ハッピークローバー
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第五十四話 夏祭りその九
「何かあるとね」
「三ちゃんが何だ」
「三ちゃん?」
「ほら、苗字が三浦だから」
達川は成海のそちらのことを話した。
「だからね」
「それで三ちゃんね」
「最近俺達そう呼んでるんだ」
「そうなのね」
「それであいつもまんざらでないし」
その仇名で呼ばれることはというのだ。
「背番号三みたいでいいってね」
「阪神の背番号三ね」
「そうそう」
「私だったら二十二ね」
一華は数字についてはこう言った。
「それがいいわ」
「田淵さんと藤川さん?」
「ええ、二十二最高でしょ」
達川にビールを飲みながら話した。
「何と言っても」
「どっちも阪神の看板選手だったしね」
「十六も好きだけれどね」
「三宅さんに岡田さんだね」
「こっちもね」
「俺だとピッチャーだし」
達川は野球部での自分のポジションから話した。
「二十八かな」
「江夏さんね」
「十一は別格でね」
村山実である、ザトペック投法と呼ばれる全力投球で阪神を支えた大エースの中の大エースである。
「あの人は立派過ぎるよ」
「村山さんは英雄と言っていいしね」
「だから十一はね」
この数字はというのだ。
「俺としてはね」
「別格ね」
「やっぱりね」
そうだというのだ。
「本当に」
「それは当然ね」
一華にしてもだった。
「あと十もね」
「藤村さんだね」
初代ミスタータイガース藤村冨美夫である、戦前から阪神で活躍した坂口安吾も褒め称えた偉大な選手である。
「あの人も凄かったっていうね」
「それに二十三も」
「吉田さんも」
吉田義男、牛若丸と呼ばれた。小柄ながら俊敏な守備と巧みなバットコントロールと走塁で知られた名選手だ。
「いいわね」
「そうなんだ」
「それで成海っちは三ちゃんなの」
「仇名はね」
「私達はずっとね」
「成海っちだったんだ」
「子供の頃からだね」
まさにその頃からというのだ。
「そう呼んでるのよ」
「そうだったんだ」
「ええ」
実際にというのだ。
「だから今もね」
「そう呼んでるんだ」
「多分これからもね」
「まあ仇名はそれぞれで」
使う者のというのだ。
「悪いものでないならね」
「いいわよね」
「馬鹿にしたものでないなら」
それならというのだ。
「いいんじゃないかな」
「そうよね、そういえば私達って」
一華は仇名の話で気付いて言った。
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