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とある3年4組の卑怯者

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94 遭遇(はちあわせ)

 
前書き
 和島俊の登場で大会が突破できるか不安になってしまった藤木は堀に相談する。そして彼女と共にスケートし、励まされた藤木は堀から彼女の家の昼食に招待されたのだった!! 

 
 笹山は藤木に一緒にいた女子は誰なのか聞いてみようと考えた。そして、もしかしたら今日もスケート場にいるのかと思い、スケート場の方角へ向かった。

 食後、藤木は帰る事にした。藤木にとって初めて通った道だと思って迷うかもしれないという事で堀が途中まで送る事になった。
「堀さん、今日は本当にありがとう」
「いいのよ、私も藤木君と色々楽しめたし。練習続きで疲れてるみたいだったからこう休憩みたいな事させてあげようかなとも思ってね」
「でも、御飯までご馳走になるなんてすごいサービスだったよ」
「え?そ、そうかな・・・?」
 堀は照れた。その時、だった。二人の時間をそこで終わらせるように、ある声が藤木を呼んだ。
「藤木君!」
 藤木と堀は声のした方向を向いた。
「さ、笹山さん!?」
 笹山が立っていた。
「藤木君、私に嫌われたからって他の女の子と仲良くして!その子は誰なの!?」
「う、その・・・」
 藤木は戸惑った。
「藤木君、その子は・・・?」
 堀が聞いた。
「僕の学校のクラスメイトだよ・・・」
 藤木はまず堀の質問に答えた。笹山ははあはあと息を切らしながら近づいてくる。恐らく走ってきたのだろう。
「藤木君、ねえ!」
「た、ただスケート場で知り合っただけだよ!」
「それで、そんなに仲良くなったの!?」
「う・・・、でも、そんな事君に関係あるのかい!?君は僕を振ったじゃないか!」
「そ、それはそうだけど・・・!」
「じゃあ、別にどうでもいいじゃないか!僕も君を忘れようと努力してるのに!」
「え・・・!?」
 その時、堀が二人の間に割ってはいる。
「ちょっと、二人とも落ち着いてよ!」
「何よ、貴方は分かってるの!?この人は不幸の手紙を出したのよ!それに言いたい事も怖くて言えないから藤木君は皆から卑怯者って呼ばれているのよ!!」
 笹山は怒りの矛先を堀に向けた。
「知ってるわよ。藤木君、私に話してくれたわ」
「じゃあ、どうして藤木君と平気で仲良くしてるの!?」
「それは、藤木君がその事で皆に責められて可哀想だったからよ!」
「可哀想なわけないじゃない!こんな不幸の手紙を送る人なんか!!」
「じゃあ、藤木君は面白がって不幸の手紙を出したって言いたいの!?」
 堀は藤木を悪く言う笹山に我慢ができず、怒鳴り返した。
「・・・え?」
「藤木君は自分の所に手紙が来て怖くなったから慌てて出しちゃったのよ!確かにそれを誰にも相談しなかった藤木君も悪いけど、藤木君はその事を今は後悔しているわよ。いつまでその事で藤木君を責めるつもりなの!?」
「それはその・・・、でも、藤木君は私が好きだったのよ!」
「でも嫌ったんでしょ!?なのにどうしてそこまで藤木君を妬むの!?嫌ったならほっとけばいいじゃない!!」
「う・・・」
 笹山は反論できなかった。嫌ったなら遠ざかればいいのに逆に気になって捜査して、その結果、嫉妬するなど理不尽だ。なぜそのような行動に出たのか、笹山は自分を顧みた。
「それに貴方の学校では藤木君を責めてばかりいるようだけど、藤木君をそうさせたのは藤木君に手紙を送った人がいたからでしょ!?ならその人を探さなきゃ解決しないじゃない!!」
 堀の言う事は確かに間違ってはいなかった。確かに藤木は自分の所に手紙が届いたと言った。しかし、相談しなかった事で振って、それで終わりなんて藤木に確かに悪い。その上嫌ったにも関わらずその後の藤木の行動を調べるという事は・・・。
「そうよね・・・、おかしいわよね。誰が送ったのか誰も考えないなんて・・・」
「それに貴方は藤木君を一度嫌った。でもそれでも気になるって事はやっぱり藤木君が心配なんじゃないの?」
 笹山はそうかもしれないと思った。藤木が余計気になるという事はもしかして自分は・・・。
「うん、そうだったわね・・・、二人共、ごめんね・・・」
 笹山はその場で泣きながら謝った。そして恥ずかしくなり、その場から離れた。
「笹山さん!!」
 藤木は笹山を呼び止めたが、笹山はそのまま去ってしまった。
「藤木君、今はあの子も気持ちを整理させてあげた方がいいわよ」
 堀は藤木を止めた。
「うん、そうだね、あ、堀さん、僕のせいでこんな迷惑な事に巻き込んでごめんよ・・・」
 藤木はせっかくの楽しい一時を台無しにしてしまった気がして罪悪感を感じた。
「いいのよ、私藤木君のために何かしてあげたかったし、あの手紙どうすれば解決してもらえるかなって思ってたの。あれであの子が分かってくれればいいんだけど・・・」
「大丈夫だよ。笹山さんは本当は君みたいに優しいから分かってくれるよ」
「そう、あの、藤木君、あの笹山さんって子好きだったの?」
 藤木はもしかしたら堀に女たらしとでも思われて嫌われるかもしれないと嫌な予感がした。
「うん、前はね・・・。でも、もういいんだ・・・」
「そう、でも本心では藤木君を心配してると思うわ。また好きになれなくても仲直りできるといいわね」
「堀さん・・・、ありがとう」
「それじゃ、また会おうね」
「うん、じゃあね・・・」
 藤木は堀と別れた。堀は本当に自分を立ち直らせてくれようとしている。しかし、もし自分が笹山やリリィをまた好きになるようなら、堀はどうするのか。それがまた悩みでもあった。

 笹山は堀の言葉で自分勝手な事をしていた事を思い出した。藤木をそれだけ気になったという事は本心では不幸の手紙事件で藤木が心配だったのだ。
(藤木君、ごめんね、私もやっぱり卑怯な事してるわよね・・・) 
 

 
後書き
次回:「調整」
 大会に向けて日々練習を続ける藤木。大会への日は一刻と迫り続ける中、上手く調整しようとする。そして不幸の手紙の事も気にならなくなった人物も出始め・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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