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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百三十三話 司馬尉、陣を語るのことその七

「その者達を好きなだけ喰らうがいい」
「ええ、そうさせてもらうわ」
 司馬尉の血が濡れていた。赤くだ。
 唇を塗らすその赤いものをだ。人のものとは思えぬ長く紅い舌で舐め取る。そうしてだった。
 彼女はだ。また言うのだった。
「その為にも私の王朝を築くわよ」
「さて、それではです」
 司馬尉が人の血を舐め摂るのを見届けながらまた言う于吉だった。
「私達も食事にしますか」
「そうだな。何を食う?」
「軽いものでどうでしょうか」
 今はだ。それでいいというのだ。
「パンか何かで」
「パンか」
「はい、それを召し上がられますか」
 こう左慈、古くからの同志に尋ねたのである。
「そうされますか」
「そうだな。それではな」
 左慈もだ。腕を組んだうえで頷く。
 そのうえでだ。于吉に返したのだ。
「今はそれで軽く済ませるか」
「ではその様に」
「十絶陣を敷きそのうえでだ」
 あらためてだというのだ。
「奴等を迎え撃つとしよう」
「俺達のオロチも封印が解かれるな」
 社はオロチの話をした。
「こっちの世界で解放して向こうの世界もな」
「そうだね。二つの世界をね」
「私達の世界にしましょう」
 クリスとシェルミーがその社に続いて述べてだった。彼等もだ。
 それぞれの飯を食う。闇の中でそうしたのだ。
 光と闇の激突が近付いている様に見えた。しかしだ。
 闇についてだ。言うのは玄武の翁だった。
 翁は進軍中に玄武に乗ったままだ。周囲に話すのだった。
「闇は決して悪ではないのじゃ」
「えっ、違うのですか」
「そうやないんか」
「うむ、そうじゃ」
 まさにそうだとだ。翁はアテナとケンスウに話すのである。
「光があれば必ず闇ができるな」
「はい、影になって」
「そうしてそこにできるで」
「それじゃ。表裏一体でありじゃ」
「悪とはまた違う」
「そうなのですか」
「しかしじゃ。そこに人とは違う考えが入る」
 そしてそれこそがだというのだ。
「あの司馬尉なりオロチなりアンブロジアなりな」
「彼等の。独善や全てを滅しようという考えが」
「闇に入ってかいな」
「闇は悪となるのじゃ」
 即ちだ。闇は悪ではないというのだ。
「同じことは光にも言えるのじゃ」
「では彼等が光に加わると」
「光が悪となるんかいな」
「そういうことじゃ。光も闇も善でも悪でもない」
 それ自体にはだというのだ。光にも闇にもだ。
「何でもないことじゃ」
「そうじゃのう」
 鎮もここで翁の言葉に頷く。
「全てはそこにある心じゃ」
「そういうことやねんな」
 ケンスウは首を左右に捻り考える顔で述べた。
「善とか悪ってのは心からやねんな」
「そうなのね。じゃあバッタも心が悪なら」
 アテナは自分の嫌いなものを話に出した。無意識のうちにそうしたのだ。
「悪になるのね」
「ピザまんもそやな」
「それはまた違うと思うけれど」
 包は率直にその二人に突っ込みを入れた。
「けれどまあ。光も闇もそれ自体は悪じゃないのは」
「その通りじゃ。悪は心じゃ」
 また言う翁だった。あくまでそう話す。
 そしてだった。彼はだ。静かにだ。
 人の心、目には見えないものを見ているのだった。
 その心を見つつだ。人は言うのであった。
「己だけが絶対に正しいと思い他のものを害するものはじゃ」
「それが悪なのね」
「わしは最近そう思えてきたのじゃ」
 翁が今になって辿り着いたものだった。
 
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