そうするよ」
六時にこう話した、そして九時まで仕事をしていると。
会社の見回りの人が来てこう言ってきた。
「もう帰って下さい」
「これ以上の残業は駄目だね」
「はい、もう閉めますんで」
会社の戸締りをというのだ、こう話してだった。
遊佐を帰らせた、彼もそれを受けてだった。
帰り支度を済ませて帰路についた、そして家に帰るとだった。
リビングのテーブルの上に食事が置いてあった、一皿一皿全てにサランラップがされていたがここでだった。
娘の幸、黒髪を長く伸ばし大きなはっきりした目を濃く奇麗なカーブを描いた眉とピンクの唇にやや面長の顔の一六〇程の背で高校生の彼女がパジャマ姿で言ってきた。
「お風呂空いてるからね」
「ああ、じゃあ食べてお風呂入って寝るよ」
「お風呂あがったらね」
娘は父にさらに言った。
「お母さんに言ってね」
「お母さん今どうしてるんだ?」
「さあ。寝室で家計簿つけてるんじゃない?」
娘は家の愛猫であるキン白と黒の雄のスコティッシュフォールドの彼を撫でつつ言った。
「そうじゃない?」
「ニャア」
「そうなんだな」
「だから早くね」
「ご飯食べてか」
「お風呂入って」
そうしてというのだ。
「お母さんに言ってね」
「お母さんがお風呂最後か」
「そうよ、じゃあね」
娘は猫を撫でで喉を鳴らさせてからだった。
冷蔵庫を開けてそこから牛乳を出して飲んでだった。
そのうえで自分の部屋に戻った、そして遊佐はというと。
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