イベリス
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第八十二話 合宿を前にしてその十一
「いいことがね」
「多いですか」
「そう思うわ、矛盾してると思うけれど」
「ウエブ漫画はいいことで」
「それが紙の本が少なくなってね」
その様になってというのだ。
「環境にもいいと思うけれど」
「それでも本屋さんが減ることは」
「残念よ、どうもね」
「その二つが矛盾していて」
「わかってるけれどね」
自分でというのだ。
「けれどね」
「両方の気持ちがありますか」
「そうなんですね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「ウエブ漫画を読むのも止めないし」
そうしてというのだ。
「本屋さんに行くこともね」
「止めないですか」
「そうしないわ」
「両方共ですね」
「両方何とかなればいいけれどね」
副部長は今度は溜息混じりに述べた。
「ちゃんとね」
「ウエブ漫画があって」
「本屋さんも減らない」
「そうであって欲しいですね」
「本当にね」
こう咲に言うのだった。
「私も」
「そういうことってあるんですね」
咲はしみじみとして言った。
「世の中って」
「相反する様なものをね」
「両方あって欲しいって」
「そう思うことがね」
「あるんですね」
「ええ、私もね」
副部長はさらに話した。
「それがわかったわ」
「ご自身がそう思われて」
「自分自身がね」
まさにというのだ。
「それでよ」
「気付かれたんですか」
「ええ、相反する」
そうしたというのだ。
「矛盾する考えにね」
「人間って矛盾もするんですね」
「そうよ、単純なものじゃなくて」
「相反する考えもですね」
「持ったりするのよ」
一人の人間が同時にというのだ。
「そうであったりもするのよ」
「そうですか」
「だから咲っちもよ」
「私もですか」
「そうした考えを持っても」
二つのことが相反する、矛盾した考えを持ってもというのだ。
「それでもね」
「おかしくないですか」
「人間はそうしたものだって」
その様にというのだ。
「受け入れることよ」
「そうなんですね」
「そうしたものでもあるってね」
人間はというのだ。
「覚えておいてね」
「はい」
咲は副部長に頷いて応えた。
「そうします」
「そういうことでね、じゃあ合宿になったら」
「その時はですね」
「同人誌とサイト頑張りましょう」
「まずはですね」
「その二つを終わらせましょう」
副部長はこちらのことは矛盾なく答えた、そのうえで咲に合宿のことをどういったスケジュールで行われるかも含めて詳しく話しもしたのだった。
第八十二話 完
2022・10・9
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