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イベリス

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第八十六話 恋愛のダメージその五

「ここまでやられるなんてね」
「有り得ないですけれど」
「あの兎はそこまでしたのよ」
「何ていうか」 
 咲はここでこう言った。
「本校やかちかち山とか見てますと」
「どうしたの?」
「いえ、凄く怖いですね」
 こう言うのだった。
「恋愛って」
「どっちもそうそうないけれどね」
「それでもですよね」
「自分がああした目に遭ったら」
 それこそとだ、先輩も言った。
「洒落になってないわよね」
「地獄に落とされる様なものですよね」
 咲は実際に自分がそうなった時を想像した、そのうえで先輩に対して真剣な顔のままこう答えたのだった。
「それこそ」
「目の前が真っ暗になるわよね」
「殺されなくても」
「しかも告白する様に言ったお友達がね」
「自分達に危害が及ぶと見るとですね」
「すぐに縁切るとか」
「裏切られるとか」
 このこともというのだ。
「酷いですね」
「そうよね」
「こんな目に遭うなら」
 それならというのだ。
「もうです」
「恋愛はね」
「絶対にです」 
 咲は強い声で言った。
「したくないって」
「思うわね」
「そうですよね」
「恋愛は甘いかっていうと」
 先輩も強い声で話した。
「甘いことはあっても」
「それだけじゃないですね」
「そうよ、こうしたね」 
 一呼吸置いてだ、先輩は話した。
「地獄もね」
「あるんですね」
「そうよ、それもまたね」
「恋愛ですね」
「そうなることを思うと」
 まさにと言うのだった。
「用心しないとね」
「変な相手は好きにならないことですね」
「よく見て」
 その相手をというのだ。
「それで決めることよ」
「告白もですね」
「それが大事よ、恋愛はね」
「怖いものでもありますね」
「甘くて幸せなものであって」
 そうしてというのだ。
「それと共にね」
「地獄もありますね」
「そうよ」
 まさにという返事だった。
「二つのお話でわかるでしょ」
「そうですよね、とんでもない教訓ですよね」
「流石にそうはないと思うけれどね」
「あることはあるんですね」
「現実にもね」
「現実にあるから怖いですね」
 咲は本校の話を思い出しつつ言った。 
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