豪邸の苦労
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第一章
豪邸の苦労
若生家は市内でも有名な資産家であり豪邸である、だがその豪邸は今深刻な問題に直面していてだった。
家の主の義直、着物と袴が似合う白髪で面長の顔の彼は言った。
「建て替えるしかないな」
「ええと、築どれだけだったかな」
息子で跡継ぎの洋一が尋ねた、眼鏡をかけて豊かな量の黒髪を短くしていて真ん中で分けている。面長で穏やかな顔の長身の青年だ。不動産だの農業だのテナントだのをやっている家の仕事をしている。
「うちって」
「戦争の時に焼けてな」
「それで建て直してかな」
「ああ、だからな」
「七十年以上なんだ」
「耐震とかの問題もある」
「もう建て替えないと駄目なんだ」
「実際あちこち限界がきている」
そうなっているというのだ。
「それでだ」
「建て直すんだね」
「全部な」
「そうするんだ」
「建て直す間の家も見付けた」
そちらもというのだ。
「昔市長さんが住んでいた家だ」
「今の市長さんかな」
「そこを借りてな」
そしてというのだ。
「建て直す、ただな」
「お金かかるね」
「ああ、だがその分はあるからな」
「いいんだ」
「相続税だの何だのの分もな」
それもというのだ。
「あるしな」
「けれど何かと」
「家が大きいとな」
「問題あるんだね」
「敷地は変わらないんだ」
その面積はというのだ。
「庭も作り替えるが庭の面積はそのままでな」
「家のそれもなんだ」
「そのままだ、だがもうな」
義直は洋一に話した。
「倉庫はあってもな」
「蔵はだね」
「作らないしな」
昔と違ってというのだ。
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