イベリス
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第八十五話 夕食もその七
「過去はね」
「過去よね」
「それ意外の何でもね」
それこそというのだ。
「ないからね」
「洗い流すべきね」
「さもないと恨んで憎んでばかりで復讐しようと狙って」
それこそ常にというのだ。
「心疲れるでしょ」
「恨んだり憎んだりするのもエネルギー使うしね」
人は想うだけでそうなる、これは楽しいことについても同じだ。
「それじゃあね」
「疲れて。それも悪いこと考えると」
「その悪いことで疲れて」
「それだと病むわよ」
そうなるというのだ。
「心がね」
「よくないわね」
「ええ、そうでしょ」
「そうね」
咲もそれはと答えた、鍋のに立ち具合を見つつ。
「恨む、憎むはね」
「そして復讐はね」
「マイナスのものだから」
「どう見てもね」
「それだとね」
「それで心を病んでいったら」
同級生はさらに話した。
「これ以上はないまでにね」
「悪いことね」
「復讐鬼の末路なんて」
「いいものの筈ないわね」
「そうよね」
「そうなるよりもね」
「過去は過去ね」
咲に笑って話した。
「それで終わらせて」
「吹っ切ってね」
そうしてというのだ。
「そのうえでよ」
「明るく前向きによね」
「考えてね」
咲は同級生に話した。
「生きていったらね」
「いいわよね」
「私そう思う様になってきたわ」
「最近の咲っちは」
「世の中嫌な奴だっているし」
「嫌なことだってね」
「沢山あるけれど」
それでもというのだ。
「そういうの一々覚えていてね」
「恨んで憎んで」
「それで生きていって」
「そっちにエネルギー使っても」
「そうしてもよ」
「いいことないわね」
「本当にそれよりもね」
同級生にさらに話した。
「明るく前向きによ」
「考えて生きることよね」
「前向きにね、何かね」
「何か?」
「あんた知ってる?宮沢賢治」
ここでだった、咲はこの偉大な童話作家であり詩人である人物の名前を出した。銀河鉄道の夜や風の又三郎等多くの名作を残している。
「日本の人だけれど」
「教科書に出てたわね」
同級生はこう返した。
「確か」
「そう、その人の言うことってね」
「前向きなの」
「詩とかね」
「そういえばそうね」
同級生もそれはと頷いて応えた。
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