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イベリス

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第八十六話 恋愛のダメージその十

「何を書いてるかわからない文章書いてるだけで」
「その言ってることはですね」
「もう幼稚園児でもわかることをわかってない」
 そうしたというのだ。
「馬鹿なのよ」
「それがあの人ですね」
「何処が自分が権力取りたくてテロやって大勢の人を犠牲にして」
 そうしてというのだ。
「信者さんにまずいもの食べさせて自分は贅沢三昧で愛人さんも沢山いる」
「北の将軍様みたいですね」
「そんなのの何処がよ」
 それこそというのだ。
「偉大な宗教家よ」
「普通間違えないですね」
「それを間違える様で」 
 その様でという口調での言葉だった。
「何処がいいのよ」
「読む価値ないですか」
「ないわよ」
 それこそという返事だった。94
「読むだけ無駄よ」
「そんな人の本読むよりですね」
「太宰を読む方がね」
「ずっといいですか」
「漫画でもね」
「読むといいですね」
「そうよ、馬鹿な思想家の本なんてね」
 それこそというのだ。
「一切よ」
「読む価値ないですか」
「そんなのの本読むより」
「太宰の作品とか」
「文豪の人の小説でもいいし」
 尚戦前までは哲学書こそ読むべきであり小説なぞ低俗で読むものではないとされていたらしい。太宰と他の作家達との会談でそうしたことが言われていた。
「ライトノベルでも漫画でもね」
「読む方がいいですか」
「吉本隆明の本を読んで得られるものなんてないわよ」
 一切、と言い切った。
「それこそね」
「そんな程度ですね」
「そうよ」 
 まさにと言うのだった。
「もうね」
「小説やラノベや漫画の方がですね」
「遥かにいいものよ」
「大切なものを学べるんですね」
「そうよ、思想家といっても」
 それでもというのだ。
「色々よ」
「いい思想家もいればですね」
「何でもないね」
 それこそというのだ。 
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