ハッピークローバー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五十四話 夏祭りその五
「だから私もね」
「ティーバック持ってないわよね」
「実はお母さんもだけれどね」
それでもというのだ。
「それでもティーバックだとね」
「ライン見えないから」
「いいって言われたわ」
「そうなのね」
「お母さんが言うにはラインが見えそうなら」
そうした服を着るならというのだ。
「ティーバックもね」
「いいのね」
「褌と一緒でね」
「ここでまた褌ね」
「そうね、それじゃあ今からね」
「うん、行こうね」
「お財布持った?」
「持ってるわ」
かな恵ににこりとして答えた。
「ちゃんとね」
「それじゃあね」
「ええ、今からね」
「行こう、富美子ちゃん達とも合流してね」
「夏祭り楽しもうね」
笑顔で話してだった。
二人で外に出た、そして団地の公園夏祭りが行われるそこに行くと入り口に富美子と留奈、理虹がいた。
富美子は赤で向日葵柄、留奈は黄色で西瓜、理虹はオレンジで波の柄だった。それぞれの浴衣だった。
だが富美子は一華の足を見て言った。
「あんた下駄なの」
「いいかなって思ってね、お母さんにも言われたし」
「そうなのね、そう来たのね」
一華の返事を聞いて言った。
「成程ね」
「駄目かしら」
「いや、ゲゲゲの思い出したから」
「ああ、あの主人公ね」
「それだけよ」
「いや、これ普通の下駄だから」
足を少し上げてその下駄を富美子に見せて話した。
「本当にね」
「リモコンじゃなくて」
「ごく普通のね」
「下駄って何か贅沢な感じしない?」
留奈は少し考えてこう言った。
「どうも」
「いや、普通にあるでしょ」
一華は留奈に即座に返した。
「下駄は」
「いや、何かね」
「何か?」
「お殿様が遊郭行くのに名木で作らせた」
「それ歌舞伎でしょ」
一華はそれはと返した。
「先代萩じゃない」
「そうだった?」
「伽羅と書いて『めいぼく』って読ませるね」
「あれだったの」
「あれ実際のお話元にしてるけれど」
仙台藩の伊達騒動をだ、『仙台』と『先代』もかけているのだ。
「歌舞伎で」
「そっちのお話で」
「普通高い木で下駄なんてね」
それはというのだ。
「しないでしょ」
「履いてるとすり減るしね」
「歯がね」
「どうしてもそうなるわね」
「そりゃ下駄も色々だけれど」
値段もというのだ。
「けれどね」
「あんたの下駄は普通なの」
「そうよ」
こう言うのだった。
ページ上へ戻る