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星河の覇皇

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第八十二部第五章 撤退する者達の焦りその十九

「あの様に出来るか」
「そのことはですね」
「閣下も自信がないですか」
「それは我々もです」
「あそこまで出来るものか」
「人間は」
「人は本能として」
 このことからというのだ。
「自分の命を考えますね」
「最初に」
「何といってもですね」
「まず自分ですね」
「自分の命がどうか」
「安全を考えますね」
「第一に」
「生存本能があります」
 これがというのだ。
「ですから」
「それに従う」
「それも無意識に」
「だから生きようとしますし」
「広瀬中佐やあの方々の様に出来るか」
「それは」
「このうえなく難しいです」
 こう言うのだった。
「誰にとっても」
「そして大抵はですね」
「命を大事にして」
「逃げたりもする」
「そうしてしまいますね」
「本能を抑えることは難しいものです」
 八条は冷静な顔で述べた。
「それは咄嗟に出たりもします」
「そうですね、いざという時に」
「助かろうと思う」
「咄嗟にでも動いてしまいますね」
「言葉に出したりもします」
「それが人間です」
「ですから広瀬中佐は立派で」
 命が危うい時に部下を探しに行って散華したこの人もというのだ、だからこそ軍神にもなったのだ。
「あの方々もです」
「特に艇長ですね」
「あの人ですね」
「死の間際まで己の責務を全うした」
「それも冷静に」
「各員持ち場を離れず」
「逃げようとしませんでした」
 周りの者達も口々に話した。
「ああした場合は出入り口に殺到しますが」
「そして死んでいるものですが」
「それでもですね」
「あの人達は違いましたね」
「死ぬ時まで、です」
「持ち場を離れず」
「己の責務を全うし」
「後世に伝えるべきものを残してくれました」
 文章にまでしてだ。
「何と素晴らしいことか」
「日本軍人の心そこにありというか」
「滅多に出来ないですね」
「そうしたことは」
「私もそう思います、誇りです」
 八条は穏やかな声で話した。
「日本、そして連合の」
「連合にとってもですね」
「我等連合軍にとっても」
「このことは誉れであり」
「学んでいくことですね」
「そう思います、日本は連合の中にあります」
 そのうちの一国であるのだ。
「ならです」
「このお話は連合のお話になりますね」
「そして連合軍のことにも」
「広瀬中佐にしてもですね」
「あの方についても」
「そう思います、連合軍は市民を守る軍隊です」
 市民の軍隊でありだ。 
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