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第四十六話 海を前にしてその一

                第四十六話  海を前にして
 五人はアルバイトと部活それに宿題の日々に入っていた、五人共今年の夏休みはそれで終わると思っていたが。
 店長はその五人に店の中で聞いてきた。
「あんた達付き合ってる人いるでしょ」
「いる?じゃないんですか?」
「そういうのわかるのよ」
 店長は一華に笑って返した。
「雰囲気でね」
「そうなんですか」
「フェロモンが出てるのよ」
 こう言うのだった。
「そうした娘ってね」
「出てるんですか」
「物腰にもね、いたらね」
 そうした相手がというのだ。
「自然とよ、言わなくてもね」
「出てるんですか」
「そうよ、五人共いるわね。ただ」
 ここでだ、店長は。 
 すっと前に出て右手の人差し指で五人の鼻の頭をそれぞれ縦に軽く撫でた、そうしてからにっと笑って言った。
「セックスはしてないわね」
「セ、セセセセックスって」
「はい、答え合わせ完了」
 真っ赤になって慌てる一華を観てまた言った、他の四人も恥ずかしそうにしている。
「していたらね」
「それもわかるんですか」
「経験していたらお鼻の先が割れてるのよ」
「そうなんですか」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「態度にもね」
「出るんですか」
「そうよ、もう経験したっていうね」
 まさにそうした行為をというのだ。
「余裕がよ」
「出て来るんですか」
「そうよ、特にあんた何も経験ないでしょ」
 一華を観て言った。
「手をつないだことも」
「それ位はあります」
 眉を八の字にさせて口を尖らせて反論した。
「私も」
「また答え合わせ出来たわね、兎に角ね」
「こうしたことはですか」
「そう、付き合ってるとかね」
 相手がいてというのだ。
「出るのよ、どうしても」
「そうなんですね」
「そうしたフェロモンが出るのよ」
「彼氏がいたら」
「自然とね、満ち足りてますってね」
 そうしたというのだ。
「そうしたよ、それで相手がいないとね」
「その場合はどうなんですか?」
「相手を求めるフェロモンが出るのよ」
「そちらでも出るんですか」
「そうよ、どっちにしろフェロモンは出るけれど」
 それでもというのだ。
「感じが違うのよ」
「フェロモンのそれが」
「それでオーラもね」
 店長は今度はこちらの話をした。
「違うのよ」
「彼氏がいたら」
「そちらもね、失恋した直後なんてね」
 その場合はというと。
「もう沈んでいて」
「それで、ですか」
「どん底のね」 
「オーラですか」
「真っ黒なね」
「オーラって色あるんですか」
「あるわよ、一番凄いのは親しい人が亡くなろうとするか」
 若しくはというのだ。 
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