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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第60話:実は最強コンビ?


ステルスを使い姿を消した俺は,時折サーチャーを設置しながら,
訓練スペースを南西の角に向かって走った。
ちょうど,訓練スペースの中央付近まで来たところで,
上空にフリードの姿が見えた。
俺は,近くの建物の影に隠れると,レーベンにタクティカルディスプレイを
表示させる。が,ここまでに設置したサーチャーにはフリードとキャロ以外の
反応は見当たらなかった。

(まだここまで到達してないんだな・・・行くか)

俺は建物の陰から出て,移動を再開しようとした。
その時,目の前に炎の壁が迫って来た。

(やべっ!)

俺は咄嗟にそばの建物の中に飛び込んで,炎をやり過ごした。
タクティカルディスプレイを見ると,俺の隠れている建物に向かって一人が
近づいてきていた。
窓から上空を見ると,俺のいる周辺にフリードが炎を吐いて回っていた。
その様子を見た俺は,小さく舌打ちする。

(絨毯爆撃かよ・・・)

[《マスター,敵接近です》]

どうしたものか思案していた俺は,レーベンの声で意識を現実に戻す。

[誰かわかるか?]

[《魔力反応を見る限りはエリオさんですね》]

(エリオか・・・ティアナをあぶり出せてないけど,やってみますか)
 
「なのは」

『うん?』

「俺の位置は把握できてるか?」

『レーベンからデータは来てるから大丈夫だよ』

「了解。俺が合図したら砲撃よろしく」

『了解』

なのはとの通信を終えた俺は,隠れている建物の入り口に設置型のバインドを
仕掛けると,2階に上がり入り口の真上に立った。
そして,右手を下に向け目を閉じる。

[《マスター,バインド作動しました》]

レーベンの声を聞いた瞬間,俺は目を見開いた。

「パンツァーシュレック!」

建物の床に向かって放たれた砲撃は,床を突き破り真下にいたエリオを
直撃する。

[《エリオさん被弾です》]

[了解]

俺はレーベンの言葉に返事を返しながら,屋上に向かって階段を
駆け上がって行く。

屋上へ通じるドアの前に立つと,俺はなのはに呼びかけた。

「なのは,俺が合図したらキャロを砲撃。防御は抜けなくていい」

『了解』

なのはからの返答を聞きながら,俺はディスプレイを見た。
キャロを乗せたフリードが俺のいる建物に向かってくる。

「なのは!」

俺はなのはに向かって叫ぶと,3つ数えてからドアを開けた。
目の前でフリードに乗ったキャロがなのはの砲撃をシールドで防御していた。
俺は,ステルスを解除するとキャロに向かって真っすぐに飛ぶ。
それに気づいたのかキャロが俺の方を見た。

「え!?」

「悪いな,キャロ」

俺は直前で目のあったキャロに向かってそう言うと,
レーベンを振りかぶり,キャロの胴を薙ぎ払ってそのまま突きぬけた。

通りを挟んで反対側の建物に着地した俺は,キャロが被弾したことを
確認すると屋上から屋上へと飛び移り,南西方向に移動していった。

南西の角が近くなってきたところで,俺は一旦足を止めて後を振り返った。
すると,2つ手前の建物の屋上にスバルの姿が見えた。

(ティアナはまだ出てこないか・・・しっかり隠れてやがるな・・・)

その時,俺の近くの床が轟音を立てて崩れ落ちた。

(なっ!?)

予測していなかった出来事に,俺は一瞬呆ける。
落下を始めた俺は視界の隅で瓦礫の向こうに見え隠れする紫色の影を見た。

(ギンガか!)

俺は影の方を向くと,レーベンを構える。
次の瞬間,甲高い音をたてて,レーベンとギンガのブリッツキャリバーが
ぶつかり合う。
下から突き上げられる形になった俺は,その反動を利用して屋上へと
飛び上がった。
後ろ向きに一回転して着地しようとしていたところ,
ちょうど頭が真下を向いたところで,スバルが向かってくるのが目に入った。

「もらったああああ!」

そう叫びながら俺に殴りかかってくる。
マッハキャリバーの打撃をレーベンで受けると,反動で飛ばされる。
俺は,隣の建物の側面に足を着けると,そのまま壁を蹴り俺がさっきまでいた
建物の屋上に立つスバルに向かって飛んだ。

「へ!?」

俺はそのままスバルの懐に潜り込むと,スバルの腹に右手を向けた。

「スバル。砲撃にはこんな使い方もあるって覚えときな」

スバルに向かってそう言うと,右手から威力を加減した砲撃を放つ。
直撃を食らったスバルは少し飛ばされて建物の屋上に倒れこんだ。
その様子を見た俺は,小さく息を吐いた。

(さて,あとはティアナとギンガだけど・・・)

周囲を見ても,ティアナやギンガの姿は見えない。

「なのは,エリアサーチは?」

『終わったよ。データ送ろうか?』

「頼む」

俺がそう言うと,レイジングハートからデータが送られてきた。
ディスプレイを見ると,訓練スペースの中に4つの点が見えた。

「一旦合流しよう。俺のところまで来てくれ」

『了解』



しばらくして,なのはが飛んできた。

「どうするの?」

「2人が同じ建物に隠れてるから,なのはは砲撃で建物を破壊。
 出てきたところを俺がしとめる。ってのはどうだ?」

「いいんじゃない?私は賛成だよ」

「じゃあ決まりだな。さっそくやるか」

「うん」

なのははそう言うと,レイジングハートを構え,ティアナとギンガの反応が
あった建物に砲撃を打ち込む。
砲撃の直撃を受けた建物はあっという間に崩壊し,瓦礫と砂埃だけが残された。
俺は,立っていた建物の屋上から飛び降りると,砂埃に近づく。
俺が地面に転がる瓦礫を蹴飛ばして音を立てた瞬間,砂埃の中から,
ギンガが飛び出してきた。
ブリッツキャリバーが俺の鼻先にまで迫ったとき,俺は後に倒れこんだ。
目標を失ったギンガはそのままの勢いで進んでいく。
俺がギンガの片足をつかむと,ギンガはつんのめるようにして
盛大に地面に倒れこんだ。

「いたた・・・」

頭を振りながら身を起こすギンガの鼻先に,俺はレーベンを突きつけた。

「ギンガは撃墜。いいな」

「・・・はい」

その時,横からティアナの声が聞こえた。

「ここまでです!ゲオルグさん」

ダガーモードのクロスミラージュを構えたティアナが俺に向かって
突っ込んでくる。それを見た俺は,ニヤリと笑った。

「まだまだだね。ティアナ」

俺がそう言った次の瞬間,なのはの放った砲撃が俺の背後を
通過していった。同時に目の前のティアナは掻き消える。
なのはの砲撃が通過していった先にはティアナが倒れていた。

「よし,模擬戦終了だな」



「今日の模擬戦は結構ハードだったよね?」

訓練スペースを出たなのはは,開口一番にフォワード4人に対してそう言った。
4人はそれに対して力なく頷く。

「みんな,怪我はきちんとシャマル先生に見てもらってね。じゃあ解散」

「「「「はい!」」」」

俺となのはとギンガの3人は隊舎に向かって歩く4人を見送った。

「どうギンガ?」

「いつもこんなキツイことやってるんですか?」

「うーん。いつもはここまでハードじゃないかな。今日は特別だよ,
 ゲオルグくんもいつもより張り切ってたしね」

なのははそう言って俺を見た。

「別に張り切ってはいないけど,いつもより気合を入れてやったよ。
 ギンガもいたしね」

「別にそこまで気合を入れていただかなくてもよかったんですけどね・・・」

俺の言葉にギンガは苦笑していた。

「それより,スバルはどう?」

なのはがそう聞くと,ギンガは笑顔になった。

「強くなりましたね。単純に能力と技術が向上してるのもありますけど,
 結構複雑なコンビネーションもこなせるようになりましたし」

「よかった。ここまで鍛えてきた甲斐があったよ。ね,ゲオルグくん」

「ん?まあ,そうだね」

俺がそう言うと,なのはは怪訝そうな顔をしていた。

「じゃあ私は戻りますけど,お2人はどうされます?」

「あ,私もいっしょに戻るよ。ゲオルグくんは?」

「俺も一緒に行くよ」

そして俺となのはとギンガの3人は並んで隊舎へと戻った。

 
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