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第六十五話 日本の夏の料理その三

「関東のことはあまり」
「それでなのね」
「日光のお素麺のことも」
「そうなのね」
「よく知らないです」
「私も食べたことないけれどね」 
 日光の素麺はというのだ。
「ただ聞いただけで」
「それだけですか」
「詳しくはね」
 その様にはというのだ。
「知らないわ」
「そうですか」
「ええ、けれど美味しいらしいわ」
「そういえば童話でもあった様な」
 日本のとだ、かな恵は自分の記憶を辿りつつ答えた。
「日光のお素麺のお話が」
「そういうのあるの」
「はい、意地の悪い人が旅のお坊さんに嫌がらせをして」
 それでというのだ。
「無理にお素麺を食べさせていて」
「日光でなのね」
「それでお坊さんを助けに来たお地蔵さんがお坊さんの分のお素麺を食べて」
「そうなってなのね」
「意地の悪い人が今度はその人ととなって」
 地蔵尊が変身しているその人にというのだ。
「日光中のお素麺を食べさせたら」
「そうしたらなの」
「お地蔵さん全部食べて」
「それでどうなったの?」
「お地蔵さんは川のほとりにあったんですが」
「ああ、わかったわ」
 ここまで聞いてだ、ケニアから来た先輩に頷いて応えた。
「その川にお素麺が流れたのね」
「そうらしいです」
「そうしたお話もあるのね」
「日光の方に」
「童話になる位有名ってことね」
「みたいですね、あっちのお素麺は」
 かな恵はここでも容量を得ない返事で応えた。
「どうやら」
「じゃあやっぱりよ」
「あっちのお素麺も凄いんですね」
「一度食べてみたいわ」
「そうですか」
「何かずっとあまり興味なさそうね」
「だって私関西人なんで」
 かな恵は先輩と一緒に手を動かしつつ答えた。
「それで関東のことは」
「あまり知らないの」
「ですから」
 それでというのだ。
「あまりです」
「要領得ない感じなのね」
「興味がないといいますか」 
 むしろというのだった。
「知識がないんで」
「だからなの」
「日光行ったこともないですし」
「お素麺もなのね」
「有名と言われましても」 
 そして美味いと、というのだ。
「特にです」
「思うこともないのね」
「そうなんです」
「そういうことね」
「どうにも」
「まあ私も故郷以外の場所を言われてもね」
 先輩はかな恵に応えて述べた。
「あまりね」
「ご存知ないですか」
「ええ」
 そうだという返事だった。 
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