| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

機動6課副部隊長の憂鬱な日々

作者:hyuki
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第47話:急に休暇と言われても・・・ねぇ


「ゲオルグくんとなのはちゃんは明日は休暇な」

フォワード陣の訓練を終えて朝食を食べているときに,
放送で部隊長室に呼び出された俺となのはが部隊長室に入るなり
はやては俺となのはに向かってそう言った。

「「休暇?」」

俺となのはが揃ってそう言うと,はやては少し困ったような顔をしていた。

「そ,休暇」

「何でまた。そもそも忙しくてそんな暇もないし」

俺がそう言ってなのはを見ると,なのはも頷いていた。

「わかってるよ。そやけどしょうがないやんか,本局から注意されてんもん」

はやての話によれば,機動6課設立以来休暇を一回も取っていないのは
なのはだけで,俺は休日出勤を繰り返しているいるため,2人に休暇を
取らせるように本局の人事担当から通達があったらしかった。

「そう言うわけで,2人には休暇を取ってもらわんと,部隊長の私が
 本局からこっぴどく叱られるんで,休暇をとってください」

はやてはそう言うと,俺達に向かって頭を下げた。

「ま,はやてがそこまで言うなら」

「そういう事情ならしょうがないよね」

俺となのはがそう言うと,はやてはにっこりと笑った。

「2人ともありがとう!ほんなら明日はゆっくり休暇を楽しんでな!」

部隊長室を出た俺は,廊下をなのはと並んで歩きながら考え込んでいた。

「ねえ。ゲオルグくんは明日どうするの?」

「うーん。それを今考えてたんだけど,突然だからな。
 まあ,自宅の掃除とか整理でもしてから少し実家に寄ろうかと思ってるけど」

「そっか。ゲオルグくんの実家ってクラナガンの郊外だって言ってたもんね」

「まあね。それよりなのははどうするんだ?」

「そうだね。私も急に休暇って言われてもね。実家に帰るのも大変だし」

「そうか,なのははここの出身じゃないもんな」

「そうなんだよね。ま,ヴィヴィオと遊んで過ごそうかな」

「そっか。ま,お互いめったにない機会だし,せいぜい楽しもうや」

「そうだね」

そう言って俺はなのはと別れて,副部隊長室に戻った。



副部隊長室で1時間ほど仕事をした後,予算関係の会議に出席するために,
副部隊長室を出ようとドアを開けると,目の前になのはが立っていた。
なのはは,ブザーのボタンを押そうと手を伸ばした格好で固まっていた。

「何やってんの?」

「え?あ,うん。ちょっとね・・・」

「俺に用事?」

「えっと・・・うん」

「今から会議なんだけど,歩きながらでもできる話?」

「あ,そうなんだ。じゃあ後でいいや。引きとめちゃってごめんね」

「別にかまわないけど,いいのか?」

「うん。またあとで来るから・・・」

そう言うとなのはは廊下をとぼとぼと歩いて行った。
俺は,普段とは少し違ったなのはの様子に違和感を覚えながらも
会議室に向かうべく,なのはとは逆方向に歩いて行った。



会議が終わって,ルキノと話をしながら副部隊長室に向かって歩いていると,
副部隊長室の前にいるなのはを発見した。
なのはは,ブザーのボタンを押そうとしては止め,また押そうとするという
不可解な行動を繰り返していた。

俺はルキノの手を引き,通路の角に身を隠した。

「副部隊長。なんで隠れるんです?」

ルキノが小声で尋ねてきた。

「え?いや,なんとなく・・・」

「なのはさん,副部隊長に用事があるんじゃないですか?」

「だったら何でスッと押さないんだ?」

俺がそう聞くと,ルキノは腕組みをして少し考え込んでから口を開いた。

「何か秘密の相談でもあるとか・・・」

「そういうのはフェイトにするだろ」

「いやいや,フェイトさんにも話せないこととか・・・」

「例えば?」

「うーん。恋の話とか・・・?」

「何で疑問形なんだよ」

「いや。自分で言っててアレなんですけど,ピンとこないというか・・・」

「2人ともそんなとこで何やっとんの?」

その時,突然背後から声をかけられたルキノは驚いて頭を上げた。
しかし,ルキノの頭の上には俺の顔があった・・・。

「「!!!!」」

鈍い音を立てて,ルキノの頭と俺の顎が衝突し,俺とルキノは声にならない
悲鳴を上げた。

「ホンマに何をアホなことやってんの?」

顎をおさえた俺と頭をおさえたルキノが声のした方を見ると,
呆れたような顔をしたはやてが立っていた。

俺が涙目になりながらはやてに事情を説明すると,
はやてはますます呆れた顔になった。

「アホなことやっとらんと早よ仕事して」

はやては心底呆れたようにそう言うと,部隊長室に向かって歩いて行った。

「副部隊長のせいであたしまで怒られちゃったじゃないですか!」

ルキノはそう言うと,肩を怒らせてオフィススペースの方へ歩いて行った。

「俺が悪いのか?」

《マスターが悪いです》

レーベンにまでそう言われて,俺は少しヘコみながら,相変わらず手を出したり
ひっこめたりしている,なのはに声をかけることにした。

「なのは」

俺が声をかけると,驚いたなのはは勢いでボタンを押していた。
なのはは,それに気がつくと妙にびしっとした姿勢で居住まいを正していた。
だが,いつまでも俺の声が聞こえないことに疑問を持ったのか,
首を傾げると,もう一度ブザーのボタンを押そうとしていた。

「俺はこっちなんですけど」

俺がそう言うと,なのははゆっくりと俺の方を振り返った。

「・・・ゲオルグくん?」

「何やってんの?」

「えーっと・・・にゃはは・・・」

なのははばつが悪そうに笑った。

「とりあえず,部屋に入るか?」

俺がそう聞くと,なのははゆっくりと頷いた。



なのはをソファーに座らせ,紅茶を淹れ,俺はなのはの前に座った。

「で?何か用があったんでしょ?」

「えーっと,うん・・・」

俺が尋ねると,なのはは小さくうなずいた。

「あのね?今までゲオルグくんと私ってあんまり一緒に遊んだことないよね?」

「そうだね」

「で,たまたま明日はお休みが重なったからさ,一緒に出かけたりしたいなって
 思ったんだけど・・・」

「いいよ」

「え?いいの?」

「別にいいよ。特に用事も無いし」

「ほんとにいいの?」

「だからいいって。それより,どっか行きたいとことかある?」

「え?あ,ごめん。考えてなかった」

「なんだよ。まいいや。んじゃ適当に街でもぶらつきますか?」

「うん!」

「じゃあ俺が車出すから,10時くらいでいいか?」

「うん!ありがと。じゃあね」

なのははそう言うと,妙に機嫌よさげに部屋を出て行った。

俺はなのはの後ろ姿を見ながら軽くため息をつくと,
机に戻って仕事を再開した。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧