志士の怪談
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第三章
「それで一蔵どんにも話したでごわすが」
「おいは覚えられると答えました」
大久保は西郷を見て彼だけにわかる目だけの笑みを見せて述べた。
「吉之助さあなら」
「おいどんは何でも入ると言ってくれてでごわす」
「そして実際入ったんじゃな」
龍馬は明るく笑って述べた。
「そうじゃな、西郷さんは」
「そうだったでごわす、いや一つ覚えるとでごわす」
都のそうした話をというのだ。
「次から次にでごわす」
「覚えられたんじゃな」
「そうなったでごわす」
まさにというのだ。
「いや、よかったでごわす」
「それはまっことよかったぜよ」
龍馬も話を聞いて笑って述べた。
「ではわしも覚えられるか」
「坂本さあなら大丈夫でごわす」
これが西郷の返事だった。
「安心するでごわす」
「そうか、じゃあ覚えていくきに」
「それで暇な時にでごわす」
西郷は大久保に笑って話した。
「話の種にするでごわすよ」
「怪談をするんじゃな」
「いや、顔を見合わせて天下の話をするだけでなく」
「そうした話もするのもいいぜよ」
「そうでごわす、飲んで食べて」
尚西郷は極めて粗食で大久保もである、二人共大柄であるが食べる量は兎も角食べるものはそうである。
「その中で、でごわす」
「怪談話もじゃな」
「するといいでごわす」
「わかったぜよ、なら今から早速ぜよ」
龍馬は西郷に申し出た。
「話してくれるかのう」
「都の怪談話をでごわすな」
「そうして欲しいぜよ」
「それならでごわす」
西郷は龍馬の申し出に笑って応えた。
「早速一つお話させてもらうでごわす」
「宜しく頼むぜよ」
「それで何の話をしもっそ」
大久保は西郷を見て彼に問うた。
「坂本殿に」
「鬼の話はどうでごわすか」
西郷もまた大久保に顔を向けた、そのうえで言った。
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