IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐
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挑発
「ですからここでビットを出して追い詰めようとした訳でして……」
「でもその位置からだとセシリアさんが止まっているのが丸分かりになってしまいますよ?」
「で、ですがここはこの手が最善で」
「ここは無茶でも鈴さんと連携して接近戦の方が良かったのでは? 隙が出来ればビットも使えますし」
時間は『学年別トーナメントで優勝したら一夏さんと付き合えるらしいよ』騒動の放課後。場所は更衣室から第3アリーナに抜ける廊下で、今は歩きながらこの間の山田先生との対戦映像を映像端末でセシリアさんに見せてもらいながら移動しているところです。
そしてこの後はトーナメントに向けた模擬戦を予定してます。そのために私とセシリアさんはここに来ています。廊下を抜けてアリーナに出ると誰もいないようでした。
時間が早かったからでしょうか。
「「「あ」」」
失礼、先客で鈴さんが私たちの真横で準備していました。
「奇遇じゃない。あたしはこれから月末の学年別トーナメントに向けて特訓するんだけど」
「奇遇ですわね。私たちも全く同じですわ」
どうやら鈴さんも今来たばかりのようです。そして例の噂のせいなのか二人の視線の間には火花が散っているように見えます。
「丁度良い機会だし、この前の実習の事も含めてどっちが上か白黒ハッキリさせとくってのも悪くないわね。カルラも含めて」
「あら、珍しく意見が一致しましたわ。誰がより強く、より優雅であるか、この場所ではっきりさせましょうではありませんか。カルラさんも含めて」
「ええ!?」
何故そんなことになってるんです!? 逃げる間もなく両腕を掴まれましたよ!?
「だってあんたセシリアに勝ったんでしょ? てことは少なくともこいつよりは強いってことじゃない。ならセシリアより練習になるってもんでしょ?」
「鈴さんのその言い方は非常に……ひじょーーーーーに気になりますが事実は変わりません。カルラさんは私の友にしてライバル! ここでリベンジさせていただきますわ!」
鈴さんはセシリアさんを見ながらニヤニヤとし、セシリアさんは顔を伏せて悔しそうにしながら、顔を上げた瞬間にはもう目に炎が宿っています。
これもう相手にしないとこの場から逃げられそうにありませんね。そもそもセシリアさんとは模擬戦する予定でしたし。
でもその前に……
「とりあえず腕を離してほしいんですけど……」
「だってこうしないとあんた逃げるじゃない」
よ、読まれてます。これは逃げても連れ戻されるだけですね
「分かりました。逃げません。逃げませんから離してください」
「では承諾も取れたところで早速始めませんと、時間がもったいないですわね」
「そうね。時間は有効に使わないとね」
言っている間にセシリアさんも鈴さんもISを展開してしまったので私もISを展開します。
「やりますけど、1対1でお願いしますよ?」
「あったりまえじゃない!」
「では私から……」
セシリアさんが言葉を続けようとした瞬間……
―警告! 警告! ロックされています!―
ISの警告と共に全員が飛来した超音速の弾丸を回避しました。弾丸が何もないアリーナの地面を吹き飛ばし砂煙を巻き上げます。
これは……
―データ検索、80口径レールカノンと確認―
レールカノン? そんな大型のものを付けているということは、あの人しかいませんね。
砲弾の飛んできたほうを見ると予想通り、漆黒のISを身に纏ったボーデヴィッヒさんが立っていました。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ……」
セシリアさんの声が強張っているのが感じ取れますね。
「どういうつもり? いきなりぶっ放すなんていい度胸してるじゃない」
鈴さんも軽口を叩いていますが『双天牙月』を肩に預けて『龍咆』を発射態勢に持っていってる辺り警戒レベルは高いです。一夏さんをボーデヴィッヒさんが叩いたと聞いてから鈴さんは特にボーデヴィッヒさんに嫌悪感を現していますから無理もありません。
というよりいきなり撃たれれば誰だって警戒しますか。私も右腰の突撃銃抜いちゃってますしね。
「中国の『甲龍(シェンロン)』にイギリスの『ブルー・ティアーズ』…それにオーストラリアの『デザート・ホーク・カスタム』……ふん、搭乗者のせいかデータで見たときの方が幾分か強そうではあったな」
分かりやすい挑発です。その程度の軽口は鈴さんやセシリアさんで慣れっこですよ私は。
「で? やるの? わざわざドイツくんだりからやって来てボコボコにされたいなんて大したマゾっぷりね。それともあれ? じゃがいも畑じゃそういうのが流行ってるの?」
「まぁまぁ鈴さん、こちらの方はどうも言葉が伝わってない様子ですからあまりいじめるのはかわいそうですわよ?」
二人ともしっかり挑発に乗っていますね。良くも悪くも乗りやすい性格なんですから……
それにしてもこういう時は仲いいですね。
「二人がかりで量産機に負ける程度の力量しか持たぬ者が専用機持ちとはな。よほど人材不足と見える。数しか能のない国と、古さだけが取り柄の国はな。さらに言い返すだけの度胸もないクズも一緒か……」
ボーデヴィッヒさんが私を冷ややかな目で見てきますが、まあ言いたいだけ言えばいいですよ。私は私のことを言われるのは平気なんですから。
でもお二人は今の言葉で完全に頭に血が上ったようですね。
―『甲龍』『ブルー・ティアーズ』共に最終安全装置の解除を確認―
ってええ!?
「ちょちょちょ! お二人とも! それはまずいですって!」
最終安全装置の解除、それは模擬戦ではなく本当の戦闘をやり合うという宣告。つまり命の保障は出来ない殺し合いの始まりを意味します!
ここは戦場じゃなくて学園のアリーナなんですよ!? せめて試合形式に留めるべきです!
「何言ってんのよカルラ! 相手がスクラップをお望みなんだからその望みは叶えてあげないとね!」
「そうですわよカルラさん。ああ鈴さん? 私は頭部を吹き飛ばすだけで結構ですわ」
額に青筋浮かんでますしこれはダメですね。暴れないと収まりそうにありません。
「はっ、三人がかりで来たらどうだ? 下らん種馬を取り合うメスにこの私が負けるものか」
ブチン……
あー、これダメですね。私のことならまだしも友達(一夏さん)のこと言っちゃいましたか。今までは本人がこの場にいるので我慢できましたけど……
「今なんて言った? あたしには『どうぞ好きなだけ殴ってください』って聞こえたけど?」
「この場にいない人間の侮辱までするとは、同じ欧州連合の候補生として恥ずかしい限りですわ。その軽口、二度と叩けぬように今ここで叩いておきましょう」
「お二人とも、私も加わりますよ。いいですね?」
「「カルラ(さん)?」」
「自分のことはいいんですよ。ですけどね……友達のことを言われるのは我慢ならないんですよ、私は……」
自分でも沸点低いと思ってしまいますけどね。これだけは性分なもので変えられないんですよ!
言うと共に左手に『オーガスタス』を展開します。
「とっとと来い」
ボーデヴィッヒさんが右手をクイクイと上に向けて挑発すると同時に戦端が開かれた!
後書き
誤字脱字、表現の矛盾、原作流用部分の指摘、感想、評価等などお待ちしてます。
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