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イベリス

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第八十三話 合宿前日その五

「それはほんのです」
「少しですか」
「氷山の一角です」
「出ない事件の方がですか」
「多いです、人を床の上で背負い投げをすれば」
 その様なことを行えばというのだ。
「普通誰かが見ていますと」
「通報されますね」
「即刻暴行罪やら傷害罪やらで」
 そうした罪状でというのだ。
「逮捕されます」
「人を床の上で背負い投げしたら死にかねないですね」
「打ちどころが悪ければ」
 それこそというのだ。
「死にます」
「やっぱりそうなりますね」
「わかっていないでは済まされません」
 速水は断言した。
「そこまでの行いはです」
「言うまでもないですしね」
「凶器を使っていることと同じです」
 まさにというのだ。
「そうした行為は」
「危険過ぎるので」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「普通はそんな行為を行えば」
「捕まりますね」
「はい」
「そうならない方がおかしいですね」
「そのおかしいことがです」
「普通なのが、ですか」 
 咲は目を曇らせて言った。
「学校の先生の世界ですね」
「そうです、間違ってもです」
 速水はさらに話した。
「そうした行為が普通になる様な」
「そうしたですね」
「おかしな世界は許してはいけません」
「学校の先生の世界は」
「そもそも生徒は教えを受ける立場で」
 暴力を振るわれる彼等はというのだ。
「教師に比べて弱いですね」
「立場がですね」
「年齢もずっと低く」
 教師達から見てだ。
「そして体格もです」
「劣ったりしていますか」
「ですから」
 それでというのだ。
「それこそ幾らでもです」
「暴力を振るえますか」
「抵抗も反撃も出来ない相手ですから」
「そうした人を殴ったり蹴ったりですね」
「言葉の暴力もです」
 これもというのだ。
「ありますね」
「そうですね」
「教育と言えば」 
 この一言でというのだ。
「暴力が許されるなら」
「とんでもないですね」
「愛の鞭ではありません」
 速水は言い切った。
「愛の鞭は厳しくすることですが」
「暴力は違いますね」
「若し厳しい教育と暴力を履き違えているなら」
 速水は再び言い切った。
「もう教師失格です」
「その時点で」
「はい」 
 まさにというのだ。
「殴って蹴ってで人に何が入るか」
「恐怖だけですね」
「恐怖で怯えきった生徒を服従させてです」
 その様にしてというのだ。 
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