星河の覇皇
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第八十三部第一章 防衛ライン到達その五
「それを突き止めないとならないですが」
「まだわかっていません」
「何一つとして」
「検証も分析もしていますが」
「正体不明です」
「まるで」
ここでこう言われるのだった。
「亡霊に襲われた様です」
「アラビアンナイトや童話に出て来る様な」
「砂漠に多くいるものですが」
「廃墟等に」
サハラでは亡霊はそうした場所によくいるとされている、これは古いアラビアの詩からくる考えである。
「戦場に出るものか」
「それは異教の話です」
「戦場に出る亡霊なぞ」
「この場合はオムダーマン軍を助けてとなりますが」
「そうした亡霊なぞです」
「イスラムにはありません」
「こうした噂もあるな」
フラームはこうした話もした。
「ワルキューレだの白い神兵だのな」
「エウロパの神でしたね、ワルキューレは」
「嵐の神オーディンに仕えているという」
「愛欲の女神フライヤにも仕えているとか」
「主な名のある者で九柱だとか」
「あの女神達がいると」
「そして日露戦争で出たというな」
次に話されたのはこの戦争についてだった。
「日本軍の危機に常に表れて戦ったという」
「謎の存在ですね」
「まことにいたかどうか不明ですが」
「あの戦争は妙な話が多いです」
「まるで誰かが日本を助けた様な」
「そうした話が」
「イスラムならばアッラーとなる」
その『誰か』はとだ、フラームは話した。
「そして我々ならばな」
「アッラーですか」
「アッラーがオムダーマンを助けている」
「そう言う者が出ていますか」
「愚かな話だ、その様なことがある筈がない」
フラームはこのことについては断言した。
「何があろうともな」
「アッラーは既に全てを定めておられます」
「戦いで誰かを助けるなぞありません」
「異教との戦いならいざ知らず」
「こうした時は」
「アッラーはされない、だから我々を攻撃したのはだ」
その者達はというと。
「間違いなくオムダーマン軍だ」
「あの魚雷はオムダーマン軍のものでした」
「このことはもうわかっています」
「わかっていることはこのことだけですが」
「それでもわかってはいます」
このことは事実だというのだ。
「ですからオムダーマン軍です」
「我々を攻撃したのは」
「彼等以外に有り得ません」
「断じて」
「そうだ、しかしだ」
それでもとだ、フラームはさらに話した。
「どういった兵器での攻撃かまではな」
「一切です」
「本当にわかっていません」
「オムダーマン軍の攻撃は間違いないにしても」
「それでも」
「それがわからない限りはな」
どうしてもというのだ。
「手を打とうにもな」
「打ちようがありません」
「どうしても」
「それが事実です」
「今の我が軍は」
「主席なら」
フラームは苦い顔でまた兄のことを思い言葉に出した。
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