ハッピークローバー
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第五十八話 祭りが終わってその三
「何かとね」
「人生って」
理虹は一華のその言葉に引いた顔になってこう返した。
「私なんてお互いの小説の趣味をよ」
「お話してたの」
「私は恋愛で」
そちらのジャンルの小説が好きでというのだ。
「古ちゃんは歴史だったのよ」
「それでそれぞれの好きな小説のなの」
「お話してたのよ」
「そうだったのね」
「けれど途中で教科書のお話になって」
「教科書に出てる小説?」
「一学期芥川授業で習ったでしょ」
芥川龍之介である、大正から昭和初期にかけて活躍した小説家であり多くの短編小説を残している。
「そうでしょ」
「ああ、羅生門ね」
一華はその習った作品のことを思い出して応えた。
「あれの人ね」
「芥川がイケメンとか」
「ああ、あの人確かに」
一華も芥川の顔の話になるとそれはと応えた。
「結構以上にね」
「イケメンでしょ」
「太宰治や中原中也もだけれどね」
「芥川もでしょ」
「そうよね」
「それでそのお話もしたのよ」
「芥川がイケメンだって」
「それで一緒にスマホで芥川のこと検索もしたら」
ここでだ、理虹は。
イカゲソを食べつつ自分のスマートフォンにある画像を出してきた、そrはというと。
茸みたいな横にやたら広い髪の毛に三角の目、小さな唇に細長い顔をした人間の絵だった。一華にその絵を見せて話した。
「こんなの出たのよ」
「・・・・・・何それ」
一華はその絵を見てビールを飲む手を止めて問うた。
「死神?」
「芥川の自画像なのよ」
「それが自画像って」
一華は引いた顔で述べた。
「おかしいでしょ」
「描いてる人の心がね」
「芥川って自殺してるけれど」
このことは授業で習う前に聞いたことだ。
「それでそんな自画像描いてたの」
「そうみたいね」
「ああ、何かね」
富美子がここで言って来た、彼女も飲んでいる。
「芥川って自殺する前物凄かったらしいわよ」
「精神的に?」
「頭おかしいって言ったら」
その様にというのだ。
「もうまさにね」
「その通りだったの」
「そんな風だったらしいわ」
「やっぱりそうだったのね」
「だから自殺したみたいよ」
実際にというのだ。
「あの人は」
「おかしくなってたから」
「何でも羅生門とか初期の作品は全然そういうのなくて」
「確かに別におかしくないわね」
一華もそれはと返した。
「教科書を読んでも」
「それが末期のね」
「自殺する直前ね」
「その頃の作品はね」
「おかしいのね」
「みたいよ、もう完全に頭がおかしい」
一華に真顔で話した。
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