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イベリス

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第八十七話 純文学は娯楽かその三

「三島もね」
「イケメンよね」
「きりっとした男らしいね」
「しかも剣道やボディービルもやってね」
「男らしい身体つきで」
 ただし下半身は弱かったという。
「そこからもね」
「イケメンよね」
「そうよね」
「性格も器が大きくて明るくて」
「いい人だったの」
「そうだったみたいよ」
 こちらでも悪い話はないという。
「これがね」
「ううん、余計に凄いわね」
「確実にもてたわよ」
 咲は太鼓判を押しさえした。
「三島は」
「当時は」
「何か同性愛を選んでね」
 武士道を学ぶうちにそうなったという。
「そちらばかりになったらしいけれど」
「それでももてたわよね」
「絶対ね、頭がよくてイケメンで性格もよし」
「しかもスポーツマン」
「おまけに文豪ときたら」
 ここまで揃えばというのだ。
「もうよ」
「もてない筈がないわね」
「少なくとも私はね」
 咲はかなり本気で述べた。
「かなりよ」
「好きになったの」
「ええ」 
 このことを隠さなかった。
「調べていてね」
「そうなのね」
「恰好よ過ぎるわ、ただね」
「ただ?」
「三島由紀夫はペンネームって言ったけれど」
 このことに話を戻して言うのだった。
「何か平岡公威って人が三島由紀夫を演じていた」
「そんな風なの」
「三島由紀夫っていう理想の作家さんがいて」
「平岡さんがその人を演じていたの」
「理想像としてね」
 そのうえでというのだ。
「そんな感じがよ」
「するのね」
「どうもね」
 こう話したのだった。
「読んでるとね」
「そうなの」
「どうもね」
「演じていたのね」
「三島由紀夫をね」
 この理想の作家をというのだ。
「だから最後はね」
「自殺したのね」
「それも自衛隊の基地に行って」
 市ヶ谷のそこにというのだ。
「演説してね」
「その後で切腹したのね」
「もう三島由紀夫の人生を完成させる」
 そうさせようと決意してというのだ。
「その為にね」
「ううん、そう聞くとね」
「そう聞くと?」
「俳優さんみたいね」
 こう言うのだった。
「三島由紀夫の生涯を演じた」
「かもね」
 咲もその言葉を否定しなかった。 
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