イベリス
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第七十八話 夏バテも考えてその八
「舞姫の元のお話といい子供さんのお名前といい」
「色々あるわね」
「頭はよくて抜群の教養はあっても」
「いい人じゃなかったでしょ」
「何かチートよチートって目きらきらさせてる文学女子の人いるけれど」
鴎外の経歴だけを見てだ。
「人間として見たらね」
「愕然とするわね」
「そんな文学女子になりたくないし」
咲は憮然として言い切った、咲も素麺を食べ終えて残った野菜を食べている。もうそれはサラダと言っていい状況だった。
「脚気のこともね」
「頭に入れてるのね」
「そうしてるからね」
だからだというのだ。
「私もちゃんと食べるわ」
「そうしなさいね」
「炭水化物だけだと栄養バランスが悪い」
「そうよ」
まさにというのだ。
「だからお野菜もね」
「ちゃんと食べて」
「お豆腐や牛乳も」
冷たいので夏は食べやすいものをというのだ。
「食べなさいね」
「そうするわ」
咲は確かな声で答えた。
「そうするわ」
「そうしてね、じゃあ冷奴も食べて」
「牛乳飲んでね」
「行って来るのよ」
「そうするわね」
咲は母の言葉に頷いた、そうしてだった。
食事の後で電車で外に出て東京のこれはという部分を観に行った、そうしてから家に帰るとすぐにだった。
玄関で母を見てだ、こう尋ねた。
「何処行くの?」
「何処って今帰ってきたところよ」
母は娘にあっさりとした口調で答えた。
「モコのお散歩からね」
「ああ、そういえばそんな時間ね」
「夕方でしょ」
「そうね」
咲もそれはと答えた。
「だからよね」
「涼しくなってからね」
そうなってからというのだ。
「お散歩に行かないとね」
「犬によくないからね」
「犬は頭が人間より地面に近いでしょ」
「アスファルトにね」
「だからよ」
それでというのだ。
「余計に暑さが来るからね」
「それで熱くなるから」
「お昼とかに行ったらね」
夏の暑い時にというのだ。
「脳梗塞にもなるわよ」
「犬って毛皮着てる様なものだしね」
「夏は毛を刈ってもね」
例えそうしてもというのだ。
「暑いし足の裏から直接熱も来るし」
「アスファルトのね」
「しかも人間は身体全体で汗をかけるでしょ」
「犬は舌からだけね」
「その分身体も冷えないのよ」
汗を出して身体を冷やすことも出来ないというのだ。
「だからね」
「出来るだけなのね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「お散歩をしてもね」
「涼しい時にしないと駄目ね」
「犬は寒さには強いけれど」
毛がありそれに体温も高い、元々寒冷地に棲息していることが多い狼を家畜化した生きものということもあるかも知れない。
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