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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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やっぱり僕は歌が好き 第十一楽章「性格の悪さが売り」

(グランバニア城:国王執務室)
アイリーンSIDE

「さて、文部魔法学大臣(ストゥディオ)が来たら日程調整をやりましょう。各学長への通達はやっておくので、リュカさんは……おっと違った(笑) プーサンは心置きなく学生等の依頼を遂行して下さい」
人を苛立たせてる時のコイツは素晴らしく爽やかな青年に見える。

「あ、そうだジョディー。お前は今すぐに王妃陛下を呼んできてくれ!」
「は~い、直ぐ呼んで参りま~す♥」
何で王妃陛下を呼ぶの!? ……そんな疑問を口に出す前に、メイドは颯爽と出て行ってしまった。凄く楽しそうだわ。

「おい、僕の奥さんを客寄せパンダに使うの止めてくんない」
「何を言ってるんですか(笑) 折角の晴れ舞台ですよ、未来へ羽ばたく学生達に女神(王妃)からありがたいお言葉を賜らせようと考えてるんですよ」

「ビアンカはそう言うの嫌がるよ」
「それが何か? 俺に関係あるんですか??」
この男は如何(どう)言う精神構造をしてるんだ?

「そんなんだから変な委員会発足されるんだよ」
「羨ましいだろぅ!」
ホント性格が悪いな!

「そんな事よりリュカさん。卒業式がらみの事は芸高校(芸術高等学校)で行えば良いですけど、ピエッサさんにポップスミュージックを教えるんでしょ? そんな事はグランバニア城内ではやらないで下さいよ。アホ(マリー)が居るから」
コイツなんで陛下の娘さんを公然とアホって言えるんだよ!

「そんな事は分かってるよ。この世でアイツにだけは知られちゃダメなんだから」
「だからといって芸高校(芸術高等学校)でもダメですよ」
何でよ!?

「あそこには盗人が居る。一人だけとは限らないし、ソイツだってまだ現役かもしれないじゃん(笑)」
「お前、殺すぞ!」
「アイリーンちゃんは大丈夫だよ……でもその他は分からんけど」
はい陛下、私はもう真人間です♥

「でもそうかぁ……そーなるとやっぱり城と学校以外での練習部屋が欲しいなぁ」
「リュカさんの趣味の部屋なら税金を使ってもらっても構わない……寧ろもう少し税金で贅沢をして欲しいんですけどね。メインで使うのは一般人のプーサンでしょ。税金は使えませんよ」

「そんな事は解ってるよ。でも大丈夫……以前から目を付けてた物件があるんだよね」
「アレっすか……グランバニア城東城壁の大通りから少し奥に入ったとこにある3階建ての?」
って事は城前地区でしょ。3階建ての建物じゃお値段も一流じゃぁ……?

「高いっすよ……多分。どんなに安く見積もっても300万(ゴールド)台はするでしょうね。しかも今の持ち主は絶対に吹っ掛けてきますよ。金持ってるんですかぁ?」
「あそこの持ち主がアレだし、プーサン()の魅力があれば譲ってもらえるでしょう」
陛下の魅力なら……って言いたいけど、300万(ゴールド)台でしょ。それは流石に……

「まぁそうですね。エサに引っかかれば2~3週間ってところですかね?」
2~3週間で300万(ゴールド)が如何にかなるの!?
驚きつつ陛下とクズ宰相の顔を見たが、二人とも何かを企んでいる様な笑顔で楽しんでいる。きっと金銭以外で何とかなるのだろう。

「さて、そうと決まれば今日はもう大丈夫だよね。学生達は明日からに備えて遊びにでも行っておいで。ウルフ宰相……お小遣いでもあげてよ」
「何で俺が金出さなきゃならないんだよ!?」

「だって『グランバニア王国宰相兼国務大臣閣下の悪口を言っちゃおう委員会』なんて委員会を立ち上げてくれたんだよ。お前有りきの委員会じゃん。主役が金を出さなくて如何(どう)する?」
「悪口を言われてるんだよ、俺は!」

「はははっ(失笑) アンチも人気のバロメーターだぞぅ」
「知るか! もう150(ゴールド)も出してんだ! これ以上出す義理なんて無い馬鹿!」
確かに自分の悪口を言わせる為に金を出すのは嫌よねぇ。

「何だ、もう金出してたの? じゃぁ少しくらい増えたって問題ないよ。150(ゴールド)……う~ん……きりの良い数字にして、あと850(ゴールド)出せば?」
「ご、合計1000(ゴールド)って……出すわけねーだろ!!」
出しなさいよ!

「えー……だってきりが良いじゃん。う~ん……じゃぁあと350(ゴールド)は?」
「それだって500(ゴールド)だろ! そんなにこの馬鹿共には要らん!」
要るわよ!

「ならあと50(ゴールド)だそうよ。200(ゴールド)なら程よくリフレッシュできるだろうしさ」
「……あと50(ゴールド)ぉ? う~ん……まぁそのくらいなら……」
え、50(ゴールド)もくれるの!?

「ほら50(ゴールド)! もう俺に(たか)るなよ! あとリュリュさんには、この委員会の事を知られるなよ! マジでテロ行為を仕掛けてくるやもしれん」
「僕の娘をテロリスト認定するな!」

「大差ないだろ。そんなことより、ほらボンクラ共。金やるから、さっさとこの部屋から出て行け。卒業式の日程調整で、また仕事の話をするんだ」
「へいへい、出て行きますよぉ~だ。ねぇねぇ何食べる? 私お寿司食べたいわぁ」
キャバ嬢が出口に向かいながら今貰ったばかりの50(ゴールド)札をヒラつかせて我々に夕食の相談を持ちかける。

「あ……アイリーンちゃん。ちょっと君にだけお話があるんだ。直ぐ済むから時間くれる?」
「は、はい!」
私も退室しようと皆の後に付いて行ってたが、突如陛下から呼び止められた。何かしら……別件でお仕事の依頼かしら♥

「じゃぁ私達はお城の入り口で待ってるわね」
「うん。終わったら直ぐに行くわ」
ピエ(ピエッサ)の言葉に返答して、陛下の方へと向き直す。

「……リューナの事、気付いてたんだ」
「あ……か、顔に出てましたか?」
リューナ嬢が陛下の娘さんである事は、気付いて無いように振る舞っていたつもりだが、陛下には気付かれていたらしい。

「コイツの“『娘さんを僕にください』って言う”って言った時の君の表情()で察した」
「流石陛下ですわ……誰にも悟られないように気を付けていたつもりでしたが……申し訳ございません。以後は一層気付かれないように努めますわ」

「うん。まぁ多分、先刻(さっき)のアレで気付く奴は、そうは居ないから大丈夫だと思うよ。あんまり重く受け止めないでね。でもリューナの安全を考えたら、なるべく知ってる人を少なくしておきたいから、その辺はよろしく頼むよ」

「はい、肝に銘じます。それと……リューノさんが、リューラさんの腹違いの姉妹である事も本日知ってしまいました。コレに関してはリューラさんが自らバラしました故、先程の連中も知っておりますわ」
「あぁそうなんだ。じゃぁリューノの妊娠関係の事も……?」

「はい。ご懐妊なさってる事はあの場に居た皆が知ってます。お相手が誰なのかは解りかねておりますが、かなりのクズ野郎である事も皆が知っております。陛下は勿論リューノさんの彼氏の事をご存じなのですよね?」

「うん、知ってる。(すげ)ーヘタレ(笑) 男としては最低野郎。仕事は出来るんだけどねぇ……」
「そうなのですか……」
「……………………」

隣に居たクズ宰相が何かを言いたげだったが、珍しく他者への誹謗中傷を我慢してる様だ。
流石に姫君の彼氏の事だから、お父上の前で悪く言うのを控えてるのだろうか?
そんなタマだったかしら? 陛下の前でも気にせず、言いたい事を言う性格の悪さが売りの人間だったはずだけども?

「じゃぁ取り敢えず用件はそれだけ。皆と一緒にご飯を食べてきて」
「あ……はい。それでは……」
私は慌てて頭を下げてその場を離れようとした……

「ああそうだ、先刻(さっき)言い忘れた。明日プーサンが芸高校(芸術高等学校)に行くから、卒業式の相談や練習が出来る部屋を確保しておいてね。それからリューナに『魔技高校(魔法機械技術高等学校)と共同での卒業式制作だから、そっちの学校からもあと1~2人は人員を出してね』って言っておいて」

「り、了解致しました。何やら魔技高校(魔法機械技術高等学校)からは新発明の品を活用して頂けるとの事ですし、機密保持が出来る部屋を用意して放課後待っております。プーサン社長にはよろしくお伝え下さい」

再度陛下に頭を下げて踵を返す。
隣のクズ宰相は頗る顰めっ面だ。
一体何が気に入らないのだろうか?

アイリーンSIDE END



 
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