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第五十五話 本当の勇気その一

                第五十五話  本当の勇気
 達川の話をここまで聞いてだ、一華は心から思った。
「勇気あるって危険なことでもね」
「やるってことかってだよね」
「子供の頃は思ってたわ」
 達川にビールを飲みつつ話した。
「高いところから飛び降りたり」
「逆に高い木に登ったりね」
「蛇に向かったりとか」
「そんなのがだよね」
「ええ、勇気だってね」
 その様にというのだ。
「思ってたわ」
「俺もだよ、けれどね」
「そういうのはね」
「勇気じゃないんだよね」
「ただの度胸よね」
「度胸と勇気はね」
 この二つはというのだ。
「またね」
「違うのよね」
「そうだよね」
「例えば悪いことしてね」
 誰もしないことをというのだ。
「それでね」
「勇気あるか」
「そうじゃないのよね、何か昔薩摩藩だと」
 江戸時代のこの藩ではというのだ。
「今弾が出る鉄砲の前に出て」
「ああ、それ順番でやっていって」
「下手したらね」
 弾が出る時になればだ。
「死ぬよ」
「弾が当たってね」
「そうした度胸試ししてたんだよね」
「あそこはね」
「薩摩藩っていうとね」
 この藩はというと。
「そうしたことばかりして」
「武芸もね」
「もう戦闘民族みたいな」
「そんな人達だったのよね」
「だから幕末も」
 この時もというのだ。
「死ぬことが怖くない」
「そんな人達多かったわね」
「西郷さんや大久保さんも」
 この彼等もというのだ。
「戦わなかったけれど」
「死ぬのは怖くなかったみたいね」
「どうもね」
 彼等はというのだ。
「あの人達は」
「薩摩藩ってそうだったのよね」
「もうチェストーーーーって叫んで」
「示現流で切りかかるのよね」
「それか直新陰流でね」
「あれでしょ、八条家の執事さんの」
 直新陰流と聞いてだ、一華はすぐに言った。
「第二次世界大戦に参加していたっていう」
「物凄くシャキッとしたお爺さんだよね」
「もう九十過ぎらしいけれど」
「その日と今でもお元気らしいけれど」
「あの人がその流派の免許皆伝なんだ」
 このことを話すのだった。
「もう滅茶苦茶強いらしいよ」
「勝海舟さんもそうよね」
「そうそう、何でもね」
 達川はさらに話した。 
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