恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百三十二話 一同、北に向かうのことその六
「俺みたいなヘルスエンジェルズがいてもかい?」
「そうだ。それでもだ」
「俺は正直言ってワルだぜ」
「だが道を踏み外すか」
「そんなチンケなことはしねえぜ」
「そういうことだ。戦もかつては一部の者の欲により頻発していた」
だがそれがだというのだ。
「しかしそれも変わった」
「国家と国家の戦争にかよ」
「確かにそこにも欲はある」
このことは否定できなかった。嘉神もだ。もっと言えば否定するつもりもなかった。
だがそれでもだ。彼は言ったのである。
「しかしエゴは。個人の醜いエゴは薄まっている」
「国家は公だからですね」
麴義が問うた。
「だからですね」
「その通りだ。狭い公だがな」
「しかしその狭い公が」
「何時か広いものとなる」
そうなるというのだ。
「実際に私の頃よりも戦は減っているしな」
「まあ。昔はもっと洒落にならない数の戦争が起こってたからな」
ジャックもそれは言う。
「戦争ばかりしててもな」
「何にもならないですね」
李がジャックの言葉に応える。
「田畑を耕すことも商いもです」
「だからそればっかりやっていられないんだよ」
「はい、だからこそ」
「戦争は減ったな」
「その通りだ。確かに人の問題は多い」
嘉神の話になった。再び。
「しかしそれでもだ」
「少しずつですね」
「よくなっていけばいいんだな」
「それにだ」
嘉神の目の光が強くなった。
そしてだ。こう言ったのだった。
「人もまた自然の一部だ」
「そして世界のですね」
「その人を否定するのもまた傲慢だ」
「ではオロチは」
「本質的に刹那と同じだ」
嘉神は看破した。麴義に応えて。
「自分達のことしか考えていないのだからな」
「それは独善ですか」
「刹那は闇だがオロチは独善だ」
嘉神から見てもだ。そうなることだった。
「だからこそあの者達も許してはおけないのだ」
「何があろうともですね」
「連中は全部滅ぼすんだな」
「そうしなければならない」
嘉神は再び李とジャックに応えて述べた。
「二つの世界の為にもだ」
「はい、では最後の戦いで」
「やってやるか」
「はい、是非共」
三人がそれぞれ言う。その中でだ。
ジャックはだ。少しシニカルに、自嘲してだ。こう言ったのである。
「俺なんて只の族だったのにな」
「ヘルスエンジェルスがそれか」
「ああ、日本で言う暴走族なんだよ」
まさにそれだった。ジャックは。
しかしその暴走族の彼がだ。今はだった。
「その俺が世界の為に戦うなんてな」
「そのことに違和感があるか」
「全くよ。どうしたものだよ」
その自嘲と共の言葉だった。
「世の中どうなるかわからないよな」
「確かに。私もです」
麴義もだ。少し気恥ずかしそうに言うのだった。
「麗羽様の配下になり。気付けばですから」
「こんな中にいるからな」
「そうです。本当に不思議です」
「だよな。縁か?」
「そして運命か」
「そういうものだよな」
こうだ。二人で話すのだった。
そしてその彼等を見てだ。嘉神も達観した顔で述べるのである。
「いいものだ。これがだ」
「人ですね」
「そうだ、まさしくな」
こう李にも述べる。
「いいものだ」
「では。そのいいものの為に」
「最後まで勝とう」
「そうしましょう」
こう言い合いだ。彼等は今は酒を楽しむのだった。そしてだ。
数日後だ。遂にだった。劉備が一同、そして兵達を都の南門の前に集めた。
その中でだ。テリーが言った。
「いよいよだな」
「そうだね。本当にね」
「最後の出陣だぜ」
その彼にアンディと丈が応える。
ページ上へ戻る