DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)
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神様って何が偉いの?
「くそ…何なのよこのドラゴンって生き物は!?堅くてなかなか倒せないじゃないのよ!………こんな事なら、オリハルコンの武器が出来上がってから来れば良かったわ!」
今私の目の前では、アルルさんが『ドラゴン』と『ラゴンヌ』を相手に苦戦をしております。
そして装備してる武器の弱さに嘆いておりますわ。
「おいおいティミー…最近お前の彼女は我が儘じゃね?大丈夫ですか」
元から小うるさかったですけど、敵が強くなるに連れうるささの度合いが増えておりますね。
『王者の剣』の完成を待たずに出立を決めたのは彼女なのです。
一番文句を言ってはいけない人物でしょうに…
お父さんはアルルさんに聞こえる様に、ワザと大声でお兄ちゃんを叱ります。
直接言われているお兄ちゃんは苦笑いをするしかないですね。
でも、反論をしてくれない彼氏にご不満なアルルさん…
どうにか敵を倒し此方へ戻って来る時、お兄ちゃんへ不満をぶちまけようと顔に出ておりますよ。
しかし、大きく息を吸い込み、文句を言おうとしたその瞬間…
お兄ちゃんはビシッと左手をアルルさんに翳し文句を遮ると、視線を通路の奥へと向けて皆さんの注意をそちらへと向かわせる。
そう…通路の奥からは、新たな敵『ドラゴン』が3匹、臨戦態勢で此方へ身構えております。
アルルさん達“戦闘要員”が慌てて身構え戦おうとしますが、お父さんとお兄ちゃんが自ら前衛へ出張り、ドラゴンの相手をするみたいです!
勝負は一瞬でした…
ドラゴンA(仮)がブレスを吹くと、お父さんがバギマでそれを逸らし、その隙にお兄ちゃんがドラゴンB(仮)に斬りかかります。
お兄ちゃんの武器は、グランバニアでは一般的な剣で、現在アルルさんが装備中の『稲妻の剣』等より程度は低く、価値も低いのです。
しかし、そんなナマクラ剣で攻撃をしたにも拘わらず、ドラゴンB(仮)の首は一刀両断!
更に驚きなのは、お兄ちゃんの強さにビックリしている間に、お父さんは残り2匹のドラゴンを瞬殺していた事なのです!
マヂ何時の間に!?って感じです。
涼しい顔で私達の元へ戻ってくるイケメン2人…
そしてお兄ちゃんは自分の剣をアルルさんに見せつけ…
「アルル…僕の使用する剣は、グランバニアでは一般的な鉱石を使っている代物だ。刀鍛冶が知り合いで、腕の良い人物だけど、剣自体に特別な力は宿っていない。鋼の剣よりマシくらいな代物だ。それでも努力して己を鍛えれば、君が苦戦したドラゴンですら、容易く一刀両断する事が出来るんだ。武器の善し悪しで強くなろうとしてはいけない…強くなりたければ己の意志を強くするんだ!………大丈夫、君なら出来るから焦らないで」
かっけ~…
剣を納めアルルさんに口づけをして後方へ引っ込むお兄ちゃん…
やっぱり遺伝子って重要なのかもしれません。
きっと宿屋に戻ったら激しいだろうと思われるバカップルに我慢しながら先へ進むと、神々しい鎧が飾ってある場所に到着。
こ、これは!?
「光の鎧発見ですわ!」
嬉しさのあまり思わず叫ぶおちゃめな私…
でも皆さんがキョトンとしちゃってますの!
「あ…いや…その…ほら、アルルさんが装備する『勇者の盾』と同じ紋章がありますわ!きっと代々ラダトームに伝わってきた鎧ですわよ!アルルさんに装備が許される『光の鎧』ですわよ!!」
ラダトームに奉られてあった武具の情報を誰も仕入れておらず、私も臭わす事を忘れてた為、皆さん胡散臭そうに私を見てます。
助けて“私の中に眠るリュカの遺伝子”よ!今こそ開花し皆を丸め込む時よ!!
「じゃ…この鎧はアルルが装備するって事で決定ね。………ほら、手伝ってあげるから全裸になって!」
「な、何で鎧を装備するのに全裸になる必要があるんですか!?それに手伝わなくったって結構です!イヤラシイ!」
はぁ~…
今回もお父さんに助けられましたわ…
“此処はゲームの世界なんだ”などとは皆さんに言えませんからねぇ…
「どうしたんですかティミーさん!?アルルの装備が強化されたのに、残念そうな顔をして?」
私がちょっぴり自己嫌悪に浸ってると、ウルフが目聡く何かに気付きお兄ちゃんに話しかけます。
「え!?ぜ、全然…ざ、残念ではないよ!うん。アルルに似合ってて素敵だなと思うよ!」
何やら図星を突かれた様で、戸惑うお兄ちゃん…
ただ私としては、『光の鎧』はごっつすぎてアルルさんには似合わないと思います。
「ウルフ…お前もまだまだだなぁ…いらん言葉が多いよ」
お父さんはお兄ちゃんの心理を読み切ってるらしく、余計な一言を言う弟子を戒めます。
「ただでさえ露出度の低い恰好のアルルなのに、その鎧を着るとパンチラすら拝めなくなるだろ。そりゃ彼氏としてはガッカリMAXだよ!そのぐらい理解してやれよ」
そ、そう言う理由!?
男ってやっぱりみんなそうなの!?
強敵揃いのダンジョン内でイチャつくカップルを無視しながら、やって参りました最上階!
此処には石にされたルビスが奉られてるハズです。
そう…この世界を創造した精霊神ルビス様の石像か!
「こ、これがルビス様ですかね?」
ウルフがルビスの美しさ(ミニスカートの奥)に見とれながら、誰にともなく尋ねるのだが…
普段、一番最初に『知らね!』とか感想を言うお父さんを始め、我が一族が揃って困り顔をしている為、彼の質問に答える者は居ない。
「ど、どうしたのティミー…変な顔をして?」
「…あぁ…うん…あの…」
うん…何というのかな…?
「どっかで見た事あるよね?」
「そ、そうねリュカ…な、何だか身近な気がするわね…」
そう、それ!お父さんとお母さんの会話こそ、今の私達の言いたい事よ!
似てるのよね!
「よ、予想外でしたわねお父さん…どうしますか、美女ではあるのだし、封印を解いたら口説きますか?ベッドに連れ込みますか?家族を増やしますか!?」
精霊の祠でアスカリーさんから“ルビス様は絶世の美女”と聞いてるお父さんは、絶対に口説き落とす気マンマンで此処にいるはず…いや、此処に来たはずでした。
「………ともかく…封印を解かないとね」
私の質問には答えず、妖精の笛を吹き封印を解くお父さん。
…っつか、曲目が『コンドルは飛んで行く』ってどういう事よ!?
笛を吹き終わると、淡い光が石像を包み込み、色艶を取り戻させる。
完全に石化から解放された美女が、私達の前で瞳を開けニッコリと微笑む。
「あ、貴女がルビス様ですね…わ、私はアルル!表の世界より、大魔王ゾーマを倒すべくアリアハンより参りました。どうかお力添えをお願い致します!」
「よくぞ私の封印を解いてくれました。アリアハンの勇者アルル…私はルビ「やっぱり母さんじゃんか!」
アルルさんの恭しい挨拶…それに神々しく答えるルビス(と思われる女性)…
どちらの空気もぶっ壊すお父さんの声。
「は?…あの…私は…」
困惑するのはルビス(と思われる女性)。
「何だよ…母さんもこっちの世界に来てたんだ。しかも何…石になったりしちゃって?来て早々、ゾーさんに封印されちゃったの?ダッせー!」
完全にマーサお祖母ちゃんだと決めつけ話を進めるお父さん。
「い、いえ…私は貴方の母では…」
目の前のルビス(と思われる女性)は、お父さんの言ってる事が間違ってると言いたいのだが…
「あれぇ?何だか少し若返った?…石化すると若返るのかな?僕もビアンカも10年近く石になってたから、今でも若々しいし!」
完全に無視し話させない。
「あ、あのね…私は貴方の母ではありません」
だろうな!
「あはははは、何言ってるんだよ母さん!?僕が母さんを見間違える訳ないだろ。………あれぇ、でも母さん…オッパイが萎んだかな?アルルとそれほど変わらない…それとも歳か?寄る年波には勝てないか!?」
「な…し、失礼な!!私はそんなに高齢では………ない……………ハズ…………」
お、面白い…マヂで笑えるわ。
多分間違いなく、この女性はルビスで女神なのだろうけど、しがない人間の男一人に振り回されている。
この女神が情けないのか…この男が凄いのか…
「あぁそうだ母さん!唯一の男孫に彼女が出来ました!」
「あの…父さん…マーサ様じゃない様な気が…「可愛い孫が幸せになったんだ…喜んであげてよ母さん!」
きっと…いえ、100%マーサお祖母ちゃんでは無い事が解っているのだろうけど、それでもマーサお祖母ちゃんとして話を進めるお父さん。
お兄ちゃんの台詞を遮って喋る。
「だからちげーって、お前のお袋じゃねぇーつってんだろ!そんなババアじゃねぇよバカ!いい加減に気が付けよ!」
ぷふっー!!
私は思わず吹き出した。慌てて後ろを向き、笑った所を見せない様にはしたけれど、我慢出来ずに吹き出しちゃった。
だってだって…
この世界の女神様が、創造主様が…『だからちげーって』とか叫ぶんだもん!
絶妙なタイミングで、最高のツッコミをするんだもん!
おひねり投げようかしら?
「私は、この世界を創造した精霊神ルビスよ!いい加減お前のお袋と間違えるのを止めろバカヤロー!」
うわぁ…
流石に引くわぁ………
自身の偉大さを自慢する奴って………
「心の狭い女だな…」
そんなブチ切れ女神に対し、クスクスと笑いながら侮辱するお父さん。
これで互いの立場が決定したわね。
「こ、心が狭いとは…神に対して何という言いぐさ!少しは弁えたらどうですか!?」
「弁えるのはお前だろバカ女!」
ほら…お父さんが怒鳴りましたわ。
「………!」
逆に怒られて戸惑うルビス…
さっきまでご立腹で怒鳴ってたのに…
「一体どれだけの人間に迷惑をかけていると思っているんだ!?…それを考えたら、僕がちょっとくらいアンタをバカにしたって、金切り声を上げるべきではないだろうに!それが何だ?この世界を創造したのなんのって偉そうに…お前この世界を造った後に、外敵からの侵略に対し何ら対策を講じてないじゃないか!しかもアッサリ封印されて手も足も出なくなってるし…」
「そ、それは…し、仕方ないじゃない…不意を突かれて、どうしようも出来なかったんだもの…」
神様がする言い訳じゃないわね。
相手が大人しくないと強気に出れない女神様って…どうなの?
「そんな程度の奴が、『自分は神だ。皆崇めろ!』と偉そうにするなと言っているんだ!僕がアンタをどう呼ぼうと、サラッと受け流す寛大さを見せてみろってんだ!何より僕は、最大の被害者なんだぞ…アンタとあのヒゲメガネに、無理矢理連れてこられた被害者なんだからな!」
何!?この騒動の原因は、この馬鹿女神とウチの馬鹿竜神の所為なの!?
「ヒゲメガネ?…誰ですかそれは?私が助けを求めたのはマスタードラゴンですよ。ヒゲメガネ…神違いでは?」
「え!?マスタードラゴン様が今回の件に関わってるんですか?」
お兄ちゃんにもお母さんにも寝耳に水みたい。
「え?…貴方も異世界から訪れた方ですか?おかしいわね…マスタードラゴンは、最も頼りになる男を1人差し向けると言っていたのに…」
「僕を追って自力で来たんだよ」
「そ、そんな…不可能です!本来、この世界と貴方達の世界とは繋がっておらず、人間の力だけで行き来する事は出来ないんです!我ら神々が力を合わせて、初めて可能になる事象なのです!」
「ふざけんなバカ!そうやって神は人間より上だと思っているから、今回みたいにダッセー結果に陥るんだ!この世界の混乱は全てお前の驕りによるものだ!人間は大切な人の為なら、持てる実力以上の結果を出す事が出来るんだ…創造主のクセに何も知らないんだな!」
まったくだ…
神様とか言われ、人々から無条件で特別扱いをされてるから、人々を見下す結果になるんだわ!
私も気を付けよう…お姫様とか言われて持て囃されてると、周りの見えない馬鹿女になってしまいますわ。
「どうやら貴方の言う通りです…私は奢っていたのですね。リュカ…と申しましたね…ありがとうございますリュカ。私の心を覚ましてくれて…」
まぁ流石は神様ね…自らの非を認め素直に陳謝しますわ。
「マスタードラゴンが貴方を送ってくれた理由が解りました。貴方の様な偉大な人物こそが、世界を救い人々に希望の光をもたらすのです」
うん。とってもキレイに纏まって良い感じです。
「知らねーよそんなこと!」
「………は!?」
だけど、そんな事はさせぬとばかりにお父さんが怒り出します。
何ででしょうね…折角キレイに纏まったのに?
「さっきも言ったが、こっちは被害者だぞ!僕にだって生活があり、仕事だってあるんだ…なのに無理矢理こっちに来させられて、勝手に大冒険に巻き込まされて…何が『世界を救い人々に希望の光をもたらす』だ!僕はこれでも一国の王なんだぞ…現役の王様なんだぞ!なのに王様拉致ってどうすんだよ!僕の国はどうなってると思うんだよ!大混乱してたらどうする?誰がそれを償うんだ!?人的・物的被害を誰が補填するんだ!?」
「ほ、補填!?そ、そんな…私は…」
「あぁ、そうだったな…アンタは石にされてただけで、なぁ~んにも悪くはないのですよねー!」
ちょっとルビスさんに同情してしまいそうな言い方です。
「そ、そんな言い方って…い、いえ…申し訳ございませんでした!私が不甲斐ないばかりに、異世界のリュカさんにまでご迷惑をお掛けして…私に出来る事があれば、可能な限り貴国の損害補填に尽力します!………とは言え、マスタードラゴンがこちらの世界で力を使えない様に、私は貴方の世界では無力です。その事だけはご容赦ください」
「…可能な限り…ねぇ………じゃあさ、口添えしてよ」
「口添え…?」
何を企んでいるのでしょうね♥
「うん。帰ったらヒゲメガネに『天空城よこせ!』って言うから、お前は峰不○子みたいに『プサ~ン♥』ってオッパイ押し付けてお強請りしろ!」
「だ、誰ですかその峰○二子って?………そ、それに私は貴方達の世界に行けないので、オッパイ押し付けるのは………」
言うに事欠いて『天空城よこせ!』ってか!?
つーか「『プサン』と『ルパン』じゃ『ン』しか合ってないじゃない…」
しかし私の呟きは届かなかった…
「あーもー使えねーな!お前一体何出来るんだよ!?」
だんだん神様に見えなくなってくるルビス…“お前”って言われてるよ。
お父さんの前では哀れにしか映らない。
「な、何と言われましても…そ、そうですね…今の私は長時間封印されていた影響で力を殆ど失っております。しかし世界を覆う大魔王の力が消え去れば、現状の私にでもマスタードラゴンと連絡を取る事が出来るでしょう…そ、その時に最大級口添えをする………と言う事でどうでしょうか?」
仕事で失敗をやらかし、上司に叱られているOLにしか見えない…
神様なんだから、胸の前で手をモジモジさせて、相手の顔色を伺うな!
可愛らしく見えるのが苛立たしい。
「リュカ殿…もう許してあげましょうよ。ルビス様だって反省しておりますし、口添えのお約束は得たのですから…」
ラン君がルビスちゃんの可愛い仕草に落ちた。
男って奴は…相手がちょっと可愛ければ、何でも許しちまいやがる!
「そうだぜ旦那!あんまし女神様を苛めちゃ可哀想だ…それに旦那のお袋さんに似てるんだろ?親孝行だと思って許してやれって」
「そうですよリュカさん!美女を泣かすのは良くないって言ってたじゃないですか…もうルビス様泣きそうですよ」
何という事でしょう…カンダタはともかく、ウルフまでもがルビスの男受けを狙った仕草にやられてしまいましたわ!
「父さん…みんなもそう言っているんだし、僕もこの世界へ来た事を恨んでません…この辺で許してあげてくださいよ」
お、お兄ちゃんまで…
おい、お前の婆さんにクリソツな女の色香に騙されるんじゃない!
「あ゙…何だお前等………ふぅ…まぁいいか」
どうやらお父さんは飽きたらしく、ルビスを責めるのをやめちゃった…
こっちは全然よくないのに!
「あ、ありがとうリュカ…ありがとうございます皆さん!」
これまた可愛く上目遣いでお礼を言うブリッ子女神。
くっそ~…顔赤くしてデレついてるんじゃないわよ!
「勇者アルル…これは『聖なる守り』です。これを『聖なる祠』へ持って行き、『太陽の石』と『雨雲の杖』と共に神官に見せれば、魔の島へ渡る為に必要なアイテム『虹の雫』へと換えてくれるでしょう」
男共一人一人(お父さんは除く)に、目を見詰めながらお礼を言い終わると、重要アイテムである『聖なる守り』を取り出し、勇者アルルさんへと手渡すルビス。
『虹の雫』の情報と共に、ゾーマへの道筋を示す。
「あ、ありがとうございます…これがあれば魔の島へ行く事が出来るのですね!?ありがとうございますルビス様!」
良く考えたら、この女の尻ぬぐいの為に冒険しているワケなのだから、こっちが礼を言う必要ってないわよね。
「勇者アルルよ…礼には及びません。どうか大魔王ゾーマを倒し、世界に平和を取り戻してください…私の望みはそれだけです。貴女達なら出来ると信じております。どうか気を付けて………」
何で何時まで経っても上から目線で物を言うんだコイツは!?
自分の役目は終わりと言わんばかりに、魔法でこの場を去ろうとする…
おいおい…そんな勝手な事が許されると思ってんのか!?
「おい、ちょっと待て!」
ほら…私の大好きなパパは、そんな身勝手を許しはしません。
女を誑かしても、女に誑かされないのが私のパパよ!
「………ま、まだ何かあるのですかリュカ?」
「え、何お前…今、ルーラでどっかに行こうとした?1人でどっかに行こうとしましたか?」
しましたね。間違いなくどっか行こうとしましたね!
「え、えぇ…聖なる守りも渡したし、今の私に出来る事はありませんし…聖なる祠へ帰ろうかと…そ、それが何か?」
“それが何か?”じゃねーよ。
何お前一人、楽をしようとしてんだ?
「あ゙、何言ってんだお前…ふざけんな!僕等はこれから危険な敵陣へ乗り込むんだぞ!それなのにお前は安全な場所でのんびり過ごすのか!?」
私のお父さんはなぁ、他人に面倒事を丸投げにしても、されるのは大嫌いなんだぞ!
「きゃぁ!」
ルビスはお父さんの怒りに気圧され、奉られていた台座から後ろへ落っこちる。
そしてミニスカから真っ白なおパンツをさらけ出す。
「あ、白だ…」
「え?………きゃぁ!!」
図らずも堪能出来てしまった純白パンツに、思わず反応するマイダーリン。
やっぱり男って、煌びやかな物よりシンプルな白の方が好きなのかな?
(ポカリ!)
「あいた!」
「馬鹿者…見えたとしても見えてない様に振る舞え!」
女の扱いはこの男に聞け…そんなキャッチフレーズが頭に過ぎる。
ウルフの要らん一言をキッチリ叱るお父さん。
「す、すんませんでした!」
ウルフも師匠からの説教を実直に受け止め、体育会系の様なノリで詫びましたわ。
「怒鳴ってすまなかった…それと訂正する。母さんに似ていると言ったが全然似てない。僕の母さんはたった1人で魔王の魔力を押さえ付けてたんだ…味方の居ない魔界で1人…安全な所に隠れることなく…自分の命を削ってまで魔王の力を押さえ込んだんだ!」
そしてジェントルメン・リュカは、しなやかな動きでルビスに近付くと、手を差し伸べ優しく抱き起こし、尊敬出来る母マーサの事を語る。
そう…偉大なる聖母マーサ様の事を。
「リュ、リュカ……しかし先程も申しましたが、私は力を失っており皆さんと共に戦う事など出来ないんです…どうかそれを判ってください」
…ルビスちゃん泣いちゃった。
「ハァ~…」
だがお父さんは怯まない。
大きな溜息を一つ付くと、疲れた様な表情でルビスを見詰める。
泣けば許されるなんて思うなよ!
「戦うだけが全てではないだろう…敵を攻撃する事が出来なくても、後方から回復魔法や補助魔法での援護で戦闘に参加したり、移動中に荷物持ちとしてアルル達の負担を減らす事だって出来るだろ!」
「に、荷物持ち…ですか…!?」
何だ?
そんな雑用はイヤか!?
“私は女神様なのよ!”ってか!?
「そうだよ!『アナタになら出来ます!』とか言って、面倒事を丸投げしないで『少しでも負担を減らせる様お手伝いします!』ってパーティーに参加しようとする心意気がほしいね!」
「…………………………」
今度は無言か。
「それとも人間は神の為に全てを犠牲にするのは当然…しかし神は人間如きに何一つ犠牲になど出来ない………と思ってるの?それが本音?」
「そ、そんな事思っていません!!」
それを行動で示せっての!
「じゃぁ…人間の為に、自身が傷付く事も顧みず、勇者アルルのパーティーに参加して、大魔王討伐に協力しようよ………それこそが長きに渡り大魔王に苦しめられてきた人々に対し、無力な神として報いる術だと僕は思うよ」
勝負ありね。
これでルビスは断る事が出来ないわ。
ここで拒否れば、それは人間を軽視している証明よ。
「わ、分かりました…私も皆さんと一緒に大魔王討伐に同行します…しかし大魔王の暗黒の力が消え失せるまで、私は神としての力を使う事が出来ません。腕力もなく魔法力も一般人よりかは上程度です。どうかその事を忘れないでください」
「あ、あのルビス様…ご無理をなさらない方が………丸投げだなんて思っているのはリュカさんだけですから…」
アルルさんの気持ちも解る…
神様と一緒に冒険なんて、気を使ってしょうがないわよね。
もっと気楽に行きたいわよね!
「いいえアルル…リュカの言う事は最もです!私はこの世界を造りましたが、外敵からの侵害を防ぐ手立てを何も講じませんでした。私の考えの甘さから、この世界に住む全ての者に、多大なるご迷惑をかけてしまった事…その責任を取らねばなりません。その為に少しでも出来る事があれば、自ら進んで行わなければならないんです。…本来リュカに言われるまでもなく、私は皆様と共に旅立たなければならなかったのに…お恥ずかしい限りです」
神様を手玉に取る男…それはリュカ。
私の尊敬するお父様にして、大国グランバニアの偉大なる国王陛下。
絶対に面倒事を押し付ける要員を増やしたかっただけなのだろうに…
それが解ってる私達には、
「「「「「はぁ~………」」」」」
と、溜息しか出てこない。
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