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イベリス

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第八十一話 教師の質その八

「通勤も楽だしな」
「すぐ隣だしね」
「悪くないな」
「そうよね」
「行ってみるとな」
「じゃあこれからも」
「ああ、埼玉で働いてもな」
 娘に笑顔で話した。
「楽しいな」
「それは何よりね」
「考えてみれば元は同じだった」 
 ここで父はこうも言った。
「東京と埼玉は」
「ああ、武蔵ね」
 同じと言われてだ、咲も頷いた。
「江戸時代までの」
「あの頃までは同じだっただろ」
「今で言う東京と埼玉で武蔵ね」
「そうなるからな」
 だからだというのだ。
「同じだしな」
「そんな邪険にすることないわね」
「それこそそこら辺の草でも食わせとけとかな」
「そんなこと言う必要ないわね」
「ああ、ない」 
 実際にというのだ。
「これはな」
「そうよね」
「偏見だったな」
 父は自分から反省して述べた。
「埼玉については」
「そんな悪いところじゃないわね」
「ああ、別にな」 
 こう述べた。
「本当にな、東京からそのままな」
「地続きだしね」
「東京から違和感なくな」
 そのままというのだ。
「入られるな」
「そうなのね」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。
「悪くないところだ」
「じゃあこれからも頑張ってね」
 咲は笑顔で話す父に自分も笑顔で話した。
「そうしてね」
「働いていくな」
「ええ、それで私もね」
 咲は自分もとここで言った。
「埼玉にもね」
「行くか」
「今は東京のあちこち巡ってるけれど」
 山手線や地下鉄のこれはと思った駅を降りてだ。
「そうしてるけれどね」
「埼玉にもか」
「神奈川とか千葉もね」
「色々観て回ると見聞も広がるしな」
「いいのね」
「ああ、東京なんて狭いがな」
 このことは事実だ、地図で見ればその面積は日本の中でほんの些細なものだ、北海道や長野県とは比べものにもならない。
「人が多いだけにな」
「色々な場所があるわね」
「そこを巡るだけでな」
「物凄い勉強になるわね」
「人生のな」
 まさにというのだ。 
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