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機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
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第55話:会議だよ!全員集合!!


8月の終わりごろになって,はやてに会議をするから来いと呼び出された。

「これはまた,錚々たる面々が揃ったもんだな・・・」

はやてに指定された会議室に入った俺は,そこに集まった人たちの顔を見て,
感嘆の声を上げずにはいられなかった。

聖王教会の騎士カリムとシスターシャッハ,本局の提督であるクロノさん,
機動6課の部隊長であるはやてと執務官のフェイト。

まさにオールスターと言っていいメンバーがそろっていた。

「ゲオルグくん。まだ全員揃ってへんから適当に座って待っとって」」

俺が空いていたはやての隣の席に座ると,会議室のドアが開いた。

「おや,もう皆さんお揃いのようだね。お待たせしたかな?」

そう言いながら緑色の髪をした優男風の人が入って来て,迷うことなく
カリムさんの隣に座った。

「やあ,シャッハ。お久しぶりだね」

「まったく。あなたはまだ遅刻癖が治っていないのですね,ロッサ」

その様子を見て俺ははやてに小声で聞いた。

「なあ,あの人誰?」

「ああ,あれは・・・」

「僕はヴェロッサ・アコース。本局の査察官だよ。シュミット3等陸佐」

「査察官・・・ですか?」

査察官と聞いて俺は少し身構えていた。

「そんなに警戒しなくても君のことを査察するつもりはないよ。今日はね」

俺はその言葉を聞いて,極力この人とは係り合いになりたくないと思った。

さらに,会議室の扉が開いて壮年の男性が現れた。

「八神すまん。道が混んでたんで・・・。失礼,遅れて申し訳ない」

「ナカジマ3佐まで?」

俺はナカジマ3佐と直接の面識はないが,スバルの身上調査の時点で
顔だけは知っていた。あくまで書類上の話だが。

「なあ,まだ揃ってないのか?」

「あと一人や」

俺の質問に対して,はやてがそう言ったとき,会議室の扉が開いた。

「あ,皆さんお待たせしてすいません」

「ユーノ!?お前もか!」

「やあ,ゲオルグ。僕もはやてに呼ばれてね」

ユーノはそう言いながら俺の隣に座った。

「それでは,メンバーが全員揃ったところで始めましょうか。
 皆さん今日はお忙しいところ,このようなところに集まってもらって
 申し訳ありません。本来なら,通信を利用して済ませたいところなんですが,
 極度にデリケートな情報を取り扱うために,態々集まっていただきました。
 早速,会議を始めたいところなんですけど,お互い知らんもん同士もおるかと
 思いますんで,まずは自己紹介から行きましょか。
 ほんなら先ずはうちの人間から。ゲオルグくん」
 
はやてにそう言われて,俺は立ち上がった。

「本局遺失物管理部機動6課副部隊長のゲオルグ・シュミット3等陸佐です」

「同じく,捜査主任のフェイト・T・ハラオウン執務官です」

「本局次元航行艦隊所属 クロノ・ハラオウンです」

「聖王教会のカリム・グラシアです」

「この2人は我々機動6課の後見人を務めていただいている方です」

はやてがそう言って,補足をいれていく。

「聖王教会のシャッハ・ヌエラです。主に騎士カリムの護衛を務めております」

「本局査察部のヴェロッサ・アコース査察官です」

「地上本部陸士108部隊の部隊長 ゲンヤ・ナカジマ3等陸佐だ」

「ユーノ・スクライアです。無限書庫の司書長をしています」

ユーノを最後に,全員の自己紹介が終わった。

「ほんなら,自己紹介もつつがなく終わったところで,本題に入りましょか」

はやてはそう言うと,一度咳払いをした。

「今日の集まっていただいたのは,我々機動6課で追っている事件について,
 今までのところでわかっていることを皆さんにご説明したいためです。
 ただ,残念ながら機動6課のマンパワーだけで処理しきれる大きさの問題では
 無くなってしまったために,私の個人的なつながりで申し訳ないんですけど
 組織の枠を超えて,皆さんに協力をお願いしたいんです」

はやては一旦そこで言葉を切ると,室内を見まわした。

「では,我々機動6課が現在追っている事件についてご説明したいと思います。
 ほんなら,フェイトちゃん」
 
はやてがそう言うと,フェイトははやてに向かって小さく頷き,立ち上がった。

「私たちは機動6課設立のはるか前,新暦71年ごろからあるロストロギアを
 追ってきました」
 
フェイトはそう言うとスクリーンを操作し,レリックの画像が表示される。

「指定ロストロギアであるレリック。膨大なエネルギーをもつこの
 ロストロギアを狙って,ある魔導機械が出現します」

スクリーンにガジェットの画像が映し出された。

「我々がガジェットと呼んでいるものです。
 昨今,このミッドでも度々出現していることは皆さんもご存じかと思います」
 
フェイトがそう言うと,部屋の中の全員が頷いた。

「機動6課での情報収集により,このガジェットを出現させレリックの奪取を
 目論む主犯と思われる人物が浮かび上がりました」

そこで,スクリーンにスカリエッティの顔写真が映し出された。

「ジェイル・スカリエッティ。重犯罪者として指名手配されている人物です」

そこまで言ってフェイトが座ると,はやてが先を続ける。

「とまあ,ここまでのことはこの部屋にいる人らならだいたい知ってますよね。
 そやけど,機動6課の真の設立目的は別のところにあるんです。
 ほんなら次はカリムがええかな」
 
「そうね。私からお話ししましょう」

カリムさんは一旦目を閉じると,大きく息を吐いた。

「機動6課の設立目的は私の希少技能と大きくかかわりがあります。
 私の希少技能は数年先に起こり得る事象を古代ベルカの詩文形式で
 予言として書き出すものです。そして,ここ数年の予言の内容は,
  ”古い結晶と無限の欲望が集い交わる地,死せる王の下,
  聖地よりかの翼が蘇る
  死者達が踊り,なかつ大地の法の塔はむなしく焼け落ち,
  それを先駆けに数多の海を守る法の船もくだけ落ちる”
 というものでした」
 
カリムさんがそう言うと,何名かが首を傾げていた。

「この予言については過去様々な解釈が為されましたが,
 現在の解釈は,何らかの形で地上本部が襲撃され,
 それをきっかけに管理局による次元世界の管理システムが崩壊する。
 という解釈で私や八神2佐をはじめとする関係者の間での
 意見は一致しています。
 つまり,機動6課はこの予言が現実のものとなることを阻止するために
 設立されたのです」

カリムさんが話を終えると,ナカジマ3佐とユーノの顔は蒼白になっていた。

「八神。質問してもいいか」

「どうぞ,ナカジマ3佐」

はやてがそう言うと,ナカジマ3佐は低い声で話し始めた。

「防ぐといっても具体的に誰が,いつ,何をしようとしているのかが解らん
 ことには,対応策を考えようもないだろう」

ナカジマ3佐の言葉に,はやては大きく頷いた。

「確かにナカジマ3佐の言われることはもっともなんです。
 ただ,予言からは先ほどの解釈以上のことは知りようがないので,
 機動6課の設立以降,私たちも独自の調査を行ってきました。
 その話をこれからしようと思うんですけど,よろしいですか?」

はやてがそう尋ねると,ナカジマ3佐は納得したように頷いた。
それを見て,はやては俺に視線を送って来た。
俺ははやてに向かって頷くと,一度会議室の中を見まわした。

「我々機動6課では,予言の実現阻止に向けて対策を練るべく,
 情報収集に努めてきましたが,具体的に誰が何を為そうとしているのかは
 当初まったく掴めていませんでした。
 しかし,そこに座っているスクライア司書長が探し当ててくれた一枚の
 メモから,急速に情報収集は進展したのです」

俺はそういうと,これまでの諜報活動のきっかけとなったメモの画像を
スクリーンに映し出した。
それを初めて見た人たちは,首を傾げていた。

「このメモは最高評議会事務室の業務記録の一部です」

俺がそう言うと,シャッハさんとナカジマ3佐の目が見開かれた。

「さらに重要なのは新暦67年6月23日という日付でした。
 ナカジマ3佐。この日付に覚えはありませんか?」

俺がそう尋ねると,ナカジマ3佐は腕組みをして考え始めた。

「67年っていうと,今から8年前だろ・・・まさか!」

「心当たりがおありのようですね?」

俺がそう聞くと,ナカジマ3佐は絞り出すような低い声を出した。

「・・・首都防衛隊ゼスト隊の全滅事件があった日だな」

「御明察です。よく記憶されてましたね。さすがです」

「そんなんじゃねえ。俺の女房もゼスト隊の一員だった。それだけだ」

「存じております」

「そうか・・・」

ナカジマ3佐は小さな声でそう言って,俯いた。

「話を続けます。この時,ゼスト隊が急襲したのが当時のスカリエッティの
 アジト兼秘密研究施設だったことが複数のソースから確認できました。
 すなわち,このメモと騎士カリムの予言にある”無限の欲望”とは,
 ジェイル・スカリエッティを指すものと我々は判断しました。
 さらに,このメモからスカリエッティと管理局の中枢たる最高評議会が
 ただならぬ関係にあると考えられたのです」

俺がそこで一旦言葉を切ると,会議室の何か所からか息をのむ音が聞こえた。

「そこで,我々は最高評議会に対する諜報活動の実施を決定しました」

俺がそう言うと,会議室は静寂に包まれた。

 
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