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ハッピークローバー

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第四十六話 海を前にしてその五

「男の人をスカウトする」
「そうした人でもあったんですね」
「しかも陽気で気さくで飾らない」
 そうした人間だったというのだ。
「楽天家で偏見もなくそれでいて有能極まる」
「何か漫画の主人公みたいですね」
 一華はここまで聞いてこう思った。
「それだと」
「そうよね、痛快な人だったのよ」
「そうですか」
「明治の日本を創り上げて」
 それと共にというのだ。
「そんな人だったから」
「痛快だったんですね」
「私は好きよ」 
 店長は一華に笑って述べた。
「だから若し今いたら」
「お付き合いしてました?」
「そうかもね、お顔は兎も角として」
「お髭のお爺さんですか」
「ああ、あの頃は皆生やしていたから」
 髭をというのだ。
「明治の総理大臣で生やしてないの大隈さんと西園寺さんだけよ」
「お二人だけですか」
「天皇陛下も生やしておられたでしょ」
「そうでしたね」
 一華も言われて頷いた。
「明治帝も」
「大正帝もでね」
「昭和帝もでしたね」
「あの頃はそれが普通だったから」
 髭を生やすことがというのだ。
「十九世紀って結構寒かったらしいから」
「お髭を生やしてですね」
「寒くない様にしていたらしいわ」
「そうだったんですね」
「あとファッションでね」
 その意味もあってというのだ。
「生やしていたのよ」
「それで伊藤さんもですか」
「生やしていたのよ」
「そうだったんですね」
「けれど今はあまり生やしてないでしょ」
「顎鬚や口髭をちょっと位ですね」
 富美子は巷で見るファッションから述べた。
「野球選手でも多いですね」
「ソフトバンクの千賀さんとかね」
「あの人も生やしてますね」
「けれど今はそんな感じで生やしていない人の方が多いから」
 そうした状況でというのだ。
「伊藤さんもよ」
「生やしておられないですか」
「私お髭苦手だけれどね」
 店長はこのことも話した。
「けれどね」
「それでもですか」
「伊藤さんもお髭がなかったら」
 それならというのだ。
「いいししかもお顔よりもね」
「性格ですか」
「そこが好きだから」
「痛快だからですか」
「今おられたら」
 それならというのだ。
「彼女に立候補したいわ」
「奥さんには」
「いいわね、絶対に面白いわよ」
「浮気しそうでも」
「まあそれはね、けれど今なら風俗通いよね」
 伊藤博文の女遊びはというのだ。
「それは私はね」
「いいですか」
「まだね、ただキャバクラとかでお金貢ぐのは」
 これはというと。 
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