お葬式の時に知った弟や妹達の存在
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第一章
お葬式の時に知った弟や妹達の存在
父の哲治の葬式の場でだ。
地方公務員の間井谷友康はほっとした顔で母の淳奈に話した。二人共言うまでもなく喪服姿であり友康は短い黒髪で長身ですらりとした身体で細面に小さい目と唇で優しい感じだ。淳奈は楚々とした落ち着いた感じで丸めの顔で大きな目だ、顔に皺が多く後ろで束ねた髪の毛には白いものが混ざっている。
「ほっとしてる?」
「ええ、正直言ってね」
「親父はね」
「お仕事は出来たけれど」
それでもとだ、淳奈は息子に話した。
「物凄い女好きでね」
「あちこちで遊んでたからね」
「しょっちゅう女の人をうちに連れ込んで」
「別れてくれとかね」
「そうしたことばかりで」
「ホステスの人とかね」
「そうしたお仕事の人と遊んでばかりで」
それでというのだ。
「もうずっとね」
「火宅って言うんだよね」
友康はここでこの言葉を出した。
「うちみたいなのを」
「そうよ、まさにね」
「うちは火宅だったね」
「女の人のことばかりで」
「俺が子供の頃だったからね」
友康は項垂れて言った。
「大学を出て就職するまで」
「暴力は振るわなくてね」
「家にお金はちゃんと入れてくれてたけれど」
「他にお金使わなくて」
「ちゃんと暮らせていたけれど」
「やっぱりね」
「大変だったよ」
友康はしみじみとした口調で言った。
「本当に」
「ええ、何かとね」
親子でこうした話をしてだった。
葬式を続けた、すると。
友康は自分によく似た青年や少年それに女の子が合わせて七人も出て来たのを見てまさかと思った、そして。
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