IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐
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料理は戦争
「では午前の実習はここまでだ。午後は今日使ったISの整備を行うので、各人格納庫で班別に集合すること。専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。では解散だ」
時間ギリギリとはいえ、なんとか全員が起動テストを終えた私たち一組二組合同班は、格納庫にISを移してから再びグラウンドへ。
特に私の班はのほほんさんが通常の3倍かかったのでほぼボーデヴィッヒさんの班とほぼ同じくらいに終わりました。
別にそれでどうとか言うのはないんですけどね。
そして現在は昼休みのIS学園屋上。
IS学園の屋上は通常の学校と違って開放されています。しかもちゃんと機能的にも見た目的にも考えられており、美しく配置された花壇に季節の花々が咲き誇り、欧州を思わせる石畳が落ち着いています。どこかの庭園を思い浮かばせるほどですね。
そして所々に円卓が置いてあり、天気のいい日は絶好の昼食ポイントなんです。
なんですけど今日は人っ子一人……正確には私たち以外いません。
多分ですけど一夏さんとデュノアさん目当てで食堂へ行っているんでしょうね。今頃は上へ下への大騒ぎで緊急包囲網が敷かれているに違いありません。
この場には今いつもの面子+デュノアさんということで計6人。私以外の女性陣は全員お弁当持参です。
こういう風ならば私もお弁当作ってくれば良かったですかね。
明日辺り久しぶりに作ってみましょうか。正直IS学園だと寮に食堂、学校に学食とあるので作る必要がなくて腕が落ちてしまうんですよね。
ちなみに言い分としては
箒さんの場合
「私の分の余りで作ってやった」
セシリアさんの場合
「たまたま偶然何の因果か今朝早くに目が覚めまして作ってみました」
鈴さんの場合
「前食べたいって言ってたでしょ。だからよ」
こういうときに限って被るのはなんなんでしょうね?
中身は上から順に普通のお弁当、BLTサンド、そして酢豚。いや、でも鈴さん。酢豚オンリーのお弁当ってなんですかそれ。新手のいじめですか?
そして鈴さんはセシリアさんのお弁当を見て「うわぁ」と声を上げています。感嘆の声ではなくそれは引いている声。
私も知っているので少し冷や汗が出ています。
何故かと言うとセシリアさんのお弁当はもんのすごい不味……ゴホン、個性的な味がするのです。
見た目はいいのですが見た目だけなんです。以前調理場でセシリアさんの料理をしてるところを見たことがあるのですが赤色が足りないからといって七味トウガラシやタバスコを突っ込むの如何なものかと……
その時何を作っていたかは知りませんけど、後日オムライスを進められて食べたら物凄い辛かったので恐らくそれではないかと……流石イギリス人です。
「わあ、皆さん美味しそうですね」
私の隣にいるデュノアさんがそう言います。ちなみに私とデュノアさんは購買のパンです。ここのコロッケパンと焼きそばパンは絶品なんです。
でもメニューにあった焼き鯖パンってなんなんでしょう? 怖くて買ったことがないんですけど美味しいんですかね、あれ。
「あら、よろしければデュノアさんもお一つどうぞ」
ちょ! 考え事してるうちに……
「え、いいの? じゃあ一つだけ……」
『あ……』
「あむ」
止める間もなくデュノアさんの口に吸い込まれていくサンドイッチを見てセシリアさん以外の全員が声を上げました。
そして……
「如何ですか?」
ああ……デュノアさんの顔が見るからに真っ青を超えて真っ白に変わっていきます。
「う……うん、こ、個性的でいいと思うよ……うん……」
「それは褒めていらっしゃるのですか?」
「そうだね……褒めてる……んじゃないかな? 僕も分かんない」
「はあ……ありがとうございます」
流石の貴公子も冷や汗が止まらないようです。デュノアさんの気遣いも限界レベルまで達しているようです
「えと、水いります?」
「あ、ありがとう…………」
私はセシリアさんには見えないように背中からデュノアさんに水の入ったペットボトルを手渡します。
でも人間って怖いものがあるとそれに興味が沸くものなんですよね。というわけで……
「セシリアさん。私も頂いても?」
「カルラさん? ええ、どうぞ」
「ちょ!」
「カルラ本気か!?」
「人間は好奇心に勝てないものなのです!」
鈴さんと一夏さんの制止を振り切りセシリアさんのバスケットからサンドイッチを掴んで……食べます!
「………………」
あ、甘いです……これバニラエッセンスですね……そしてほんのり香る匂いと辛味……黄色ということは辛子と生姜……そしてこれレタスじゃなくてキャベツですし……この……トマトじゃなくてこれ……まさか本国で食べさせられたサボテンの実ですか!? こんなものどこでてにいれたんですか!
「セ、セシリアさん……?」
「はい?」
「これ味見しました?」
「いいえ、しておりませんが?」
「それはいけません。いくら美味しいと言えども味見をしなければ料理は向上しませんよ?」
「まあ、でもこれは……その、ですね」
残りが案外少なくて一夏さんにあげる分が無くなるのを恐れているのかセシリアさんは中々食べようとしません。
「では私のものを……」
「そ、そうですわね。それでしたら」
そう言ってセシリアさんに私は手渡して、それをセシリアさんが口にしました。何度か咀嚼して……
「あら……思ってたのと味が……」
フラッ
『あ』
バターン!
全員の声が重なると同時にセシリアさんが椅子から転げ落ちました!
「セシリア! セシリアーーーーーーーー!」
「ちょっと何よ! どうなってるの!?」
「衛生兵! 衛生へーーーーーーーーーーーーーい!」
「はわわわわわわわわわ」
一夏さん、鈴さん、箒さん、デュノアさんが4者4様でうろたえています。
どうやらセシリアさんの味覚が拒否したようです。
そういえばセシリアさんはイギリスの大企業の令嬢なんでしたね。料理なんて一夏さんに会ってから初めてしたんでしょうし、お抱えの料理人もいるはずですからあの味は衝撃的だったということでしょうか?
ちなみに私も最初のときはあそこまでではありませんがひどい料理を作っていました。当時の友達は私が料理作っていくと逃げられましたからね。
それが悔しくて料理勉強して今では普通なんですけどね。
とか考えていたらセシリアさんの目がいきなり開きました。
何か様子がおかしいですね? 周りをきょろきょろ見渡しています
「あら? 貴方たちはどちら様でしょう?」
『はい?』
「というよりここはどこで私は誰なのでしょう?」
「こ、これはまさか……」
記憶……喪失?
ま、まさか余りの衝撃で?
ということは……これ残りを食べさせると元に戻るのでは?
恐る恐るですが……セシリアさんのバスケットの中のBLT(?)サンドを進めてみましょう。
「と、とりあえずお腹すいていませんか? これ食べます?」
「ちょっとカルラ!?」
「止めろ! 武士の情けだ、止めてやれ!」
「あら、親切なお方ですわね。頂きますわ」
『あ』
パクッ、バターン!
「セシリア! セシリアーーーーーーーー!」
「ちょっとまたなの!?」
「メディック! メディーーーーーーーーーーーーーク!」
「あわわわわわわわわわ」
そしたまた少しすると再びセシリアさんの目が開きました。
「あら? 一夏さんも皆さんもそんな顔をして如何致しましたの?」
「セシリアー!」
「きゃ! いいいいいいいいいい一夏さん? あの、ここんなところで抱きつかれては……」
涙を流しながらセシリアさんを抱きしめる一夏さん。結果オーライということでしょうか。セシリアさんは状況が分からず赤面して慌てているだけですし、まあ元に戻ってこれで一件落着ですね。
「…………………」
「…………………」
そしてそれを見つめる二つの視線。その視線の先には……セシリアさんのBLT(?)サンドが残り二つ……あの、まさかとは思いますけど……
「「セシリア!」」
「はい!?」
「私も貰う(わよ)!」
「ちょ、何言ってるんだお前ら!」
一夏さんが止めようとしましたが箒さんと鈴さんは既にサンドイッチを掴んでいます。
「あ、そ、それは一夏さん用の!」
セシリアさんが言い切る前に……
パクッ
二人がそれを口にして……
バターン!
倒れました。
「バカヤロウ! 無茶しやがって! どうしてこんなことしたんだ!」
「へ? へ? 鈴さんと箒さんはどうしたのですか!?」
どうするんでしょうね。もう復活用のBLT(?)サンドありませんよ? もうどうとでもなってください。
「良かったですね」
「い、いいのかなこれで?」
デュノアさん、それは愚問です。いいんですよこれで!
今日のお昼のパンは塩味が聞いておいしいかったです。
後書き
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