| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

転生したらビーデルの妹だった件

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

番外編 ゼノバース

 
前書き
年末年始の暇つぶしになれば幸いです。 

 
さて力の大会も終わり、部屋でだらだらと過ごしていたはずのわたしは、気が付くと全く知らない場所に転位していた。

辺りを見渡せば小さなドーム状の建物が二つ。今わたしは管理された竹林と草原のような地面を踏みしめて立っている状態。

正面を見ればどこか殴りたくなってくる衝動が抑えきれない紫色の髪を切り揃えた少年の姿が見えた。

「驚いてますよね。説明は後でゆっくりさせていただきます。まず今はあなたの実力を試させてください」

といきなり背中の剣を抜いて襲い掛かってくる少年。

襲い掛かられて無抵抗でいられるほどサイヤ人を止めていない。

「行きますっ!」

剣を振りおろす少年。

「こっちは素手だぞっ!おらぁっ!」

ドンッ

「うわっ!」

「わたしはっ!」

ガシッ

「ぐっ!」

「その顔にっ!」

ドドンッ

「ぐふっ!」

「遠慮はしないと決めているっ!」

モンテの回し蹴りが炸裂する。

いつか未来から来たトランクスをぶん殴った時の様に遠慮しないで蹴り飛ばしたモンテ。

「ぐはっ!」

ガランガシャンッ

吹き飛ばされた少年は2,3回地面を転がって剣を取り落とし横たわる様に気絶した。

「ちょっ!ちょっとストップストーーーーップっ!」

慌てて奥の建物から10歳くらいだろうか、可愛らしい少女が現れた。

薄ピンクの素肌にエルフのような耳。その両耳にポタラを付けている所を見るにどこかの界王神だろうか。

「あーあー、トランクス完全に伸びちゃっているわね。説明はトランクスにさせようと思ってたのに」

モンテがぶっ飛ばした少年はやはりトランクスと言うらしい。

「面倒だけど代わりに私が説明するわね」

彼女の説明を纏めると、この今いる所は時の巣と呼ばれるところでその外延をトキトキ都と呼ばれる施設が覆っているらしい。

彼女は時の界王神さまで時間の流れの管理をしているのだそう。

そしてどう言う訳か過去の改変が行われてしまって大変な事態が起こっているらしい。

本来はこのトキトキ都に居るタイムパトローラーが任務遂行に当たるのだが、事の重大さに今いるタイムパトローラーの手に余りそうだったので彼らのまとめ役であるトランクスがドラゴンボールに願って強い戦士を呼んでもらったと言う事らしい。

それがどういう基準だったのかわたしだったと言う事なのだそうだ。

モンテには過去の世界に飛んでもらい歴史の修正をしてもらいたいとの事。

ふむ、なるほど。

「なので、どうかお願いす…」

「お断りします」

「はやっ!」

速攻で時の界王神さまのお願いを断るモンテなのだが…

「あなたには拒否権はないわ」

「ええ!?」

「トランクスが都合よく気絶しているから説明するわね。歴史の改変が行われた最初の一巻はあなたの事変なのよ」

「はい?」

そう言って取り出されたのはひとつの巻物のようなもの。

「これは終わりと始まりの書と呼ばれる物で過去の出来事が記されているのだけれど、これにはもう改変がなされているの」

「えーっと?」

「この記録はあなたがラディッツと会った時の物。そこであなたはラディッツに殺されているわ」

「な、…なんだってーっ!?」

「あなたの存在はトランクスが使ったドラゴンボールで奇跡的にこの世界に存在しているだけで歴史の中には存在していないのよ」

「じゃ、じゃぁその巻物をさっさと修正してですね…」

時の界王神さまはその巻物を胸元にしまい込んでしまった。ナイチチのくせに…

「残念。この巻物は一番最後に修正しないといけないの。でないとあなたの歴史は存在できなくなってしまう」

「はいぃっ!?」

驚愕の事実に心底驚いてしまうモンテ。

時の界王神さまの説明を聞くに、ラディッツにわたしが殺された後の歴史は本来のドラゴンボールの世界へと進み、結果本来の歴史と融合しかけているらしい。

分離させようにもその歴史も改変されていてその修正をしなければおそらく元に戻らないだろうとの事。

なるほど…わたしは呼ばれるべくして呼ばれたと言う事なのだろう。

「ほら、いい加減起きなさいトランクス」

「うっ…はっ!時の界王神さま」

ゲシっとトランクスを時の界王神さまが蹴り起こした。

「まったくいつまで寝てる気?しょうがないから説明は私がしておいたわ」

「あ、ありがとうございます…その…この方がとても強くてですね…」

「それでもあなたはサイヤ人なの?」

「面目次第もございません…」

時の界王神さまの言葉に肩を落とすトランクス。

「まぁ、そうしょげる必要もないわよ。彼女もサイヤ人らしいもの」

「そうなんですか?」

「サイヤ人の尻尾があるじゃない」

と言うか、わたし尻尾を隠しているつもりも無いのだけれど。

「ああ、そう言えば純粋なサイヤ人は尻尾が有るのでしたね」

失念してましたとトランクス。

「どうりで強いわけです。えっとこの方はいつの時代から?」

「あなたとそう違わないわ。ただ、ちょっと別の歴史からかしらね。まぁ今回の事件には最適な人材である事には変わりは無いわ。私はこのあとトキトキのお世話があるから後の事は頼んだわよトランクス」

「わ、分かりました時の界王神さま」

去っていく時の界王神さまを見送ると刻蔵庫と呼ばれるドームへと案内された。

途中お互いに自己紹介を終える。

そして到着した刻蔵庫でトランクスが取り出したのはやはり終わりと始まりの書と呼ばれる物だ。

「モンテさん、これを見てください」

スルスルと巻物を解いて中を覗き込むとどうやら記された刻を垣間見れるようだ。

その内容は地球に来たラディッツが強化されていて羽交い絞めにした悟空ごとピッコロの魔貫光殺砲で貫かれるはずが悟空の拘束を振りほどき悟空だけが魔貫光殺砲で殺されてしまっていた。その後気功波でピッコロも殺されてしまうと言う盛大なバッドエンドへと改変されていたのだ。

「あなたにはこの歴史の修正をお願いしたいのです。訳あってボクはこの時代には関われません。お願いします、このままでは歴史の流れが狂ってしまう」

まぁ、トランクスが直接この時代に行ってしまうと人造人間編の事も有り歴史に大きな矛盾を孕んでしまうのだろう。

「まぁ歴史を修正しないとわたしも帰れませんしね…不承不承ながら了解しました」

「……?」

気絶していたので時の界王神さまの説明はトランクスは聞いていなかった為にモンテの言葉はトランクス理解できなかったらしい。

ラディッツの手前だ。今回は尻尾は出来るだけ隠した方が良いだろう。あまり好きでは無いが腰に巻いて服で隠してしまおう。

道着は…うーむ…昔ビーデルが着ていたトレーニングウェアで良いか。

ピッと念じると服装が一瞬で変わる。

「うわ、そんな事も出来るんですね」

「まぁ、ね。昔取った杵柄でね」

主にヤードラット星での精神修行の結果だ。

準備も整った所で終わりと始まりの書を手に取る。

「それでは歴史の修正、お願いしますね」

「強すぎるラディッツをボコって悟空さん諸共に魔貫光殺砲で殺されるように調整しろって事ね…難くね?」

「…お願いします」

おいーっ、トランクスっ!難いの分かってんなっお前もっ!

終わりと始まりの書を握りしめると視界が暗転。次の瞬間地球に転位していました。

さて、状況はっと…はい!?

悟空さんとピッコロさんが吹き飛ばされた状況で悟飯くんに向かってラディッツの気功弾が撃ちだされている。

キレた悟飯の頭突き攻撃もきっと今のラディッツなら避けてしまったのだろう。

邪魔と判断した悟飯くんに容赦のない攻撃。これを喰らえばいくらサイヤ人ハーフと言えど死にそうだ。

慌てて悟飯くんの傍に瞬間移動でジャンプ。

間一髪飛んでくる気弾の前に現れると右手を振って気弾を弾き飛ばした。

巻き上がる粉塵。

「きさまっ何者だっ」

ラディッツの誰何する声。

「通りすがりの一般人だっ!」

「一般人がオレの気弾を弾けるはずないだろうっ!」

あー…そうね。

「孫悟空、あいつはお前の知り合いか?」

「いや、…だが悟飯を助けてくれたみたいだな。すまねぇ」

ピッコロさんと悟空さんがよろよろと立ち上がった。まだ心は折れてないようで上々だ。

「わりぃけんど、悟飯を連れて遠くに行ってくれっか」

「あー…はい、分かりました」

悟空さんとピッコロさんが再びラディッツに向かっていく。

わたしは悟飯くんを抱き上げると岩陰に隠れながら状況を見守る。

正直、超サイヤ人になってラディッツを一発ぶん殴ればラディッツを倒す事は造作もない事だ。

だが、それでは歴史の修正は出来ない。

禍々しいオーラを纏った瞬間にヤムチャさんのトレードマークであ繰気弾を使ってチャチャを入れ、どうにか悟空がラディッツを羽交い絞めにした所で気弾を連射。

「バッバカなっ!」

振りほどこうと力を込めたラディッツの体力を削り、ピッコロの魔貫光殺砲をアシスト。

結果、悟空さん諸共に魔貫光殺砲は二人を貫いた。

ラディッツは死の間際に一年後に二人のサイヤ人が現れると負け惜しみのように伝えて倒れた。

「何とかなったか…そう言えば先ほどのアイツは」

見渡したピッコロの視界に入らないように注意しながらわたしは帰還の徒に着いたのだった。

「…ラディッツの死体が消えている?どう言う事だ…」



時の巣に戻るとトランクスが出迎えてくれた。

「ありがとうございます。無事歴史は修正できました…ですが…」

労いの言葉もほどほどにトランクスの視線が下を向く。

「その方は…」

モンテがズルズルと長い黒髪を掴んで引きずっている誰か。

「ラディッツじゃないですかっ!どうして連れて来たんですかっ!」

そう、引きずられているのはダメージは負っているが死んではいないラディッツだった。

死んだと思っていたのだが、モンテが回復術を掛けると息を吹き返したので連れ帰って来たのだ。

「逆に聞こう。兄を助けない妹がいると思うか」

「……はい?」

トランクスが面白い顔をしていた。

「あちゃー…やっぱり連れ帰って来たのね」

何処からか現れた時の界王神さまが呆れた声を出した。

「時の界王神さまっ!良いんですかっ!?」

「良くはないわね。でも歴史上これ以降ラディッツが関わる場面は無い。悟空くんさえ相打ちで死んでくれればラディッツの生死は不明でも問題は無いわ」

うわー…我が兄ながら扱いが酷い…

「はっ!そう言えば兄と言うのは…」

「わたし、バータックとギネの娘だからね。悟空さんとラディッツはわたしの兄よ」

「え、…ええーーーーーっ!?」

「トランクスうるさい」

「あ、すみません時の界王神さま…あまりにも衝撃的な事実だったもので…」

「とは言え、それは別の歴史なのだけれどね」

それよりもと時の界王神さま。

「連れ帰って来たソイツどうするの?」

「今回の件で実感しました。わたしじゃこの後の歴史の修正は難しいと。なのでラディッツに頑張ってもらおうかなと」

「タイムパトローラー候補として連れて来た、と?」

「ちょ、ちょっと待ってください…あなたの実力はボクが一番分かっています。あなたは強い、なのに…」

「トランクス、強いのが問題なのでは無いわ。強すぎるのよ、彼女。その気になれば今のあなたなんて超サイヤ人になっても一撃ね」

「……はい?」

「さすが、破壊…」
     「わーわーわーっ!」

「何よ」

「知っていたのですか?」

こそっと時の界王神さまに耳打ちをするモンテ。

「まぁね」

あ、そう…

「んっん。さて気を取り直して…わたしが行くより鍛えたラディッツが行く方がうまく行く場面もあるでしょう。正直手加減とか…あんまり上手じゃないんですよね、わたし。超サイヤ人だ2だ3だとかで騒げる時代はとうの昔に過ぎ去ってますし…ね」

「あなたの経験した歴史はどうなっているんですか…」

と若干トランクスが引いていた。

ゴッドとかブルーとか身勝手の極意のある歴史デスが何か?

まぁ、人造人間すらどうにもできなかったトランクスの世界のパワーバランスなど大きく超越している事は確かだね。

「それで、ラディッツを説得するの?暴れたりしたら大丈夫なの?」

「戦闘力1500程度のラディッツに負けると思いますか?ナメック星編のクリリンの方が何倍も強いわっ!」

それに、と一拍置いて続ける。

「昔から妹に勝てる兄など存在しない」

さて、起こしますかね。

傷は既に塞いであるし体力も戻っているはず。

ゲシっと足で気付けをするとウッと唸ってラディッツは意識を取り戻した。

「こ、ここは…オレは生きているのか?…お前はっ!」

どうやら魔貫光殺砲で致命傷を受けた事は覚えているようで、ついでにモンテの顔も覚えているようだ。

「ここは時の巣。あなたを助けたのはわたし。だからお兄ちゃんはわたしには逆らわない事、いい?」

「ちょ、ちょっとモンテさん」

「トランクス、こう言う事は最初が肝心なのよ」

「け、知った事か。ぶっ殺されたくなければその生意気な口を閉じな」

死にそうだった割には好戦的な態度を崩さないラディッツ。

「同じ言葉を返してあげよう。ぶっ殺されたくなければ黙って従え」

モンテの腰からスルリと尻尾が現れる。

「な、お前サイヤ人かっ!?」

驚くラディッツ。

「それが拳を収める理由になるの?」

「なる訳が無いなっ」

地面を蹴ってラディッツが迫る。

「ちょっと、あんまり派手に壊さないでよねっ!」

時の界王神さまが何か言っているが、とりあえずラディッツだ。

死の淵からよみがえったラディッツは確かに戦闘力を増したようで先ほどとは別人のようだったが…

「がっ!」

モンテのグーパンがラディッツの顔面を捉えた。

「聞いてっ」

「ぐっ」

「無かったっ」

「がっ」

「ようだからっ」

「あべしっ」

「もう一度言うけれどっ!」

「ぐっふぅ…」

「妹に勝てる兄など存在しないわっ」

モンテの容赦のない攻撃に吹き飛ぶラディッツ。

「…それって妹のおねだりに勝てる兄がいないって事…ですよね?けして力で敵わないと言う事じゃないと思いますけど」

容赦のないモンテの攻撃、先ほど自分もあれで沈められたのかとトランクスが茫然としてツッこんでいた。

「うっ…ぐぐぐ…くそぉ…なぜ勝てない…妹に兄が負けるなどど……………いもうと…?」

あ、ようやく気が付いたのか。

「まて、妹だと…弟ならともかくオレには妹などは居ないはずだ」

膝立ちで起き上がるとこちらを見つめるラディッツ。

「残念、わたしは正真正銘バータックとギネの娘よ。つまりカカロットとラディッツの妹と言う訳」

「なん…だと…妹にまで負けたのか…オレは…」

あ、脱力して腕で体重を支えている。おーてぃーえる、いただきました。心のメモリーに永久保存しておこう。いや、確かスマホがどこかに…

カシャリと写真を撮っているとどうやらラディッツは正気に戻ったようだ。

「なぜオレを助けた。血縁の情などサイヤ人には無いからな」

使えなければ身内でも殺す。それがサイヤ人だ。

「別に…本来の歴史で死んでいるあなたをどうしようがわたしの勝手よ」

「死んでるだと?」

「むしろあのまま放置されて生きていられると思ってたの?ピッコロさんが止めを刺す前に回収してあげたんだから感謝しなさい。トランクス、説明」

「ええ、ここでオレに丸投げですか…」

そして落ち着いたラディッツにトランクスが説明する。

本来の歴史ではラディッツはあそこで死ぬはずだった。死んで以降ドラゴンボールで復活するでもなく完全にフェードアウト。歴史の表舞台からは忘れ去られてしまっていた。

「…歴史通りならオレはあそこで死ななければいけなかったのか」

「今は生きているんだから良いじゃない」

「軽いなっお前は!」

ラディッツの心の叫びをサラっと無視をして時の界王神さまが言葉を繋げた。

「まぁ、歴史は修正されたしラディッツくんの生死はそれほど重要じゃない。この場面で重要だったのはベジータとナッパの襲来の予告と悟空くんの死だから。まぁ元の時間軸に戻してあげる事は出来ないけれどね」

「ぐぅ…」

暴力に訴えようにも今のラディッツではモンテに敵わない。悔しそうにうめくのがやっとだった。

「なんでオレを助けたんだ…」

「まぁ肉親の情ってのも有るわよ?わたし地球育ちのサイヤ人だし」

生まれ変わってからの殆どはヤードラット星だと言う事実はややこしくなるので伏せておこう。

それに肉親の情と言われてちょっと赤くなったラディッツ可愛かったし。

「とは言え一番の理由はわたしのかわりに歴史の修正をしてもらおうかと思って」

「は?」

「だから歴史の修正」

「いやまて、説明されたから何となく歴史の修正の事は分かった、だがなぜオレがやらねばならん」

「だってラディッツくらいが丁度いいじゃない?強さ的に」

「ふ、それほど俺の強さを…」

「ごめん言い間違えた。ラディッツくらい弱くないと修正する歴史に負荷を与えてしまいそうで」

「なぜ言い換えた…」

「え、今のラディッツがわたしに敵うとでも?寝言は超サイヤ人になってから言って」

「寝言…だと…」

ズーンと再び沈み込んだラディッツ。超サイヤ人と言う言葉には反応せず。

「確かにねぇ、歴史を修正するにしても序盤にラスボスを投入する訳にも行かないわよね」

「時の界王神さままで…ラスボス…?モンテさんがですか」

「だってこの娘、破か…」
         「わーわーわーっ!」

「何よ、言っちゃダメなの?」

ダメなんですっ!なんかそのワードは更なる面倒事が引き寄せられそうなのでっ!

「で、次の修正点は何処なの?」

「次はここになります」

そうトランクスが持ってきた終わりと始まりの書にはサイバイマンに苦しめられるZ戦士たちの姿があった。

「…なんかサイバイマン多くね?しかも色違いとかいない?」

「ええ、はいそうなんです。戦闘力もこの当時の悟空さんでも恐らく手こずるレベルです」

うーわー…

「これは引くわー…仕方ない…トキトキ都にある武舞台貸してもらっていい?ちょっとラディッツをボコってくるわ」

「…ほどほどにしてあげてくださいね」

でえじょうぶだ。純粋なサイヤ人は死の淵から蘇れば戦闘力がアップするのだ。ベジータさんとかクリリンさんにわざと致命傷を負わせてデンデに回復させてもらうとかもう意味の分からない事をしているレベルだぞ。

「えーっと…この頃のベジータさんの戦闘力は18000だから…せめてそれくらいにはなってもらわないとね」

「…詳しいですね、モンテさん」

「まねー」

言葉を濁したモンテ。

あぶねー。戦闘力はこの頃のドラゴンボールが旬だっただけに覚えていたんだけど普通は分からない情報だったわ。

そしてその後はインフレにスカウターがついてこれず…まぁスカウターで測れるのは気だけだしゴッドになってしまえば分からずじまいだものね。

「と言うかそもそもラディッツが行ったら面識が有るんじゃないかしら」

と時の界王神さま。

「んー、ラディッツの髪を切って仮面でも付ければ大丈夫だと思うけどね」

「何ですか、その髪の毛が本体みたいな言い方は」

呆れているトランクス。

「あー…確かに髪の毛しか印象が残らないわね…彼」

時の界王神さまも頷いている。

「まぁ後は尻尾を切り落とせば完璧でしょう」

「ええ、切っちゃうんですか?それは余りにも…」

可哀そうとトランクス。

「この時間軸ってベジータがパワーボールを作り出すわよね。ラディッツまで大猿になってしまったら面倒じゃない」

「…本当、詳しいですねモンテさん」

そりゃファンですから。


そしてわたしはラディッツを引きずって武舞台へと移動するととりあえずボコる。

瀕死のダメージを負ったラディッツを回復するとやはり戦闘力が上昇した。

戦闘技術は長年の経験で十分に玄人の域だが、いかんせん戦闘力だけは低かったラディッツ。

「ふははははっ!凄まじい力を感じるぞっ!」

そりゃ今までの二倍の戦闘力にもなれば凄まじく感じるだろう。

回復させると調子に乗って襲い掛かって来たので再びボッコボコに沈める事3回。

「すみません…不甲斐ない兄ですみません」

ラディッツーっ!!生来のよわむし根性が出てるーーーーっ!

戦闘力は初期の10倍を超えていてもモンテに軽くあしらわれるラディッツが凹んでいた。

ヤバイ、勇気づけないと…

「お兄ちゃん」

「な、なんだ妹よ…」

あ、妹と認めてはいるのか。

「蟻がバッタになった所で人間には敵わないんだよ?」

「おっふぅ…所詮オレは虫ケラです…すみません…すみません…」

あ、更に凹ませてしまった…

「大丈夫、お兄ちゃんは強くなったよ。ほら戦闘力もナッパを超えているでしょ?」

スカウターで測った所15000は越えていた。

「そ、そうだよなっ!」

「お兄ちゃんは出来る子なんだよ。なんて言ったってゴボウファミリーなんだものっ!潜在能力は高いはずだよっ!」

やる気を出してもらった所で髪の毛をバッサリと切り、尻尾をちょん切って服装を地球風の適当な物に着替えなおさせると歴史修正へと出発。

「だ、大丈夫ですよね…ラディッツさん」

トランクスが心配そうに耳打ちしてきた。

「大丈夫大丈夫。ベジータより少し弱いくらいに仕上げたから」

「仕上げたって…調教師じゃ無いんですから言葉を選んでください」

終わりと始まりの書を握りしめるとZ戦士たちがサイバイマンと戦っている所へと出た。

悟空はまだ到着していない様だ。

「そこの岩陰に居るやつ、巻き込まれたくなければさっさと逃げろ」

そうピッコロさんがこちらを睨んで忠告してくれた。

「とは言え、さすがにサイバイマンを間引かないと勝ち目はないか、行ってらっしゃいお兄ちゃん」

「ぬっ…ぬぅ…お兄ちゃんなどと気色悪い呼び方をするなっ!」

岩陰から出ていくラディッツ。

「お前は…どこかで会った気はするが…気のせいか?」

ピッコロさんは髪の毛を切って仮面を着けただけでラディッツだとは気が付かなかったらしい。

「戦闘力15843だと!?」

「なんだとっ!壊れているんじゃねぇか?」

ベジータとナッパもその戦闘力に驚くだけでラディッツとは気が付かなかった。

「き、気づかないのだが…」

岩陰に隠れるわたしを見てラディッツが言う。

「お兄ちゃんの印象は髪の毛が八割だったから…」

「マジか…」

「マジ」

それを切ってしまえば途端に気が付かれなくなるだろうと言う見込みは当たっていたが、相当ラディッツも精神的ダメージを負ったようだ。

とは言え、歴史を修正するためにはサイバイマンをまねがねば。

始まるサイバイマンとの戦闘。

ふつうに考えれば今のラディッツが負ける訳無いのだが、数の多さと強化されている事で一進一退の攻防が続いていた。

その内に大量のサイバイマンを引き連れて戦線を離れてしまったラディッツ。

「ここなら本気でやれるってもんだっ!」

張り切るラディッツは確かに強かった。

襲い掛かるサイバイマンを蹴散らして確実に止めを刺していく。

「うう、本当に強くなって…ほんのちょっと前までサイバイマンに毛が生えた程度の戦闘力しかなかったのに」

「う、うるさいっ!お前も戦えっ!」

えー…

とりあえず面倒くさそうなテンネンマンとジンコウマンにケンカキックをかますと粉みじんに吹き飛んでいった。

「化け物め…」

ひどっ!?

『すみません、どうやらナッパも何者かによって強化されているようです。悟空さん到着までに体力を減らしてください。流石の悟空さんも今のあの二人と連戦するのは負担が大きすぎます』

そうトランクスから通信が入った。

「だって、頑張って来てお兄ちゃん」

「どいつもこいつもカカロットカカロットと…まぁいい。ナッパに一泡吹かせられるんだ、行ってやろう」

「正体に気が付かれないようにね…まぁ、髪の毛と尻尾が無いから多分大丈夫だと思うけどっ!」

あと仮面もつけてるし。

「お前は…はぁ…行って来る」


ナッパの戦闘力は4000だったはずだけど、持ち前のタフさと強化でラディッツといい勝負をしていた。

Z戦士たちが全員やられた頃、ようやく悟空さんが登場。

「ナッパ、お前はその仮面ヤロウを倒せっ!カカロットはオレ様が相手をしてやるっ!」

そう言って後ろで見ていたベジータが悟空さんと対峙する。

「おめぇは…どこかで会った気がすっぞ」

「ふん、今だけはお前の味方をしてやる。感謝するんだな」

「誰だかわかんねぇけどありがとよっ!」

そうして始まる兄弟による共闘。

ナッパは無事にラディッツが倒したようだ。

悟空さんの方を見ればかめはめ波とギャリック砲の撃ち合い。

界王拳を使える悟空が撃ち勝ったが、倒すには至らず。

「はじけて、まざれっ!」

ベジータが作り出したパワーボールでベジータは大猿化。戦闘力も10倍に伸びていた。

「おいっ、モンテっ!」

岩陰で影に入りながら地面を向いて両手で顔を覆っているモンテにラディッツが声を掛けて来た。

「ごめん、無理。後は任せたっ!」

「なぜだっ!ってそうか尻尾か…」

パワーボールが浮かんでいる以上わたしは上を向けない。

「ひとの尻尾は遠慮なくちぎったくせに自分のは切って無いのかよ」

仕方が無いんだ。尻尾が無いと超サイヤ人4になれないんだもの。切る訳にはいかないのよ。

「ちぃっ!役に立たんヤツめ」

ラディッツは悪態を吐きながら大猿ベジータへ向かって行った。

ゴメンて。

いくらベジータが何者かによって強化されているとは言えこちらの戦力はラディッツの分増えている。

悟空さんとラディッツの共闘も息が合い始めた。

生き残っていたクリリンさんと悟飯くんも到着し、どうにかベジータの尻尾を切る事に成功。

後の流れは本来の歴史どおりに進むだろう。

それを見届けるとわたし達はトキトキ都へと帰還するのだった。

どうやら本格的に歴史を改変して、更に歪めている存在が居るようだ。それも敵を強化するなどと言う手段を取っている事から歴史そのもの時間そのものを破壊しかねない行為らしいのだ。

黒幕の存在は今の所分からない。

それとわたし達は改変された歴史を戻す事でしか対処が出来ないのだからアクションをしてもらわない事には黒幕にもたどり着けないのだ。



「と、父さんがギニューにっ!?」

新しい巻物を確認するとベジータがギニュー特戦隊スペシャルファイティングポーズを決めていた。

なるほど、今度はボディチェンジでベジータさんと入れ替わってしまったと言う感じなのか。

てかヤバイっ!ギニュー特戦隊のスペシャルファイティングポーズがががががががっ!…ふぅ…落ち着け、わたし。

「父さんだと?ベジータがか?」

「ら、ラディッツさん…」

終わりと始まりの書を見ていたトランクスが慌てていた。今回の歴史改変はナメック星編…フリーザ編のようだ。

「兄さん知らなかったの?トランクスはベジータさんの息子だよ」

「なん…だと…ヤツに息子が居る…だと?」

なんだろう、ラデイッツは結構ショックを受けているようだ。

「すみません…父さんをお願いします」

頭を下げるトランクス。

「まぁ、その前にラディッツはまた武舞台だね」

「うっ…まさか…」

「そのまさかです」

ニヤリといやらしい笑みを浮かべるモンテに若干引いているラディッツ。

「ちなみに今回はどの位に」

とトランクス。

「ギニューが120000だからまぁ、それより弱いくらいかな」

ギニューにボディチェンジされても面倒だし。

「……何故知っているのか…と言うツッコみは二度目ですね…お願いします」

ラディッツをボコり終えると終わりと始まりの書を握りしめナメック星へと降り立つモンテとラディッツ。

「ここがナメック星か」

「ドラゴンボールを奪ってやろうなんて思っちゃダメだからね。わたし達は歴史の修正に来ているんだから」

「分かっている。そもそも今のオレではお前には敵わないのだ、そのような事はせん」

さて、と。

「ギニューの気はあっちかな。近くにベジータさんの気も感じるし」

あとクリリンさんと悟飯くんの気も。

「そのスカウターも無しに相手の位置を探るのはどうやっているのだ?」

「そんな難しくは無いよ。ベジータさんも出来る事だしね」

「ちっ」

スカウターに頼り切ったラディッツには難しいのだろうが、出来るようになってもらわねば困る。要修行だ。

現場に到着すると、やはりギニュー特戦隊の強さが強化されているようだ。

対峙するギニュー特戦隊とクリリンさんと悟飯くん。

「そこに居るやつ、姿を見せろ」

スカウターでその存在を見破ったらしいギニューが岩陰に隠れていたラディッツとモンテを呼んだ。

ザッと地面を踏みしめて岩陰から出るラディッツ。

「誰だお前は」

「…やはり分からんのか…ショックだ」

髪の毛が本体だもんね、ラディッツって。

「あ、あなたは…どうしてここに?」「地球で助けてくれた」

とクリリンさんと悟飯くんがラディッツを見て呟いた。

「まぁこっちにもこっちの理由が有るんでな、助太刀してやる」

「助かるが…」「あ、ありがとうございます」

「…もう一人いた気がするのだが…スカウターの故障か?」

面倒な事になりそうだったのでゴッド化してスカウターの目を誤魔化したモンテだった。

戦闘はラディッツに任せるっ!がんばれお兄ちゃんっ!

「な、なんだ?」

ゾクリと身を震わせるラディッツ。

ギニュー特戦隊との戦闘が始まった。

「まさかオレがギニュー特戦隊といい勝負が出来るようになるとはなっ!」

「貴様、なにものだっ!」

誰何するギニュー。

「さあな、誰でも良いだろう」

そうしてリクームを追い詰めた所で遅れてやって来た悟空さんが登場。悟飯とクリリンをフリーザの宇宙船にドラゴンボールを取りに行かせた。

先にグルドが戻っているはずだが…まぁクリリンさんと悟飯くんも弱くないし何とかなるだろう。

「わりぃなまたつき合わせちまって」

「いや、かまわん」

「じゃあ、いっちょやってやっか」

悟空さんとラディッツがギニュー特戦隊と戦闘を開始する。

悟空さんがリクームを倒し、グルドは抜けた為に不在。残りはギニュー、バータ、ジースの三人。

ギニューは悟空さんが相手をしていて互角。バータとジースはラディッツが相手をしていた。

追い詰められたギニューはボディチェンジを使うが…

「えー…」

『これは…どうしたものでしょうか…』

モンテとトランクスの若干あきれたような戸惑いの声。

偶然ジースに蹴られたラディッツがボディチェンジの直線上に割り込んでしまい中身が入れ替わってしまったのだ。

本来入れ替わるはずの悟空さんでもなく、歴史改変の為に入れ替わるはずだったベジータさんでもなくまさかのラディッツ…

「こ、これは…入れ替わったのかっ!?このオレがっ!」

ギニューと入れ替えられて慌てているラディッツ。

「なんて事をしてくれたんだジースっ!」

「す、すみません隊長っ!」

「この体と孫悟空では潜在能力が違うのだっ!」

ギニューはギニューで不満のようだ。

「ふざけやがってっ!ならば返せっ!」

「返せと言われて返す奴が居るかっ!」

「えっと…あっちがアイツでこっちが…オラこんがらがって来たぞ」

悟空さーんっ!

「貴様らっ!」

キレたラディッツがギニューの体でバータとジースを襲い始めた。

「ほう、この体も中々鍛えられているな」

「くそ、お前が敵なんかっ!入れ替わったと言う事かっ!」

悟空さんとラディッツの体に入ったギニューも戦闘を開始。

「はぁ…はぁ…はぁ…ざまぁ見やがれ」

すごい、ギニューの体に入ったラディッツがバータとジースを倒してしまった。

「すまねぇ、その体なら怪しまれないだろうから宇宙船に行ってドラゴンボールを取ってきてくれねぇか。、おめぇの体はオラが何とかしておくからよ」

「何とかって…クソっ!覚えていろよカカロット」

「やっぱオメーどこかで会った気がすっぞ」

ギニューの体に入ったラディッツが飛び去る。

「クソッ」

「おっとオメーの相手はオラだろう」

追いかけようとしたギニューを遮る悟空。

あー、結構容赦なくラディッツの体をボコってるわー…わが兄ながらヒドイものだ…

え、お前も変わらんだろう?そう言う事は言ってはいけない。わたしのは修行だ。

ギニューが突如悟空さんの隙をついて宇宙船へと飛んでいく。それを追いかけるように悟空さんも飛んでいった。

「さて、と」

二人が居なくなったのを確認して岩陰から出るモンテ。

「そこに居るんでしょう」

「あら、中々勘が良いわね」

現れたのは二人の人影。

魔族の女性と筋肉質な男性だ。

「あなたが歴史を改変している存在って事でオーケー?」

「たいしたキリも感じない存在で威勢だけは良いな。ここで消えてもらうぞ」

と大柄の男が言う。

「弱いくせに追われるのは面倒だわ、やっちゃってミラ」

「了解した。トワ」

気を開放する大柄の男、ミラ。

中々の気でこの時代のフリーザなど完全に圧倒している。

「せめて苦しませないで殺してやろう」

シュンと高速移動すると抜き手がモンテを襲う…が、しかし。

モンテは冷静にミラの腕を取り、返す力で締め上げて骨を折った。

「ぐわわあああっ!」

「ミ、ミラっ!?」

慌てるトワだが、遅い。

こっちは最初から超サイヤ人ゴッドなのだぞっ!まぁ、スカウターを誤魔化す為にゴッドだっただけだけど。

更に足を引っかけて地面に転がすとそのまま体重を掛けた肘打ちで肺を強打。

「がぁっ!」

骨が折れる音が聞こえたので肋骨が折れているかもしれない。

「くっ」

援護のつもりだろうか、トワからエネルギー弾が飛んでくる。

それを立ち上がったと同時に持ち上げたミラの巨漢を盾にして受けるモンテ。

「ミ、ミラ…なんて卑怯な…」

攻撃してきた相手に卑怯もクソも無い気がするんだけどなぁ…

少し大きめのエネルギー弾を準備しているトワと、意識を取り戻したミラがモンテに肘打ちをして来ようとした所をトワへとミラを蹴り飛ばしエネルギー弾の収束を中断させるとすぐさま半身を引いて腰を落とす。

「か・め・は・め…波ぁーーーーーーーーっ!」

極光がトワとミラを飲み込んだ。

周りの地面を抉って襲い掛かるかめはめ波を正面から受けるミラがトワを守っているようだ。

「ち、逃がしたか」

かめはめ波を撃ち終わるとそこには二人の姿は無かった。どうやら転位で逃げたらしい。

すぅっと髪の毛が赤から黒に戻ったモンテ。

その後ろにズタボロのラディッツが降りて来た。

「こんな所で何をしていた…こっちは大変だったのだぞ」

「…無事に戻れて良かったじゃない」

『はい、歴史も無事に修正されました。二人とも帰ってきてください』

モニターしていたトランクスの通信。

ラディッツの話を聞けば、追い詰められたギニューは悟空さんとのボディチェンジをしようとした所に割り込んで元に戻ったラディッツ。

しかし、そこにグルドが助太刀に現れ金縛りで悟空さんの動きを止めると悟空さんと入れ替わったらしい。

そしてここで機を窺っていたベジータさんが登場。遠慮なく悟空の体に入ったギニューをボコり、焦ったギニューがベジータさんと入れ替わろうとした所を悟空さんがインターセプト。

もう一度と使ったボディチェンジは悟空さんの投げたナメックガエルに当たり入れ替わってしまったそうだ。

まぁ大局を見れば確かに原作通りと言う事…なのかな?

時の巣に戻れば今回の黒幕の報告だ。

ミラとトワと名乗った二人組。

時の界王神さまによれば、二人はわたし達の世界よりも未来の世界の暗黒魔界の住人らしい。

そしてトワはなんとあのダーブラの妹らしいのだ。…ダーブラに妹が居たなんてビックリだわ。

今後の目的は改変されるだろう歴史を修正しつつ歴史を改変するミラとトワを捕まえる事が目的となる。…のだが。

「まさかこんなに近い時間軸で改変が行われるとは…」

トランクスが持ってきた終わりと始まりの書は先ほどとほぼ同一時間軸のナメック星。

どうやらフリーザが強化されて強すぎるらしい。このままでは悟空さんが回復を待たずにメディカルポットを出てきてしまい万全の状態では無い為に負けてしまうのだと言う。

「フリーザさま…だと…」

恐怖にラディッツの体が震えていた。

「ラディッツさんはどうしたんですか?」

「いやほら、フリーザさまの戦闘力は530000だから…」

ギニューより少し弱いくらいのラディッツでは恐怖の対象なのだろう。

いやまぁ、ナメック星でボコられたせいかもう少し戦闘力は上がって入るのだが、焼け石に水だ。

それにフリーザさまは変身型宇宙人だ。最終形態の戦闘力はすさまじい。

「そんなに強いですかね」

「ちょ、おま…っ!!」

トランクスの言葉に動揺するラディッツ。

「あー…まぁトランクスにはザコでしょうよ」

あれだけナメック星編で苦労したフリーザ様なのに未来から来たトランクスがメカフリーザさまを瞬殺するのは読者として驚いたものだ。

トレーニングを重ねたフリーザさまじゃなく今の状態ではトランクスにしてみれば何ら脅威ではない。

超サイヤ人に覚醒したばかりの悟空さんに倒されたんだしねフリーザさまって。

とは言え今のラディッツではフリーザに敵わない。

ラディッツの強化が急務となれば…どうしようか。

未だスカウター頼りなラディッツではこの後の戦闘にはついていけなくなる。

繊細な気のコントロールを身に着けてもらわねばならないだろう。

そのついでに界王拳を覚えてもらえば…うん、ラディッツのレベルアップになるね。

修行方法は…うーん…スピリットの同調が一番近道か。

こういう時血縁はいろいろと楽だわ。魂は似てないかもしれないがその入り口である肉体は確かに似た遺伝子を持っているのだ。

スピリットを同調させてモンテの経験値を送り付けて習得させる。

ラディッツには苦しいかもしれないけれど短時間で界王拳を覚えてもらわないとね。



「ぐぅ…がぁ…」

無様に瓦礫をまき散らして武舞台の上を転がるラディッツ。

ちくしょう、オレはこの武舞台の上で何度あの女に殺されそうになった事か…数えるのもバカらしくなるほどだ。

「ほい、回復っと」

その都度あの女…モンテはオレを回復させてサイヤ人特有だと言う超強化で戦闘力を上げている。

オレの戦闘力も20万を超え、モンテに覚えさせられた界王拳とやらを使って倍々に戦闘力を増やしていると言うのに全く敵う気配すらない。

「くそぉ…」

再び立ち上がるとグッと四肢に力を込める。

「界王拳…3倍だぁっ!」

赤いオーラがオレを包み込み戦闘力がアップしたのを確かに感じられる。

「つぁっ!」

武舞台を蹴ってモンテへ迫ると拳を連打。

「だりゃりゃりゃりゃりゃりゃっ!」

こっちは全力で攻撃しているにもかかわらず涼しい顔ですべて受け止めやがる。

「よっはっほいっと」

今の俺の状態ならフリーザ様より強いと言うのにこんなに差があると言うのかっ!

「これならどうだぁっ!」

やけくそ気味にダブルサンデーを放つが…

「かめはめ波っ!」

モンテの半身を引いて押し出された両手から放たれたほぼ抜き打ちの気功波に相殺どころか押し負けてしまう。

「ちくしょうぅっ…!」

ゴロゴロと武舞台の上を転がりどうにか立ち上がるが、すでに満身創痍だった。

「なぜ敵わないっ!」

だんと武舞台を殴りつけると石が飛び散ったようだ。

「まぁカピバラくらいにはなったかな」

「カピバラとはなんだ」

「地球最大のげっ歯類…えっとこのくらいの」

そう言って楕円を描くモンテ。

「くそーーーーーーっ!」

最初の蟻よりは大分マシになったが、これでまだそれだけの差があると言うのかっ!

「まぁでもこれで次の歴史の修正は大丈夫でしょう。10倍界王拳を使えばフリーザさまの第三形態までなら互角に戦えるわ」

「……ちなみにお前がフリーザさまと戦えばどうなるんだ?」

「えっと…トレーニングを積んでいないあのフリーザさまなら拳一撃で倒す自信はあるわ。最終形態になっても苦労しないわね」

「なん…だと…」

トレーニングを積んでいないとか言う言葉が出たのが気になるがフリーザさまを赤子扱いだと…?

いや、逆に考えるんだ。サイヤ人の可能性はそこまでのポテンシャルを持っていると。

だからいつかはオレも…

「さて、じゃあ回復したらちゃっちゃと歴史修正に行くわよ」

「あ、まってくれ…やっぱりちょっと…」

「生来のよわむし根性はなかなか治らないなぁ…はぁ」

ため息を吐くなっ!それにオレは弱虫じゃねぇっ!

「よし、すぐに行くぞっ!フリーザさまがなんぼのもんじゃいっ!」

「…?どうしたの、いきなりやる気をだして。まぁいいわ。それじゃ行きましょうか」



終わりと始まりの書を握りしめたモンテと一緒にナメック星へと降り立つ。

「そこにまだハエが隠れているようですね」

「何だ、また貴様かっ!」「あ、あなたは…」「今までどこに…」

ベジータ、カカロットの息子、髪の毛の無い小さな地球人を岩の影から覗いていたのだが、フリーザ様にはバレていたようだ。

ジリっと岩陰を出るが、モンテが付いてこない。

視線をやればなぜかモンテの気が感じられなくなっていた。

どう言う事だ、という疑問は目の前のフリーザ様からのプレッシャーに追いやられる。

「私の不老不死の夢をあと一歩と言う所で見事に打ち砕いてくれましたね」

確かにドラゴンボールはただの石へと変容してしまっていてこれでは願いは叶えられないのだろう。

そもそもベジータはポルンガが現れた事で駆けつけ、願いを強要していたのだが、願いをかなえる前に最長老様の命が尽きてしまったと言う事なのだ。

さらにどうもフリーザさまもムシャクシャしているようで、イライラした気が威圧として周囲へと伝染していた。

「なぶり殺しにしてやるっ!」

始まる戦闘。

戦闘力と言う視点では絶対に敵わないだろうが…

ベジータは全員で掛かれば勝てると踏んだようだ。

確かに皆で掛かれば善戦出来ていた。


しかしそれにイラだったのか…

「わたしは変身を後三回残しているんですがね」

と指を三つ立てるフリーザ様。

変身…だと?そう言えばモンテが言っていたか、フリーザ様は変身型宇宙人だ、と。

「一気に見せてやるっ!」

突如フリーザ様の気が膨れ上がったと思うとその姿を変えていた。

角などは無くなりシンプルだが力強さを感じるフォルムにオレもベジータも他二人も驚愕していた。

「この姿をみて生きていたヤツは居ませんよ」

次の瞬間フリーザ様の姿が消えた。

速いっ!

「なにっ!」

フリーザ様の攻撃に飛ばされて行くベジータ。

均衡を保っていた戦いがまたフリーザ様へと傾く。

畜生…ブルっちまうぜ…

どうやら地球に居たナメック星人が駆けつけてきたが、焼け石に水だ。

強い…流石フリーザ様だぜ…

ベジータなど超サイヤ人にさえなればとクリリンに攻撃させて小さなナメック星人に回復させサイヤ人特有の超回復による戦闘力の強化を使うと言う技を使っていたが、ふん、そんな物で超サイヤ人とか言うものにはなれんさ。

そんな物でなれるのならモンテに半殺しにされているオレなど既に超サイヤ人だろう。

「あなた、面白いですよ。この私に着いてこれるとは。まだ実力の10分の1も出していませんがねっ!」

フリーザ様の攻撃を受け止める腕が痺れる。

既に界王拳も5倍を超えている。

戦闘力で言えば最初のフリーザ様を超えているが…

クソッ

「10倍界王拳っ…」

「ほう、まだ上がりますかっ」

クソッ体が痛ぇ…

ドンッドンッドンッ

空気が震える音が響く。拳と拳がぶつかり合っていた。

だが、悪くねぇ。このオレがフリーザ様と打ち合えるとはなっ!

怖ぇ、怖ぇな…ベジータなど超サイヤ人と粋がってみたがフリーザ様に一撃でやられて自信を喪失してしまっていた。

まぁオレの場合身近にモンテと言う化け物が居たせいで慣れていたと言う事も有ってまだ心は折られていないが、それもいつまで持つか。

まぁ、サイヤ人のオレとしてはその本能の赴くままにこの戦いを楽しんでしまっていると言うのもほんの少しだが存在しているが…勝てねぇな。

その事を素直に認めるくらいにはオレも成長できたのだろう。

今回の任務は強化されてしまったフリーザ様の体力を減らす事とカカロットのガキと地球人の命を守る事、悟空がメディカルポッドで回復する時間を稼ぐことだ。

10倍界王拳を使ってようやく互角の勝負なのだが、フリーザ様は全力からは程遠いのだろう。

地力で押され始めた。

「ぐっ…」

一瞬の隙に腹部にいいものを貰ったらしい。

幾つかの岩山を貫いてようやく止まった頃には全身が死ぬほど痛かった。

「ちくしょう…」

「ほっほっほ、中々楽しませてもらいましたよ」

フリーザ様の手がこちらを向いている。止めをさすつもりか…

「それではおさらばですよ…おや、あなたは」

ちっようやく登場かよカカロットの奴め。

「わりぃ、みんな待たせたな」

「悟空」「お父さんっ!」

カカロットの息子と地球人が呼んだように遅れて現れた孫悟空。

ギニューとの戦いで負った傷は完治したようだ。しかも戦闘力も上げて来てやがる。

「うっ…ぐっ…」

這うように岩山から抜け出した。

「お疲れ、ラディッツ」

「モンテ…貴様っ!」

偶然なのか、ラディッツのめり込んだ岩山の影にモンテは隠れていたようだ。

「ほいっと」

先ほどまで痛みを訴えていた四肢から傷が消え、体力も元に戻ったようでからだが軽い。

「歴史は何とかなったのか?」

「ああ、ラディッツがフリーザ様の体力を減らしてくれたからね。おおよそ歴史通りだよ」

始まったカカロットとフリーザ様の戦いを眺める。

「ちっ…やつは天才か」

「悟空さんだからね」

フリーザ様にどうにか食らいつき、カカロットは元気玉でフリーザ様を倒しやがった。

「終わりか?」

「…まだだよ」

ほら、とモンテが向けた先を見れば生きていたフリーザ様とイラ立ちで爆死させられた地球人の姿が。

「お、おいっ!アレは良いのか?」

パラパラとクリリンだったものが舞っている。

「あまり見たいものでも無いけど…歴史通りだから。クリリンさんの死はどうしても必要だったんだ」

「必要な死…だと?オレですら生死は不明でも問題ないと言われたのだが」

納得がいかんぜ。

「ほら」

「なっ!?」

カカロットの気に世界が震えていた。

怒りと共に膨れ上がったカカロットの気は潜在能力の壁を越え…

「なんだアレは…」

「超サイヤ人」

「アレが…ベジータが言っていた…伝説の…」

「あ、それはブロリーかケールなので。まぁサイヤ人の変身の一つだよ」

膨れ上がったカカロットの気は圧倒的だった。オレが界王拳で気を引き上げた所で敵うまい。それほどまでに隔絶していた。

「勝ったね」

ボソりとモンテが呟く。

「帰ろうか」

「超サイヤ人……モンテなら勝てるのか?いや、愚問だな」

確かにカカロットはフリーザ様にギリギリ勝てるだろう。だがギリギリだ。モンテはなんて言っていたか。

…最終形態になっても苦労しない。

「化け物め」

「そだね。悟空さんはとんでもないから」

お前に言ったのだが、理解されなかったようだな。



「今回もお疲れさまでした。歴史は無事に修正されましたよ」

時の巣に戻って来た二人を出迎えるトランクス。

「本当に、何とかなってよかったよぉ」

「おい、お前は何もやって無いだろうがっ!」

「そうだっけ?」

としれっと答えるモンテにラディッツは呆れる。

「それよりもだ…あの超サイヤ人と言うのは」

「ああ、そう言えばこの歴史で初めて悟空さんは超サイヤ人になったんでしたっけ」

「そそ。これがまさかのバーゲンセール並のレア度になるとは読者も思わなかったわ」

「ちょっとまて、伝説の超サイヤ人がどうしてバーゲンセールになる」

不思議そうな表情を浮かべるラディッツ。

「え、そりゃ…ね?」

「えっと、はい。ボクも超サイヤ人になれますし…おそらくモンテさんも」

「あ、うん。そう言えば見せて無かったね。なれるよ、わたしも」

はっ!と気を高めたモンテの髪の毛が金色に染まって逆立った。

「なん…だと…?」

「まぁ、トランクスと悟天はおかしいにしても、キャベやカリフラ、ケールなんかも普通に変身出来るしわりとフツーフツー」

「超サイヤ人のバーゲンセールですか…」

「トランクス…父親の真似をしない」

「は、はい」

「まぁ、これから先の時間を修正するとなればラディッツも最低超サイヤ人くらいにはなってもらわないとね」

「なれるのか…オレが?」

そう呟くラディッツに胡乱な視線を向けるモンテ。

「うーん…微妙?」

「おい」

「いや、カードでは見た事あるからっ!うん、超サイヤ人3くらいにはなれるよ…たぶん」

「あの、モンテさん先ほどから読者とかカードとかいったい何の事ですか?」

「いや、こっちの事。気にしないでトランクス。それよりも」

とモンテはラディッツに向き直る。

「まぁ実際超サイヤ人になる為に必要なのはS細胞の量だから」

「そのS細胞と言うのは…?」

「ああ、トランクスも知らなかったか。まぁ良いんだけど…簡単に言えば超サイヤ人に変身するのに必要なファクターかな」

「サイヤ人であると言う事が条件なのでは無いのですか?穏やかな心を持ったサイヤ人が怒りをきっかけに覚醒すると教わりましたが…」

「まぁその認識であ合っているよ。ただ、その穏やかな精神で増えるのがS細胞と呼ばれる因子でこれが必要数値に達していないと超サイヤ人にはなれない。だからラディッツは微妙、…まぁ一応戦闘力を高める事でもS細胞は増えるらしいけど、難しいかな。これを増やすのは…まぁギネお母さんがサイヤ人にしては突然変異で愛情深い性格をしているからラディッツにも遺伝していれば必要量のS細胞はあると思うのだけれどもね」

「なれる…のか?…オレが超サイヤ人に…」

「弟に出来て兄に出来ない何て事は無いでしょ…たぶん」


武舞台でラディッツの修行が始まる。

「ゾワゾワを背中に集める、ですか。確かにそんな感じですね」

何故か付いて来たトランクスがモンテの言葉にうなづいた。

「そんな事で超サイヤ人になれるのか?」

「ラディッツの場合感情の爆発による後押しが出来なそうだからなぁ」

「た、たしかに…」

とトランクスも同意する。

「怒りによる超サイヤ人化。まぁ、精神的に打たれ弱いラディッツができるかなぁ…」

なんて言ってもよわむしラディッツだぞ?

「むしろ褒めて伸ばす方がいけるんじゃないかと」

「…なるほど」

ラディッツの気が膨れ上がる。

チリチリと空気が震え毛が逆立ち始め…そして…

「はぁ…はぁ…はぁ…ダメ…か…やはりオレでは超サイヤ人にはなれないのか」

落ち込むラディッツ。

「そうでも無いよ。いい線行ってると思う。後はほんの些細な切っ掛けだけなんだけど…」

もしくは…

「ショック療法かなぁ…」

「ショック療法ですか?」

「一度死ぬ寸前までボコってみるとか。覚醒物の漫画みたいに」

「ああ、アレですね。確かに、それは良いかもしれません」

ラディッツのあずかり知らぬところで覚醒か死かの天秤にかけられているようだ。

「しかし、ラディッツさんの修行は時間が掛かるでしょう」

「なんで?」

とモンテがトランクスに聞き返す。

「次の歴史の修正はセルゲームなんです」

「おふぅ…わたしが行かないとダメかぁ…」

「すみません…」

しかしやはりモンテはあまり気が進まないようで、別の案を思いつく。

「よし、ラディッツを精神と時の部屋か次元断層かどっかその辺に突っ込もう」

時の界王神さまにお願いして精神と時の部屋に似た施設をトキトキ都に作ってもらいラディッツを蹴り入れる。

「モンテー、貴さまーっ!!」

「ラディッツさん、頑張って来て下さい」

「何を言っているの?あなたも行くのよ」

と言うモンテの言葉の後トランクスも蹴り入れて扉を閉め始めるモンテ。

「ぐわぁっなぜボクもなんですかっ」

「トランクスー、せめてラディッツを超サイヤ人フルパワー状態にくらいなれるようにしておいて」

「そ、そんなっ!!」

「あ、ムキンクスは駄目だよ、ムキンクスは」

そう言い終えるとモンテは精神と時の部屋の扉を硬く閉めるのだった。

2日後。

2年の修行を終えて出て来た二人。

「モンテ、…きさまぁっ!許さんぞっ!」

「ええ、今度ばかりはラディッツさんに同意します」

出て来たラディッツの伸びた髪の毛は逆立ち金色に染まっている。

「無事に超サイヤ人になれたのねっ!やったじゃん」

「ああ、だからきっちりお礼しなければとトランクスと話していたんだ」

「はいっ!行きましょう、ラディッツさんっ!」

トランクスを見れば彼もすでに超サイヤ人だった。

「行くぞモンテっ!」

ラディッツが武舞台を蹴ってモンテに襲い掛かる。

ラディッツは拳を振りかぶりモンテを襲う。

「くっ…」

モンテは寸での所でラディッツの拳を弾き格闘戦へともつれ込んだ。

「オラオラオラッ」

「ちょ、ちょっと…何で怒っているのか分かんないんだけどっ!」

「そう、その理不尽さだっ!その理不尽さへの怒りが俺を超サイヤ人に覚醒させたっ!」

「覚醒理由しょっぱいなっ!」

「うるせーっ!いいから俺様に殴られろ!」

ドンドンと言う組手の圧で互いに距離を取った。

キュピンと音を立てて上空から気弾が飛んで来る。

どうやらトランクスが放ったようだ。

「はっ!」

溜まらずとモンテは超サイヤ人に変身しそれを弾いた。

「俺様たちの怒りを受けろっ!」

「そうですよっ!モンテさんは初対面なのに手加減も無くボクを殴りましたしねっ!」

2対1で交互に組手を挑んでくるラディッツとトランクス。

「くっ…」

超サイヤ人フルパワー同士の戦いではいくらウィスとの修行で地力が上のモンテであっても少し苦しい。

劣勢になりモンテはギアを上げた。

「超サイヤ人フルパワー程度で調子に乗るなよっ!…はぁっ!」

気合一発。左右から放たれたラディッツとトランクスの拳を受け止めるモンテの髪の毛は更に逆立ち体からはスパークが迸っている。

「それはっ悟飯さんのっ!」

「知っているのかトランクスっ!」

とラディッツがトランクスの方を向く。

「がっ」

「ぐぁっ!」

その隙にモンテは二人の手首をつかむと両手を振り上げ地面に叩き付けた。

砂塵を巻き上げた二人から距離を取るモンテ。

「くそぉ…何がどうなってやがる」

両手をついて起き上がるラディッツ。

「アレは…あの姿は…悟飯さんが見せた超サイヤ人を超えた超サイヤ人…そんな…まさか…」

トランクスも起き上がり驚いているようだ。

ジジッ、ジジッとスパークが弾ける。

「超サイヤ人2…二人には少しお灸が必要みたいね」

ボキリボキリと掌に押し当てた拳から小耳良い音が響く。

「はは…は…」

トランクスの笑いは引きつっている。

「少しくらい姿が変わったくらいでっ!」

超サイヤ人になれた事で調子づいているラディッツはモンテに襲い掛かり…

「ぐぁあっ!」

ドンと一撃で武舞台へと沈み意識を失った。

「さて、トランクスは…」

「ははは…僕はこの辺で遠慮しておこうかなぁ……ダメですか?」

「ダメ、ね」

モンテはヤる気だ。

「こうなれば僕もサイヤ人の血を引く者です…強者との戦いに興味が無いかと言われれば嘘になります」

構えを取るトランクス。

「行きますっ!」

そう言って先に動いたのはトランクスだ。

「ハァッタァっ!」

「さっきよりも気合が入ってるわわよ、トランクス」

二人の拳が交差する。

数十を超える攻防に空気も震えているようだ。

「くっ…」

しかし押されたトランクスは一度距離を取り手の平を向けると気功弾を放つ。

「はぁっ!」

「ふっ」

ブンと振った腕で軽々と気功弾を弾くモンテ。

トランクスはそのまま飛び上がりさらに気功弾を連発。

ドドドと上がる土煙の中心にモンテを釘づけると両掌を重ねて半身を引いて気を溜めるトランクス。

「見よう見まねの…ギャリック砲っ!」

その技はトランクスの父、ベジータの必殺技だ。

対するモンテも土煙が薄れる中手を合わせて腰を引く。

「かーめーはーめー…」

「っ!!!!」

その掛け声に驚くトランクスだが、気の集中は一瞬トランクスの方が早く腕を回転させて手のひらを打ち出した。

「はぁっ!」

降り注ぐ気の本流。

しかし慌てずにモンテも手のひらを突き出した。

「波ぁーーーーーーーーっ!」

互いにぶつかる気功波の衝撃で地面がめくれる。

「うわぁあーーーーーーっ!」

ジュッ

拮抗は一瞬で、モンテのかめはめ波がトランクスのギャリック砲を押し流した。

しばらくすると二人を回復させたモンテは正座させつつ反省させている。

その間彼女の口からは小言が溢れていた。

「トランクスはなれるのか?その…超サイヤ人2とやらに」

「いえ、…僕もまだ…でもいつかは…」

モンテを前にしてコソっと二人で内緒話。

「ちょっとそこ聞いているのっ!」

「「は、はいっ!」」

びくっと背筋を伸ばすラディッツとトランクス。

はぁとため息を吐くモンテ。

「大体、超サイヤ人なんてようやく小指程度の変身なのよ。親指までどれくらいあると思っているの?」

「「はい?」」

意味が分かりませんと二人の表情が固まった。

「2だ3だの時限の話ではないのよ」

と再びため息を吐く。

「まぁいいわ。セルゲームくらいなら運が良ければ死なないでしょう。行きましょうか、お兄ちゃん」

「は、はい……え?」

ラディッツを連れて再び歴史の修正へ。

この時間へはそれこそトランクスを連れて行くことは出来ない。

セルゲームの為に集まる戦士の中に何食わぬ顔で混ざる。

リングの上には完全体のセルが腕を組んでいるのが見えた。

「くっ…」

ラディッツもセルの強さを感じているようだ。

そしてその武舞台の上で啖呵を切っている大柄の格闘家風の男。

「誰だあのもじゃもじゃの一般人は…大した戦闘力も感じないが…」

「パパ…」

そうおなじみのミスターサタンだ。

「パパだとっ!?お前の父親はバータックでは無いのか!?」

「こっちにもいろいろ事情が有るのよ…」

「ぐおー、でやーっ!!」

ミスターサタンは勇猛果敢にセルに挑みかかるがまるで蚊に刺されてるかの様。

鬱陶しくなったセルに殺気が籠る。

流石に剣呑な気配にモンテが動いた。

武舞台を蹴りミスターサタンを弾き飛ばす。

「ほう、流石にこの舞台に上がるだけは有るな」

とセル。

「ご、ごめんなさい…お邪魔しました」

と言ってモンテはそそくさと武舞台を降りた。

そのまま気絶したミスターサタンをずるずると引きずるモンテ。

「なぜ庇ったりしたんだ」

とラディッツ。

「こんなんでもパパが死んじゃうと大変な事になるんだからね。それこそ地球滅亡の危機よ」

「この男がか?」

「あのね、英雄って言うのは戦闘力が高ければなれるってものじゃないのよ」

「意味が分からん」

フンと舞台を見るラディッツはもう興味を失ったようだ。

セルゲームは進み、悟空さんがリタイアして悟飯くんが武舞台に上がる。

このまま終わってくれればと思っていたのだが…

悟飯を怒らせるために生み出したセルジュニアが強化されてしまっていてこのままではZ戦士たちが死んでしまう。

一度死んでしまっている彼らは地球のドラゴンボールでは生き返れずこのままでは歴史の変革が起きてしまう。

「どうするんだモンテ」

「あー、もう。お兄ちゃん、ちょっとあのセルジュニアを間引いてきて」

「簡単に言ってくれるなっ!畜生ッお前はどうするんだっ」

「わたしはパパを守りながら、よ」

「畜生、ブルっちまうぜっ…はぁっ!」

超サイヤ人に変身したラディッツだが、周りのZ戦士たちも各々セルジュニアに纏わりつかれ気にしている余裕がないようだ。

「キキーッ!」

「やってやる、やってやるよっ!」

ラディッツがこちらを標的にしたセルジュニアへと向かう。

「わたし達が居るからか、数が多いな…」

「くそぉっ!なんて化け物だっ!本体でもないくせによっ…」

「なかなかいい勝負しているじゃん、お兄ちゃん」

「ちょっとは手伝えよなっ!」

ラディッツはどうにかセルジュニアに食らいつき、戦況を押し戻していた。

「うんうん、強くなったねぇ」

「キキーッ」

「しまっ…」

数が多い為ラディッツをすり抜けてモンテの前までやって来るセルジュニア。

涙をぬぐうそぶりを見せているモンテに襲い掛かった。

ドンッ

「キキッギィ…」

何が起こったのかも分からないセルジュニアはその体をくの字に曲げていた。

そして遅れて衝撃で吹き飛んでいくその体は上空に打ち上げられた後爆散。

真下を見ると髪を赤く染めたモンテが涙を拭っている手の反対の拳をただ突き出しているだけだった。

「ば…化け物め…」

「こらー、お兄ちゃん、それってセルジュニアの事だよねっ!」

「も…もちろんだ…」

怯んだラディッツは言葉を濁した。

その後、キレた悟飯くんが覚醒するのだが、どこかおかしい。

「これは…なんてパワーだ…これがあの時のガキか」

とラディッツ。

「なん…だと…イキリ飯じゃない…?」

何者かによってセル同様強化された悟飯くんがセルと激突、死闘を繰り広げる。

「なんだ、どうした。予定どおりじゃないのか?」

とラディッツ。

「マズイ状況だけど、ここは見守るほかない…多分わたし達の敵が近くにいるんだ。お兄ちゃん、周囲を探してきて」

「俺がか?…いぇ、はい。分かりました」

モンテが睨みつけると慌てて飛び去るラディッツ。

後で聞いた話だが、ミラとトワが現れてトランクスと一緒に撃退したらしい。

セルと悟飯くんの勝負はどうにか悟飯が勝ち、最後の手段と自爆を計ったセルを悟空さんが瞬間移動で飛ばす。

その後帰って来たセルは正気に戻った悟飯くんがかめはめ波で吹き飛ばし、どうにか歴史は守られたのだった。


セルゲーム編が終わると予想通りなのが嫌なのだが魔人ブウ編の歴史改変だ。

「でもさぁ…魔人ブウが相手ともなるとどれほどラディッツを強化しないといけないの?と言うか、トランクスが行った所で勝てる要素がないんだけど…?」

「す、…すみません…」

とトランクスが謝る。

トキトキ都にある武舞台でラディッツとトランクスをボコりながら一人ごちるモンテ。

「はぁ…はぁ…はぁ…ば、バケモノめ…」

肩で息をしながらラディッツが呟いた。

「せめて二人とも超サイヤ人2くらいには変身してもらわないと死んじゃうわね」

「ですが、悟飯さんも苦労して超サイヤ人2になったくらいですし。僕たちがなれるかどうか…」

そんな話をしているとモンテの視界に写るトランクスがぼやける。

「ん…?見間違い…」

「トランクス、お前、透けているぞっ!」

「見間違いじゃないっ!?」

ラディッツが言う様に体が透けているトランクス。

「こ、これは…!?」

急いで時の界王神さまの元へと向かうと、原因はトランクスの過去への改変でその存在が揺らいでいると言う事だった。

どうやら改変された歴史で人造人間に倒されてしまった為にトランクスの存在があやふやになってしまっているらしい。

あやふやな存在のまま自身の過去への介入などもってのほかと、この件にトランクスは関わる事が出来ず。

「わたしも行かないわ。お兄ちゃん行ってらっしゃい」

「なん…だと…?」

「どうしてですか、モンテさん」

とラディッツとトランクス。

「まぁちょっとね。良いから行く」

と無理やり巻物を持たせラディッツを送り出す。

「本当にどうしたの?」

と、トランクスが居なくなってから時の界王神さまが問いかけて来た。

「お兄ちゃんもトランクスとは打ち解けたようですから、トランクスのピンチなら覚醒しやすいかと思って。お兄ちゃんには誰かの為に必死になると言う経験が足りてませんから」

「なるほど。誰かを思いやれる心、ね。でも大丈夫かなぁ…彼、純粋なサイヤ人でしょ?」

「ですか、生来のよわむし根性はギネお母さんから引き継いだ愛情深い一面の現れですよ」

「そうかなぁ」

「そうですよ」

たぶん…そうであったらいいなぁ。

結果としてラディッツは超サイヤ人2に覚醒し、トランクスは生還。

そこでドミグラなる者と相対して来たと言う。

「ドミグラですって」

驚く時の界王神さま。

「誰?」

「さあ、分かりません。しかし僕たちは僕たちに出来る事をしましょう」

次は魔人ブウだとトランクス。

「ちょっとまて」

そうラディッツが言う。

「お兄ちゃん?」

「モンテよ。お前の暴虐も今日ここまでよっ!超サイヤ人2に覚醒した今となっては戦闘経験の差で俺様の方が強いっ!」

「ふっ…小指が薬指になった程度で何を言っているの?」

と鼻で笑ったモンテに切れたラディッツが襲い掛かる。

「うるせぇ、今までの恨みっ!」

ビリビリとスパークを纏って超サイヤ人になったラディッツが飛び掛かる。

「つぁっ!」

「ぐぉおっ!??」

ラディッツの拳が当たるより速く、モンテの拳がラディッツを吹き飛ばしした。

「ぶけらっ!?」

吹き飛ばされたラディッツは白目をむいていた。

「モンテさん…その変身は…?」

とトランクス。

「超サイヤ人3」

垂れ下げた髪の毛はその毛量を増し、モンテの気は力強さを増していた。

「まぁでもこれで次の修正もラディッツに任せておけば大丈夫でしょう」

「そ、そうですかね?」

若干トランクスが引いていた。

ブウ編の修正が終わるとミラとトワの影に隠れていた真の敵であるドミグラが襲撃して来た。

時の狭間に封印されているはずの彼が長い時間で力を溜め、本体の封印を破るべく時間を歪めているとの事。

「あー、ドミグラのやつ、なんて時代に目を付けているのよっ!」

ドミグラの襲撃の後ゆがめられた歴史に絶叫をあげる時の界王神さま。

「なんかイヤな予感がするんだけど」

とモンテ。

「しかし、魔人ブウも何とかしましたし流石にもうあれ以上の強敵は居ないんじゃ…」

「ばかね、トランクス。この時代にはねっ!破壊神ビルスさまが地球にやって来た時の事が収められているのっ!」

な、なんだってーっ!!

「破壊神?誰だソイツは」

「破壊神、ビルスさまっ!さ・まっ!」

すぐさまラディッツの発言を修正する時の界王神さま。

「で、でもその破壊神ビルスさまってそんなに強いんですか、ねぇモンテさん…モンテさん?」

キョロキョロと辺りを見渡すトランクス。

「まさか、モンテのやつ逃げ出したのか?」

とラディッツ。

「まさか、あれだけ強いモンテさんが逃げ出すなんて…」

しかしいくら探せどもモンテの姿は見当たらず。

「そりゃあ逃げ出すでしょうよ…彼女には少なからず因縁があるようだもの」

はぁ、とため息を吐く時の界王神さま。

「まぁ、今回も彼女の助力は諦めなさい。ううん、今回は彼女が行くとおそらく大変な事になるわ」

「そんなに?」

「なぜか一気に不安になって来たんだが…」

とラディッツ。

「ともかく、歴史の修正は頼んだわよ。精々死なないように…ううん、死んでも良いから破壊されないように気を付けてね」

「それって同じ事じゃ?」

「ち・が・う、のよ。いい、破壊されるくらいなら死になさい」

そう言った時の界王神さまはあきらめ気味にラディッツを送り出すのだった。


一方、逃げ出したモンテはトキトキ都を散策していた。

右手にはお気に入りのソフトクリームを片手に花壇に腰を掛けている。

「あー、ソフトクリーム、美味しい。いやぁ、ビルスさまが居る時間…神と神の時間軸なんて一度で十分」

まぁ…

「ビンゴダンスはもう一度見たかったかもだけどね」

ふふと思い出し笑いをするモンテ。

「ボクがなんだって?」

「うひぃっ!?」

後ろから掛けられた声にビクッと尻尾が逆立つモンテ。

恐る恐る声のした方を振り返る。

手にしたソフトクリームは地面に落ちていた。

「び…び…び……ビルス…さま?」

「ほう、ボクの事知っているんだ。君とは初対面のはずだけどなぁ」

「あはは……ど、どうしてここに…?」

「久しぶりの時の巣になんて来たから迷子になってしまってね。君、時の界王神の所まで案内してくれない?」

「は、はいー。かしこまりましたっ!」

こちらですっ!とモンテは丁寧な態度で刻蔵庫まで案内すると、そこにはトランクスとラディッツ、時の界王神さまとビルスの付き人であるウィスさんまで揃っていた。

「あら、ビルスさま。勝手に居なくなってはこまります」

とウィス。

「お前が急ブレーキ掛けたせいで落っこちてしまったんだろうが」

「あらー、そうでしたかねぇ」

オホホととぼけるウィスさん。

「び、ビルスさま、どうしてこちらに?」

時の界王神さまが前に出て下手に理由を聞いた。

「あのドミグラってヤツが最後に言っていた事が気になってね」

話を纏めるとドミグラがビルスさまを操ろうとちょっかいをかけに来たらしい。

もちろん、操られるほど破壊神の肩書は柔じゃない訳で、だが気に入らない事があったと原因を探りにラディッツ達に着いて来たと言う訳のようだ。

それとドミグラの事はムカつくから破壊してくれるらしい。

良かった。万事解決だーっ!

と喜んでいるモンテにトランクスが自分達が必ずドミグラを倒すを啖呵を切った。

「待てこらトランクス、てめー殆どなにもしてねーじゃねぇかっ!」

「え、ええ?そ、そうですかね?」

「おめーが何をしたよ、言ってみろやっ!」

「えっと…刻蔵庫の管理とか…あはは…」

「あははじゃねーっ!」

キレたモンテは二三発トランクスを殴りたかったが、ビルスさまの手前手が出ない。

「面白い事を言うねぇ。じゃあボクと戦ってみようか。多少でもボクを楽しませてくれたら考えてあげてもいいよ」

「わ、分かりました…ラディッツさん、頑張りましょう」

「お、…おう…」

「ばかーーーーっ!!ラディッツなんて腰が引けてるじゃんっ!」

もういいっ!

「わ、わたしは関係ないんでっ!」

そう言って逃げようとするモンテ。

「君は強制参加だよ。そのイヤリングが本物かどうか、知りたいしね」

ビルスさまの視線がモンテの左耳にあるイヤリングに向けられた。

急いで左耳を手で隠すが既に遅い。

「ひぃっ!!」

「ちょっとまったーーーー。ここで暴れられては困りますからっ!ここで戦われては時その物が壊れてしまいますっ!」

時の界王神さまっ!

そのまま説得してっ!

「で、ですので…適当な場所を提供しますわ。おほほ…おほほほ」

ちょおっとーーーっ!

「ウィスも参加な」

「ええ、わたくしもですか?」

仕方ないですねとウィスさん。

ウィスさんも参加とか、ただのムリゲーですからっ!!

ウィスさんにつかまってやって来たのは極力外界に影響が出ないであろう次元断層の下層付近。

「ふむ、ここなら確かに影響は少なそうだ」

とビルス様。

「絶対にボク達を認めさせてみせます。ね、ラディッツさん、モンテさん」

「お、…おう」

「こんのっ!不感症がっ!!」

モンテがワナワナと震えた。

神の気が感じられないトランクスは怖いもの知らずだ。

「それでは、はじめ」

ウィスさんの宣言で試合が開始される。

「はぁっ!」

「はっ!!」

トランクスは超サイヤ人フルパワー、ラディッツは超サイヤ人2へと変身。

「なんだ、超サイヤ人ゴッドじゃないのか。ウィス」

「仕方ありませんね」

ビルスさまの言葉で二人の相手はウィスさんがする事になったようだ。

必然ビルスさまの相手は自分になる訳で。

「行きますっ」



「行きますよっラディッツさんっ」

「もうどうにでもなれだっ!」

左右に挟む形でウィスへ攻撃を仕掛けるトランクスとラディッツ。

バシバシと空気を裂く音が聞こえる。

「はぁっ!」

「はあああっ!」

二人かかりでウィスを責めるトランクスとラディッツだが、幾ら攻めても有効打が与えられず。

「がっ」「ぐっ…」

逆にウィスの持つ杖で吹き飛ばされてしまう。

「中々鍛えられてますね。特にラディッツさんは良い師に恵まれたようで」

「師などと良いものじゃ無いがな」

これでどうだとばかりに気功波を飛ばすラディッツ。

「おっと」

次の瞬間ウィスはラディッツの背後に回り込んでいた。

「くっ…」

その動きにラディッツはギリギリ反応するが、攻撃は回避できなそうだ。

「はぁっ!」

そこにトランクスの気功波がかすめる。

「あら」

バシと杖を振り気功波を弾くウィス。

「オラッ!」

「はっ、たっ」

すかさず繰り出すラディッツの右拳をひらりとウィスは避け、そこに追随するように迫ったトランクスの拳も空を切った。

「つ、強いです…僕達の全力がまるで赤子のようだ…」

とトランクス。

「強さの次元が違う…」

とラディッツ。

「そうですね。あなた達はまだまだこれからと言った所ですか。ですので」

と杖を下ろすウィス。

「今日の所は見て学ぶと言う事で」

「は?」

「ほら、ビルスさまとモンテさんでしたっけ?彼女の方も始まりますよ」

スススとウィスは二人に近付くとモンテ達の戦いを見るように促した。

ラディッツとトランクスは変身を解いてモンテを見ると今まさに二人の戦いが始まろうとしていた。


「気が…」

感じられなくなったと呟くトランクス。

「あらまぁ」

そう感嘆の声を出すウィス。

「超サイヤ人ゴッド…」

とラディッツ。

モンテの髪が紅く染まっていた。

「ほう、面白いじゃないの。あれだけ探すのに苦労したと言うのに、こんな所にも変身出来るやつが居るとはね」

「行きますっ!」

次の瞬間、モンテは空気を置き去りにしたようにビルスに迫る。

拳圧が空気を震わせる。

「少しは骨が有りそうじゃない」

ビルスがモンテと打ち合う。

「けど、こんなものじゃ面白くないね。超サイヤ人ゴッドとはさっき遊んできたしね」

「くっ…」

振りぬかれたビルスの拳にモンテは後ろに下がった。

「つぁっ!」

気合を入れなおしたモンテの毛は逆立ちその色を青く染めた。

「なんだ、あの変身はっ…」

「あんな変身、見た事ありませんよっ!」

「さしずめ超サイヤ人ゴッド超サイヤ人とでも言いましょうかねぇ」

「ウィスさーん、長いんで超サイヤ人ブルーでお願いします」

聞こえていたらしいモンテから修正が入る。

「へぇ、器用なものだねぇ」

再開されるモンテとビルスの組手。

「はぁっ!」

地面を蹴るとその威力に砕けるように捲り上がった。

「中々やるようになったね、これなら力の半分くらいは出せそうだ」

「くっ…」

拳はビルスに届くようになったがそれでもビルスにダメージらしいダメージは与えられていない。

ドンとビルスの尻尾に弾き飛ばされて距離が開く。

「面白いけど、そう言う事じゃ無いんだよね」

「と、言いますと?」

「そのイヤリングをどうして君が付けているの」

「あはは」

笑って誤魔化したいモンテ。

「イヤリング?」

とトランクスは回答を得ようとウィスを見た。

「イヤリングがどうしたと言うのだ」

ラディッツは余り気にしていないのかもしれない。

「あのイヤリングは破壊のエネルギーを使える者の証ですからね。ほらビルスさまもしているでしょう」

「ほ、本当だ…」

「な、それじゃあモンテは…」

トランクスとラディッツの呟きは聞こえていたのかは分からないが、モンテは苦い顔をすると変身を解いた。

「あのー…この辺りで終了と言う訳には…」

「いくと思う?」

「思いません…」

とほほと肩を落とすモンテ。

そして何かを悟ったように再び真剣な面持ちになる。

「中途半端じゃ納得してくれなそうだから…ね」

仕方ないと気を集め始めた。

「はぁーーーーーっ!」

筋肉が盛り上がり髪は紫に染まり逆立つ。

「ほう…」

ビルスから余裕の表情が消え、鋭い目つきに変わった。

「それは?」

「我儘(わがまま)の極意です」

「大層な名前だけど、どの程度強くなったか」

「行きます…」

ドンと加速するモンテ。

繰り出す右手はしかしビルスには当たらず、カウンターを貰い苦痛に表情が歪む。

「くっ…」

「おや?」

しかしそれを気合で押しのけ繰り出すモンテの攻撃。

「いいねぇ、面白くなってきたよ。でも防御が少し雑じゃないか?」

「たぁっ!やぁっ!く…」

「む?」

ビルスの攻撃を受けつつ放つモンテの攻撃。

それを受けたビルスの表情が険しくなり受けた腕に視線を向けた。

「やるじゃないか」

ドンッドンッと空気を震わせて繰り出される激突。

三発ビルスを攻撃を受け、どうにか当たる様になってきたモンテの攻撃。

「モンテさんが盛り返している?」

「どう言う事だ?あの力はいったい…」

「我儘の極意とはよく言ったものですねぇ。本能のままの力には上限がありませんから」

「上限が無い?」

「ええ、その証拠に、ほら」

そうラディッツの言葉にウィスが返したその先で、モンテの攻撃で怯むビルスの姿があった。

「いいねぇ、でもこれならどう?」

そう言って振り上げた手の先から振り下ろされる巨大な破壊のエネルギーの塊。

「はぁーーーっ!」

モンテの放つ同規模の破壊玉がビルスのそれを相殺した。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「ほんと、君には驚かされるねぇ」

でもとビルスさま。

「そろそろ限界のようだねぇ」

「はぁ…はぁ…」

ダメージの蓄積でモンテは苦しそうに息を吐いている。

しかし、極限がモンテの力を更に昇華させていく。

「ふぅ…」

パンプアップしていた筋肉は無駄のないように洗練されしなやかさと強靭さを持つ肢体へと変化し、高ぶった神の気は堰を切られるのを待っているよう。

「はい、そこまで」

ウィスの言葉に正気に戻ったモンテが黒髪に戻った。

「ウィスさん?」

「おい、ウィス、邪魔をするな」

「ビルスさま、これ以上は世界の崩壊を招きかねません。それに」

とウィス。

「破壊神同士の本気の戦いは禁止されてますからねぇ」

それはビルスさまもお分かりでしょう、と。

「ち、興が覚めた。帰るぞ、ウィス」

「ほっ…」

ビルスさまからも気勢を殺がれたかのように態度が緩んだのをみてモンテは安堵する。

「はい、ビルスさま。みなさんもお疲れさまでした」

ウィスの宣言でこのモンテにとっては不毛な戦いは幕を下ろした。

ビルスさまが満足した為、ドミグラの対処は任せてもらえる事になったようだ。

任せてもらわなくてもいいと思っていたモンテはトランクスが満足気に頷いていたのでとりあえず殴って置いた。

最大の危機を乗り越えたモンテ。

こうして歴史の修正は無事完了した。

ドミグラ?

歴史の修正と言う手加減が必要ないのなら相手になりませんが?




モンテは今地球での居候先である悟飯くんの家の前に居る。

「な、なぁ…やっぱりオレは帰るぜ。今更どんな顔をして会えって言うんだ」

とモンテの隣にいるラディッツが挙動不審気味に呟いた。

「さあ?」

「ひどいな、妹のくせに」

「肝っ玉が小さい」

「う、うるさいっ!」

「いくらサイヤ人とは言え、親孝行くらいするものよ。お兄ちゃん」

この扉を潜れば何も知らない母さんが待ってる。

「いきなり生きていたと言って誤魔化して大丈夫なのか?」

「大丈夫。なんて言ったってこの世界にはドラゴンボールが有るんだから」

 
 

 
後書き
急ぎ足で無理やり終わらせたような話で申し訳ありません。
半分ほど書いて放置していたものを年末と言う事で急きょ形にした感じです。
と言いますか、書きたかったのはナメック星くらいまでで、後半のパワーインフレは物語としても書くのが厳しかったです。
テーマを上げるなら、ラディッツって可哀そうだから何とかならないかなぁと言う感じですかね。

半端な作品になってしまいましたが楽しんでもらえたのなら幸いです。
 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧