魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第二百七十二話
デフォールド後キャノピーから飛び降りた箒と奏によって俺はトレイターに収容された。
今は上裸でトレイターの艦長席横に置かれたストレッチャーの上だ。
「そんな顔しないでよ。今回は油断しただけだって」
応急的に皮膚だけ修復し外見を見繕った胸部を見せる。
艦長席を90度回してこっちを見ている束さん。
ストレッチャーの横で切羽詰まった顔をしている箒。
二人の格好はそれぞれの眷属を憑依させた姿だ。
箒は金髪に染まった髪、ピンと立った狐耳、4本の尻尾、全身を覆うムーバルスーツとアウターアーマー。
束さんは普段より一回りか二回り大柄になり、その頭部には真っすぐだったり捩じれた利している偶蹄類の角。
二人とも完全に戦闘態勢である。
かなり心配させてしまったようだ。
束さんがホロウィンドウを数回叩くと、俺の状況が表示される。
俺のバイタルデータをモニタリングしている物だ。
ワイヤーフレームの簡易CGでは胸に穴が開いているし、鏡文字の注釈には俺に今心臓がない事がはっきりと書かれていた。
「空っぽの胸で喋るな。ばか」
と箒が言った。
肺や気道も治ったが心臓と骨の治りが遅い。
心臓は吸血鬼のパワーソースである。
奴の龍のオーラを纏った攻撃を別にしても、心臓を破壊されれば吸血鬼は大幅に弱体化するし、パワーソース無しで最も重要な心臓を修復するのは簡単ではない。
デストピアの直系でなかったらたぶん死んでいただろう。
俺が今こうして生きているのは高位の吸血鬼だからだ。
だから、俺の体は今はもう心配いらないのである。
「束さん。とりあえず事後処理だけするよ。制御権こっちに」
今すべきは証拠隠滅とか、ここからの離脱とかだ。
この状況を監視衛星や人に見られたり撮られたら面倒だ。
衛星はハックできるとはいえ人の記憶は消せない。
「あとでお説教だからね」
そう言いながら束さんはホロウィンドウをフリックしてこちらに回す。
「掘削弾にディメンジョンイーターセット。規模、5km。転送先、アステロイドベルト」
トレイターの魚雷発射管にディメンジョンイーターを搭載した掘削弾が装填される。
これは有効範囲内の空間をフォールドさせる爆弾だ。
今回は単なるフォールド。
タイムクリスタル奪取阻止のために宇宙に放り出す。
アステロイドベルトなら後で必要になったとき容易に回収可能だ。
「ディメンジョンイーター。発射」
射出されたドリルミサイルは姿勢制御しながら地面に落ちていく。
「圧切、起動」
ドリルミサイルの切っ先に圧切をまとわせる。
先端に斥力フィールドを纏ったドリルがその鋭さと自重で深々と突き刺さる。
突き刺さったドリルミサイルが地中を掘り進む。
「これでよし。フォールドで離れよう」
「トレイターフォールド用意」
束さんのコールでトレイターがフォールド態勢にはいる。
F4EJ改も無人操縦でフォールド態勢だ。
「フォールド!」
超空間ゲートが展開される。
行き先は神社の地底湖につながる海域だ。
超空間ゲート内ではイデアへ接続していても位置情報が得られない。
いや、得られはするが意味が理解できない。
超超短距離フォールドなので超空間に滞在するのは十秒ほどだった。
ゲートから出ると自分の位置が一瞬にして移動したことをイデアからの情報で感知する。
虚無である超空間から物質で充満した海中に入ったことで少し船が揺れた。
『外部ネットへ再接続。時空間補正開始。完了』
超空間と通常空間での時間差が補正される。
メティスサイトの知覚を先程までいた場所に向ける。
ちょうどドリルミサイルが地中を数キロ進みタイムクリスタル鉱床のド真ん中に到達したことを確認する。
「ディメンジョンイーター作動」
ルクーゼンブルグに置いてきた物を作動させる。
タイムクリスタル鉱床を含む一帯が宇宙のどこかと入れ替わる。
「あ、やっべ」
真空が現れたということはそこに空気が流れ込むということだ。
空気が超高速で流れ込み木々をこする。
シュボッと火が上がる。
急いでいて失念してたわ。
「ごめんちょっと戻って消k」
体を起こそうとしたところ、ストレッチャーの横にいた箒に抑えられた。
肩をつかんでぐっとストレッチャーに押し付けられる。
「それは私がやるから。お前は寝ていろ。いいな?」
と真剣な瞳で強く言われた。
「わかったよ」
「姉さん。一夏が動かないようちゃんと見ていてくれ」
「もちろんだよ〜。トレイター急速浮上。光学迷彩展開」
光学迷彩を起動し、トレイターとF4EJ改が浮上する。
甲板に出た箒は飛行術式で隣に浮いていたF4EJ改に飛び乗る。
マーベルヒーローみたいな事してんな。
その後はフォールドし、また5分後にフォールドで戻ってきた。
やたら早いと思ったがどうやらF4EJ改のフォールドクォーツでブーストした魔法で消化したようだ。
それに短距離だったこともあり短時間の連続フォールドもかのうだったようだ。
......一応フォールドシステムのセーフティはあるから、フォールドできてるなら問題ないのだろう。
ブリッジの正面モニタに箒の顔が写る。
『消火完了したぞ』
「ごくろうさん」
神社地下の港湾基地へ向かいつつあるトレイターの横にピッタリとはりつくF4EJ改。
先にF4EJ改が地下港に入り、トレイターが追う。
「いっくん。私はもう少しやることがあるから、カンへリアに戻るよ。あの戦闘機光学迷彩あったよね?」
「あるよ。ステルスも万全」
「じゃ、借りていくね」
そう言って艦長席を立った束さんは俺の唇にキスをしてブリッジから出ていった。
帰りはF4EJ改を使うのだろう。
しかし短距離とはいえ、セーフティが作動してないとはいえ、3連続フォールドをかましたF4EJ改で帰るのは少し不安ではある。
うち一回はトレイターのフォールドに便乗したとはいえ超空間はまだ未知が多いのだ。
とはいえトレイターも3連続フォールドをしているので使うとすれば帰りは海路だ。
トレイターにはフォールド技術の応用で船体表面に次元の膜を貼り超高速巡航を可能とするディメンジョンマスカーがあるとはいえかなりかかる。
喜望峰ルートで数時間だ。
それを考えるとF4EJ改で帰った方が早そうではある。
束さんが出ていってしばらくすると箒が戻ってきた。
「お疲れ様」
「この程度どうと言うことは無い」
「ふふ、キロ単位の山火事を数分で鎮火しておいて大したことないとは。順調に人外になっててうれしいよ」
冗談めかして言うと箒少しうれしそうに、照れくさそうにした。
「さて、それでは帰ろうか。一夏」
「ああ、今何時だ?」
「昼過ぎだな。家で食べて行け」
と言って指を上に向ける。
つまり箒の家、神社だ。
「学校どうしよう」
「今日はサボれ」
「っていうかお前学校は?途中で抜けたの?」
「もちろんそうだが?」
「すまん」
「気にするな」
箒がストレッチャーの取手を握る。
「今日一日きっちり休め。明日色々やるのは臥煙さんから聞いている」
「はいはい」
なんとか、一日以内に戻ってこれた。
明日の決着を、見届けることはできそうだ。
後書き
違うんすよ。研究してたんすよ。3Dプリンターで遊んでたわけじゃないんですよ。
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