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婚礼の木

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第二章

「仕置きを与えます」
「それでは」
「今は落ち着きましょう」
 こめかみをひくひくとさせながらも言った。
「チーズとパンそれにです」
「ワインですね」
 イリスが言って来た。
「その三つですね」
「それを飲みます、ワインはミルクで割って」
「ミルクを飲んでも落ち着くので」
「それで割ってです」
「飲まれますね」
「まずはそうします」
 こう言ってだった。
 ヘラはまずはミルクで割ったワインをしこたま飲んだ、それで酔い潰れてだった。
 二日酔いになったがそれを湯浴みで解消した時にまた報が来た。
「花嫁衣裳を着た娘がですか」
「ゼウス様の宮殿に向かっています」
 先に知らせたのとはまた別の従神が言ってきた。
「今しがた」
「そうなのですか」
「牛に牽かれた車に乗り」
「わかりました、すぐに向かいます」
 ヘラはキッとした顔になり答えた。
「そしてです」
「プラタイア殿にですか」
「私自らの手で仕置きを与えます、行きますよ」 
 宮殿にいる従神達にも言ってだった。
 ヘラは怒って宮殿を後にした。その最中だった。
 彼女とその一行を見たオリンポスの誰もが蒼白になって話した。
「これは大変だぞ」
「修羅場になるぞ」
「ヘラ様は大層お怒りだ」
「そうなるぞ」
「今のヘラ様に近寄るな」
「巻き込まれるぞ」 
 皆こう言って距離を開けた、道もそうしてだった。
 ヘラはゼウスの宮殿の前で牛に牽かれた車を見た、その車にはだった。
「いますね」
「はい、花嫁衣装を着ています」
「ヴェールまで」
「では間違いないですね」
「あの車に乗っているのは」
「プラタイア殿です、では行きます」 
 自らこう言ってだった。
 ヘラは車に飛び乗った、その動きはまさに風の様だった。
 そしてすぐに前から花嫁のヴェールを引き剝がしそこから思い切りひっぱたこうとしたが。
 右手を振り上げた姿勢でだ、花嫁を見て言った。
「これは」
「彫刻ですね」
「女性のシルエットの」
「それですね」
「オークの木ですね」
「これは」
「そうですか、わかりました」 
 ここでヘラははっとして言った。
「してやられました」
「といいますと」
「どういうことですか」
「してやられたとは」
「実はあの方は最初から私と結婚するつもりです」
 ゼウスはというのだ。 
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