仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜
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第五話『天使と悪魔の二重奏』
その日、杏子は動画配信サイトである生配信動画を視聴していた。
「杏子ちゃん、何見てるの?」
「今話題のVライバーのゲーム配信動画よ、お義兄ちゃん。」
光太郎の質問に杏子は画面を見せながら答える。
『こんばんわ〜、みんなのへびのんだよ〜。今日発売の“もちっとモンスター クリムゾン”を早速プレイしていきま〜す。へびのんはゴルドの方じゃなくてクリムゾン限定の方のキャラがほしいからこっちにしたんだけど、みんなはどう?』
画面では右下に声の主と思われる、右半分に歯車が露出した機械じかけの仮面をつけた少女が喋っている。
「あら杏子ちゃんも蛇野あかりのリスナーなの?」
画面を見て克美が反応する。
「たまに見る程度だけどね。それより、克美さんも知っているの?」
「名前くらいはね。男性教師や生徒なんかが話しているのを聞いているからね。」
「結構有名なんだな。俺はあんまりこういうのは見ないから知らなかったよ。」
克美と杏子の会話に光太郎は画面を見ながら言う。
『ええと、何っ!えっ?LとRとホームボタンを同時に押すとムービーをスキップできる…ちょっと!嘘言わないの!へびのん過去作もプレイしているから知っているよ!それ、データリセットの方法でしょ!今のゲームにはオートセーブがあるから平気なの!』
「なんか騒がしいねぇ。」
霞のジョーは動画を見ながらぼやく。
「Vライバーのゲーム配信はだいたいこうよ。配信者もリスナーもワイワイ賑わっているわ。」
杏子は霞のジョーに説明する。そんなふうに話していると、
『赤いのありがとう!“スパイラルシェイパー”さん、ええと…“へびのんの〜ん!きょうもいつもの。”ありがとナイスぅ〜!』
蛇野は何かを読み上げて喜ぶ。
「こいつ、なんでいきなり喜んだんだ?」
「あれは赤チャット、所謂投げ銭ってやつね。最高額でチャットしたから喜んだの。」
困惑する霞のジョーに杏子は説明する。その後も投げ銭は続き、少し経つと杏子は画面を閉じる。
「どうしたんだ?」
「流石にクリアまで生配信をずっと見るのは時間的に厳しいから、続きはアーカイブで見るの。だから今はこれでおしまい。」
杏子はそのまま別の作業を始める。
(なんだろう、なにか嫌な予感がする。)
光太郎は自身が持つスマートフォンを使い、蛇野あかりについて調べ始めた。
「クリオネ怪人、今日の様子はどうだった?」
その夜、ネオゴルゴム神殿にクリオネ怪人は呼ばれ、ソフィルにあることを聞かれる。
「はい、本日の最高同時視聴人数は最新作のゲーム実況ということもあり58万人、そのうち国内は18万人でした。赤チャットの総額は600万円。一部は固定で複数回赤チャットを投げるユーザーになりつつあります。」
クリオネ怪人は三十代半ばと思える男性に姿を変えて説明する。
「調子は良いようだな。」
「はい。最初に捨てアカウントを利用して数千人登録者がいるように見せ、新規が入る度に捨てアカウントと入れ替えていけば、またたく間に人気なんて作れます。しかし、最初の初期投資をしてくださったのは間違いなくネオゴルゴムの皆様のおかげ。この力をネオゴルゴムの資金運用に役立てることができて光栄にございます。」
クリオネ怪人人間態は頭を深々と下げる。
「これからも、この調子で頼むぞ。」
「ええ。次の投稿は15時間後。それまで失礼します。」
クリオネ怪人人間態はネオゴルゴム神殿から去る。
「まさか、こんなものにこれだけの価値があるとはね。」
リシュナルは呆れるように言う。
「現代ではこういったものに人間は価値を見出している。それこそ、極論を言えば見た目さえ良ければ中身など気にしない。南光太郎も、こんな作戦で我々が資金を集めているとは思うまい。」
「奴には考えつかないだろう。そもそも、この存在を知っているかすら怪しい。」
ソフィルとエピメルは笑いながら会話をしていた。
数日後、光太郎はあるものを見つけ出し、杏子達を集める。
「みんな、これを見てくれ。」
光太郎は蛇野あかりの投稿した3Dの部屋を見せる。
「光太郎さん、これがどうかしたの?」
克美は違和感を感じずに光太郎に質問する。
「ああ、なんの変哲もない部屋だと思ったんだ。でも、これを見てほしい。」
光太郎は部屋の一部を拡大して見せる。
「これは、ゴルゴムの紋章だ。」
そこにには、球体上の赤い宝玉を見上げる蛇のマークが書かれたレリーフがテーブルの上に置かれていた。
「まって、ゴルゴムのマークってこれでしょ?」
杏子は仮面ライダーBLACKの胸部を移した写真を取り出し、全員に見えるように見せる。
「そのマークは近代化した際に簡略化されたものだ。本来のマークはこれだ。」
光太郎はそう言い、かつて自動を繰り広げた強敵、剣聖ビルゲニアの盾、ビルテクターの写真を見せる。そこには、蛇野あかりの部屋のレリーフと同じものが描かれていた。
「本当だ、じゃあこいつって!」
霞のジョーはその類似性を見て確信する。
「ああ、ネオゴルゴムのメンバーだ。おそらく、資金調達が目的だろう。」
「どうしてそこまで断言できるの?」
「実況配信以外の動画には、必ず投げ銭を促すサブリミナル画像が差し込まれていた。普通の人なら見逃すくらい僅かな瞬間でしかないから、気づかないのも無理はない。」
響子の質問に光太郎は答える。
「じゃあ、このチャンネル自体が、ネオゴルゴムのために作られたものってこと?」
「その可能性が高い。今から、概要欄に書かれている住所に行ってみる。」
光太郎は克美の質問に答え、行動を開始した。
「そういえば、杏子さんってネットの事情とかにも詳しいけど、普段はどんな仕事をしているんですか?」
響子は杏子に疑問を投げかける。
「普段はね、インターネットのブログサイトでの広告収入で生計を立てているの。」
「すごいですね!」
杏子からの返答に響子は感激する。
「私のお父様、ゴルゴムのメンバーだったのは知っているでしょ?それで、どこの会社も雇ってくれなくて、最初は人を選ばないアルバイトで繋いで、20年近く前から人前に出なくていい、個人情報や風景写真さえ載せなかければ、ある程度は特定されにくいこっちで稼ぐことにしたの。最初は大変だったけど、何年か経つ頃には軌道に乗り始めて、ようやくってところよ。」
杏子は今の生活の経緯を話す。
「なんでだよ。子供に罪はないだろ。」
霞のジョーは納得がいかず、口を出す。
「世の中、例えそうだったとしても、簡単に割り切れるものじゃなかった。僅かな期間でも日本を支配した悪の組織に父親が所属していたって知られれば、関わり合いになりたくないって判断するのは仕方のないことなの。」
霞のジョーの意見に対して、杏子は事実を伝える。
「でも、だから杏子さんはすごい強いんですね。」
響子は杏子の話を聞いて意見を伝える。
「私は別に強くはないわ。ただ、頼るのが苦手だっただけよ。」
杏子の言葉には、強い意思が籠もっていた。
「ここが概要に載っていた場所か。」
光太郎はあるアパートに着いていた。
「ここの突き当りの部屋か。」
光太郎は部屋のインターホンを鳴らす。
『宅配便ですね。』
部屋の主と思われる男性の声が聞こえ、光太郎が待っていると、扉を開けて出てきたのはクリオネ怪人人間態であった。
「なっ!どうしてここに来た、南光太郎!」
クリオネ怪人人間態は動揺しながら言う。
「どうして俺の名を?」
「しまった!こうなれば!」
クリオネ怪人は自身の動揺によって光太郎の疑念が確信に変わったことを悟り、クリオネ怪人の姿に戻り、光太郎に襲いかかる。
「やはりネオゴルゴム!目的はなんだ!」
「金だよ!世の中、活動資金はどんなものでも必要なのさ!」
光太郎とクリオネ怪人は掴み合いをしながら会話をする。
「やっていることはただの犯罪行為じゃないか!」
「馬鹿なやつだ。見抜けないほうが悪いんだよ!おかげでアイツらは都合のいい金蔓になってくれた。」
お互いが掴んでいた手を離すと、クリオネ怪人は笑いながらリスナーを侮辱する発言をする。
「いくぞ!変…身!」
光太郎の変身の掛け声とともに体組織を変化させる変身ベルト、サンライザーが出現し、キングストーンと太陽、2つのハイブリットエネルギーが全身を駆け巡り、南光太郎は、仮面ライダーBLACK RXへと変身するのだ。
「俺は太陽の子!仮面ライダーBLACK!RX!」
RXはクリオネ怪人に勇敢に立ち向かう。
「お前を倒せば、俺が最強だってことが証明される!」
クリオネ怪人はヒレ状になっている腕を鞭のように振るい、RXに叩きつける。
「柔らかいせいか、一撃が厳しい。なんとか隙きを見つけないと。」
RXは反撃の機会を伺い、
「そこだ!」
クリオネ怪人の腕を掴み、投げ飛ばす。
「うぐっ!」
背中を打ち付けたクリオネ怪人はうめき声を上げながら立ち上がる。
「いくぞ!」
RXはジャンプし、体を撚る。
「RXキック!」
RXは必殺のキックを放つが、
「馬鹿め!」
クリオネ怪人は頭部を変形させ、無数の触手を出現させてRXの両足を捕らえ、キックを封じると、
「さっきの仕返しだ!」
その勢いでRXを力強く地面に叩きつける。
「どうだ仮面ライダー!このまま丸呑みしてやる!」
クリオネ怪人はそのまま触手を動かしてRXを捕まえようとするが、
「そうはいくか!」
RXはすぐさまバックステップで触手による攻撃を避ける。
「リボルケイン!」
RXは左手をサンライザーに構え、太陽のエネルギーを凝縮した光の杖、リボルケインを出現させ、右手に持ち替えると、そのままクリオネ怪人めがけジャンプする。
「ハアッ!」
「させるか!」
RXはリボルケインを突き出し、それを見たクリオネ怪人は触手でリボルケインを絡めとろうとするが、太陽エネルギーの熱によって触手が焼き切れる。そこにリボルケインが突き刺さり、凝縮された太陽エネルギーを敵めがけて全放出するRXの必殺技、リボルクラッシュが炸裂し、クリオネ怪人は爆発し、蒸発する。
後日、蛇野あかりのアカウントや公式ページはすべて削除されており、ニュースサイトではそのことで持ち切りとなっていた。
「こういうことばっかりニュースサイトは作業が早いな。」
霞のジョーはニュースページを見ながら言う。
「今話題の有名人が痕跡を全部消して消えたってなれば、ニュースサイトだけじゃなくてネット掲示板でもいろんなことが書かれているわ。」
杏子は匿名ネット掲示板を開きながら言う。
「そうね。インターネットの普及で、顔を見せず、声も聞かせずに好き勝手なことを言えるから、出鱈目なことを言う人も増えたのよ。」
克美は掲示板の実情を呆れながら言う。
「そうだな。インターネット、正に天使にも悪魔にもなるツールだな。」
光太郎は今回の事件で身にしみたことを言う。世の中には輝かしい光があれば、必ず裏とも言える影は有る。ネオゴルゴムの暗躍はこれからも続く。光太郎の戦いも、ネオゴルゴムがある限り終わらないのだった。
続く
次回予告
時代とともに忘れされてた昆虫、ヒラタハムシ。そんなヒラタハムシによる反逆が始まる。『トゲトゲの驚異』ぶっちぎるぜ!
後書き
怪人図鑑
クリオネ怪人
身長:195cm
体重:120kg
能力:ヒレ状の腕、収納されている頭部の触手
クリオネの特性を持つネオゴルゴム怪人。改造元兼人間態は30代半ばの冴えない男性。クリオネ怪人に改造される前からネオゴルゴムのメンバーであり、ネオゴルゴムの資金確保のためにVライバー『蛇野あかり』として活動していた。
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