ドリトル先生とタキタロウ
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第八幕その三
「今度はアメリカ連邦最高裁判所長官としてね」
「ああ、キング牧師最大の敵になったんだ」
「人種差別主義者として」
「事実そうだしね」
「日系人の人達を強制収容所に送れって言った人だしね」
「キング牧師はこの人種差別主義者に勝ったんだ」
「そしてアフリカ系の権利を獲得したんだ」
「いや、それが違うんだ」
これがというのです。
「この人はキング牧師と同じだけこの運動の成功に貢献したんだ」
「えっ、嘘だよね」
「人種差別主義者なのに」
「そんな人がキング牧師の側に立つ訳ないわ」
「キング牧師みたいな立派な人と」
「そんなことは有り得ないよ」
「けれど事実なんだ」
このことはというのです。
「この人は人権擁護の為の判決を次々と出したんだ」
「最高裁判所長官として」
「そうしたんだ」
「嘘みたい」
「日系人を迫害したのに」
「アフリカ系の人達の為に働くなんて」
「公立学校の人種隔離を違憲としたんだ」
その判決を下したというのです。
「ブラウン判決と呼ばれるけれどね」
「そうなんだ」
「嘘みたいよ」
「人種差別を支持した人がそうするなんて」
「それも積極的に支持したのに」
「けれど選挙でもアフリカ系そして有色人種の人への制限にも判決を下して」
そうしてというのです。
「投票価値の平等を確立したんだ」
「選挙にもそうしたの」
「学校だけじゃなくて」
「そんなこともしたんだ」
「そしてね」
さらにあるというのです。
「警察の取り調べに先立って被疑者の権利告知を義務付けたよ」
「色々していたんだね」
「何か嘘みたい」
「日系人にそんなことしたのに」
「それが今度はそうするなんて」
「公民権運動はキング牧師そしてマルコムエックスの存在が大きいけれど」
実際に活動した人達のというのです。
「この人の存在も非常に大きいんだ」
「法律家としてアフリカ系の人達の未来を開いたんだ」
「キング牧師達と一緒に」
「そうしたのね」
「そうだよ、だからキング牧師も深く感謝したんだ」
アール=ウォーレンその人にというのです。
「そうしたんだ」
「成程ね」
「嘘みたいなことだよ」
「戦争の時とは別人みたいだよ」
「信じられないよ」
「けれど同じ人の行動なんだ」
それぞれ別の人のものにしか思えなくてもというのです。
「これがね」
「そうなんだ」
「人種差別をした人が人種差別を撤廃したんだ」
「そうしたのね」
「そうだよ、実はこの公民権運動の中で過去が批判されているよ」
先生はこのことを確かな声でお話しました。
「日系人への差別そのもの発言や政策がね」
「まあそうだよね」
「批判されて当然だね」
「その時はよくても」
「人種差別が解消されるとなるとね」
「それで激しく批判されてね」
そうなってというのです。
「自伝の中で間違っていた、深く後悔していると言っているよ」
「本当かしら」
「批判されて立場が悪くなってそう言う人っているしね」
「口だけかも知れないわ」
「けれどキング牧師と一緒に差別を撤廃しているし」
「そのことを見たら」
「わからないね、僕もわからないよ」
先生もというのです。
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