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ハッピークローバー

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第四十九話 ラフな格好をその十三

「絶対にね」
「そうされますか」
「結婚して子供が出来たら」
 その時はというのだ。
「その時はね」
「親としてですか」
「育てないとね」
「誰もが親になる可能性がありますか」
「当然でしょ」
 それこそという返事だった。
「私達だってよ」
「親がいるからですね」
「こうしているし」
「それならですね」
「人間が続いている理由は」
「沢山の人が親になっているからですね」 
 かな恵もそれはわかることだった。
「何と言っても」
「そうでしょ、だから私達もよ」
「親になりますね」
「そうなれるわ、ちなみにね」
 先輩はここでこっそりと囁いた。
「カトリックの聖職者の人今は公に結婚出来て」
「お子さんもですね」
「いるけれど」
「昔はですね」
「何でバチカン市国の中に子供がいたか」
「それあれですよね」
 かな恵も小声になった、話題が話題だけにだ。
「実は、ですよね」
「結婚していてね」
「お子さんいる司教さんとかおられて」
「プロテスタントじゃ結婚出来る宗派多いけれど」
 そもそもプロテスタントの創始者と言えるルターが結婚している、そして子煩悩な父親であったという。
「カトリックはね」
「ずっと駄目でしたね」
「そうだったけれど」
「こっそりとですね」
「結婚していたから」
 そうだったというのだ。
「日本でもそうだったらしいけれど」
「江戸時代まではそうでしたね」
「浄土真宗は最初からだったらしいけれど」
「はい、他の宗派はです」
 かな恵も答えた。
「公にはです」
「結婚出来なかったわね」
「それで同性愛にってなりましたし」
 仏教の僧侶達はそちらが普通であったのだ。
「日本では。ですが」
「お子さんいた人もいたわね」
「幡随院長兵衛さんなんかそうですね」
 江戸時代前期の有名な侠客である彼はというのだ。
「お寺に怪我をして逃れて匿われて」
「そこからお寺のお坊さんに人の道を説かれて」
「ああなったっていうのが通説ですが」
 俗にはそう言われている。
「実際はお寺の住職さんが」
「父親っていうわね」
「そうも言われてますね」
「それと同じでね」
「カトリックでもですね」
「実はそうだったから」
 聖職者でも結婚して子供がいたりしたというのだ。
「そうしたこともあるから」
「親はですね」
「誰でもなるのよ」
「表向きは禁止されていても」
「そうよ、私達もね」
「そうなる可能性がありますね」
「しかもそれは高いから」
 親になる可能性はというのだ。
「覚えておいてね」
「はい、今日のことは」
 冷麺の麺を茹でつつ答えた、そして出来上がってだった。
 かな恵は先輩と共に冷麺を食べた、それは何時にも増して美味く感じた。今日話したことも含まれている気がして。


第四十九話   完


                     2022・8・8 
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