ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第101話 予想していなかった再会!切れ味勝負、イッセーのナイフVS聖王剣コールブランド!中編
前書き
遅れて申し訳ありません、ポケモンの新作をやっていました。
マスカーニャの姿が小猫のヘルキャット姿に見えて仕方がない……なのでニックネームは『コネコ』にしました。メスになるまで粘りました。
ついでに赤龍帝の鎧に多少似ているグレンアルマは『イッセー』というニックネームにしてコンビで使っています。
side:小猫
「さて、改めて皆様に自己紹介をしましょう。私の名はアーサー・ペンドラゴン、ペンドラゴン家の次期当主にてルフェイの兄でもあります。以後お見知りおきを」
「アーサー様に使えるメイドのエレインでございます。よろしくお願いいたします」
「ご丁寧にどうも、俺は……」
「知っています、貴方は美食屋イッセーですね。妹がお世話になりました、心ばかりのお礼としてこちらをどうぞ」
微妙な空気からアーサーさんとエレインさんが自己紹介をしました。イッセー先輩も自己紹介をしようとすると既にアーサーさんから知っていると言われて彼は先輩にお礼を言うと三段に分かれたティースタンドを取り出しました。
「そうか、今は午後4時ごろ……アフタヌーンティーの時間か」
「流石ですね、イギリスには時間によって様々な時間にティ―タイムを楽しむ習慣がありますが、中でもアフタヌーンティーは軽食も用意します。サンドイッチは『Pippi』、ケーキは『Prince』、スコーンは『マジックハニー』で買った物です」
「なっ……!?世界料理人ランキング8位の天才パン職人『ぴぴ』のいる『Pippi』のサンドイッチ!?更に同じくランキング6位の『あんよJr.』のいるスイーツ店『Pippi』のスコーン!?トドメにランキング11位の『蜜朗』の『マジックハニー』のケーキ!?さらっととんでもないモン出しやがったぞ!?」
アーサーさんが出した軽食を見て先輩がそう叫びましたがそうなるのも無理はありません。全員少し調べればいくらでも情報が出てくるほどの超有名人です。
私達はそのティ―スタンドを宝物を見るような目で見つめていました。祐斗先輩や朱乃先輩ですら目を輝かせています。
「なんだ、そいつらは有名なのか?」
「この世界には沢山の料理人がいるんですが彼らは実力でランキングが付けられているんです、その中でも最高クラスの実力を持った100人の料理人がいて彼らの料理はイッセー君でも最悪数年待たないと予約が回ってこないくらいの絶大な人気を持っているんです」
「はー、そんな凄い料理人たちが作った料理が三品も出てきたって訳か。通りで全員目の色を変えるはずだ」
最近この世界に来たアザゼル先生に祐斗先輩が世界料理人ランキングについて説明していました。
「ほ、本当に食べていいのか!?どれもこれも簡単には買えない物ばかりだぞ!?」
「構いません。基本的に私は紅茶さえあればいいので」
「そ、そうか……なら遠慮なく貰うな」
イッセー先輩はいつもより早く折れましたが世界料理人ランキングの上位人の料理を前にしたら無理もないですね。正直私も早く食べたいって思ってます。
「では早速頂こう!」
「私はケーキから貰うわ!」
「待て二人とも!アフタヌーンティーは食べる順番が決まっているんだ。まずはサンドイッチから食べて次にスコーン、その後にべストリーの順番で頂くのが作法だ」
ゼノヴィアさんとイリナさんに待ったをするイッセー先輩、実はアフタヌーンティーには食べる順番があります。流石イッセー先輩、食の知識が豊富ですね。
「イッセー、べストリーってなに?」
「小麦粉にバターやショートニングなどの油脂、塩、砂糖、卵を加えてパイ状に焼き上げたお菓子などの事だ」
「へぇ、おしゃれな言い方ね」
ティナさんがべストリーについてイッセー先輩に質問したので彼は丁寧に答えました。この場合だとケーキの事ですね。
「じゃあこの世の全ての食材に感謝を込めて……頂きます!」
『頂きます!』
私達は合掌してまずはサンドイッチから頂きます。定番のハムとチーズが入ったモノ、卵、レタスやトマトの野菜などシンプルなモノが多いですね。
「はむっ……!?な、何ですかコレは!?パンがふわっふわです!今まで食べてきたパンが硬く感じてしまうくらいにふわっふわです!?」
「むう……『Pippi』のパン作りはオリジナルのやり方があるようだがどうやったらこんなにふわふわで美味しいパンになるんだ?パンだけでもいくらでも食えてしまうぞ!」
私はサンドイッチに使われている食パンのあまりのふわふわ感に驚いてしまいました。雲みたいにふわふわでありながらもパン自体に濃厚な味があって噛めば噛むほど美味しくなっていきます。
イッセー先輩もパンだけでもいくらでも食べてしまえると言っていますがまさにその通りですね。
「使われている食材も凄い高級品ばかりだよ!見た目はシンプルだけどだからこそ食材のそのままの味わいがダイレクトに伝わってくるんだ!」
「まさに『シンプルイズベスト』ですわね……こんな美味しいサンドイッチを食べたらそれだけで満足してしまいそうですわ……」
祐斗先輩は具材も凄い高級品であることに驚きました。でも食材に頼った美味しさではなくそれらを最大限まで美味しく調理している腕前に驚いているようですね。
私もビックリです。唯レベルの高い食材を使っただけでは本当の美味しさは引き出せません、しかしこのサンドイッチは見た目こそシンプルですがそこらの高級料理に負けないほどの最高の逸品になっています。
もしこのサンドイッチ一個に一万円出せって言われても直ぐに納得して出してしまいますよ。朱乃先輩の言う通りシンプルなものほど良いってことですね。
ただそのシンプルさも凡人では只の一般的な一品になってしまいます。ぴぴさんの腕があってこそこのサンドイッチになるんでしょうね。
「このスコーン、単品で食べても味が濃厚ですっごく美味しいわ!サックサクの触感としっとりした触感、様々な触感があるのに一切不快に感じないで完璧に合わさってる!」
「付け合わせのクロテッドクリームもあっさりとしていてスコーンによく合うな。紅茶で口を流せばまた食べれてしまう。これが無限ループか!」
「確かにお腹いっぱいになっても食べたくなっちゃいますね。まあそれだと本来食べ過ぎを抑えるための間食であるアフタヌーンティーの意味は無いですけど……でも止められませ~ん♡」
イリナさんはスコーンを目を輝かせながら食べていました。シンプルな見た目ですがその味わいは濃厚かつあっさりしていてしかも嘖々としていながらしっとりとしたさまざまな触感が口いっぱいに広がります。
ゼノヴィアさんはクロテッドクリームを付けて食べていますがコレを付けると更に味わいが奥深くなるんですよね。さっきのサンドイッチもそうですけどシンプルなものほど料理人の腕が要求されると思いますが流石ランキング6位のあんよJr.さんが作ったモノ……格が違いますね。
アーシアさんの言う通りアフタヌーンティーは昼食と夕食の間が長かった昔の時代に空腹によって食べ過ぎが起こるのを防ぐ目的もあったそうです。でもこのスコーンを食べたら手が止まらなくなってしまいますね。
「ん~♡あんま~い♡笑みが浮かんじゃうわぁ♡流石ランキング11位のお店ね、こんなに美味しいケーキは生まれて初めてだわ!」
「舌が蕩けそうですぅ♡こんなの食べちゃったら舌がバカになっちゃいますよぉ♡」
「普段甘いモンは脳への糖分補給の為しか食わねぇがこのケーキは美味いな。これが世界料理人ランキングの上位人の実力か……酒を造ってる人はいないのか?」
ケーキを食べたティナさんはすっごい至高の笑みを浮かべていますが私もそうなっちゃいますよ。本当に舌がとろけるくらいに美味しいです。
ギャー君も満面の笑みを浮かべてケーキを食べています。普段はネガティブな発言もしちゃうギャー君ですがそんなのを感じさせないほどに幸せそうです。
アザゼル先生は世界料理人ランキングの上位の方々の実力に驚いているようです。その後にお酒関係の料理人がいないかと聞く辺り先生らしいです……
「お気に召してくださったようですね。ルフェイの恩人に対してこの程度のおもてなししか出来なくて誠に申し訳ありません」
「いやいや!世界料理人ランキングのトップ陣の料理なんて俺でもめったに食えないんですから!むしろ最高のもてなしですよ!いやー、ルフェイを助けてよかった!」
アーサーさんはぺこりと頭を下げましたがイッセー先輩は全力でいやいやと手を振ってアーサーさんにお礼を言っていました。世界料理人ランキングの上位の人たちの料理なんて滅多に食べられませんからね。
「し、師匠……それだと食べ物の為に私を助けたみたいじゃないですか……」
「あっ、いや今のは冗談だよ!俺は……」
「あはは、分かってますよ。師匠がそんな人じゃないって事は。というか慌てすぎですよ、師匠は相変わらず変な所で抜けてますね~♪」
「コイツ……」
「きゃー♡」
ルフェイさんにそう言われたイッセー先輩は慌てて弁解しようとしますが、それを見ていたルフェイさんが楽しそうに笑いだしました。
自分がからかわれていると分かったイッセー先輩はルフェイさんの頭から魔女の帽子を取って髪をぐしゃぐしゃと結構強い力でわしゃわしゃしました。
でもルフェイさんはそれを嬉しそうに受け入れていました。なんかいいですね、ああいう恋愛が絡まない兄妹みたいなやり取り……
まあ私は妹じゃなくお嫁さんですけどね。
「ふふっ、ルフェイにも信頼できる人が出来て安心ですね。昔は私にべったりだったのに……」
「お、お兄様!そう言う事は言わないでください」
「……そんなに大事な妹なら何で黙って出て行ったんだ?本来家族同士のいざこざに首を突っ込むことはしないんだが、仮にも師匠としてルフェイの面倒を見てきたんだ。キチンとその辺を話してもらうぜ」
「そうですね、貴方になら話してもいいでしょう」
アーサーさんはルフェイさんとイッセー先輩のやり取りを見て微笑ましいものを見る目で笑みを浮かべました。
それに対してルフェイさんは照れながら「やめてくださいよー」と言った感じでしたがイッセー先輩は鋭い視線をアーサーさんに向けました。
まあ普通はルフェイさんとアーサーさんの問題なのでそこに赤の他人が首を突っ込むのはおかしいですが、先輩は彼女の師匠として面倒を見てきたからそうも言いたくなりますよね。
それを聞いたアーサーさんはなぜ自分が黙ってルフェイさんの元を去ったのか語り始めました。
「先ほども言いましたが私はペンドラゴン家の次期当主として期待されてきました。そして当主には伴侶がいて私は様々な貴族の娘から求婚をされていたのですが……」
アーサーさんはそう言うとエレインさんに視線を向けました。二人の顔がほんのり赤くなっていますがコレはもしかして……
「二人は付き合っているのか?」
「はい、将来結婚することを前提に付き合っております」
「キャー!当主とメイドの禁断の恋!燃えるわー!」
ゼノヴィアさんの発言に肯定するアーサーさん、メイドさんとの身分を超えた禁断の恋……こんなの女の子なら好きな話じゃないですか!女性ならティナさんみたいな反応をしちゃいますよ。
「しかし私の父は格式を重んじる人で身分の低いメイドを妻にするなどペンドラゴン家に傷を付けるつもりかと激高しました」
「面子に拘るお父さんなんだな」
「まあ貴族ならそういう考えの人も多いわよね。悪魔は身分とか関係なしにハーレムにしようとする男性も多いけど」
アーサーさんのお父さんは二人が結ばれることを反対したそうです。イッセー先輩は面子を重んじてる人だと言い元貴族であったリアス部長も貴族ならそういう人もいると言いました。
まあ人間の貴族と悪魔の貴族では違いもあるのでしょうけどね。
「あの、こういう言い方は失礼だと思うんだけどエレインさんを側室にすればいいんじゃないの?貴族ならそういう事は出来るでしょう?」
「私はエレイン以外の女性と関係を持つ気はありません。彼女以外の女性など考えられないからです」
「うわぁ……かっこいい……」
イリナさんが中々失礼なことを言いましたが確かにペンドラゴン家ほどの力を持った貴族なら妾に出来ると思いました。
でもエレインさん以外には興味が無いとキッパリ言うアーサーさんをカッコいいと思ってしまいました。
……あっ、別にそれでイッセー先輩が優柔不断とか言わないですからね。私達は望んでそう言う関係を結んでほしいと彼に言ってるので全然問題ないです。
「……彼を見てると俺が不純極まりない存在にしか思えなくなってきたぞ」
あわわ、案の定イッセー先輩も思う事があったのか表情を暗くしてしまいました。
「イッセー先輩!私達は好きでハーレム作ってほしいだけなので考えすぎないでください!」
「そうですわ。アーサーさんはああいう考えで良いのであって、わたくし達は全員が納得してるから不純じゃないですわ」
「はい、私は小猫ちゃんや朱乃さん、イリナさんも好きですから皆で家族になりたいです」
「そうだよ、イッセー君!皆で幸せになろう!」
私を含めたイッセー先輩の恋人たちが全員で彼を励ましました。
「ははっ、済まないな。同じ男としてアーサーさんがカッコいいと思ってつい比較してしまった。心配しなくても皆との関係を無くそうなんて思わないさ。特に小猫ちゃんと朱乃とは一線超えちゃってるし最後まで責任を取るつもりだ、心配をかけてすまなかったな」
「はい、それでこそイッセー先輩です!」
イッセー先輩が笑顔を浮かべてくれて安心しました!まあそもそも一人だけだと夜のアレが大変ですし複数でも足りないくらいなんですよね。
(あんな求愛を一人で一身に受けたら壊れちゃいます♡)
(でも彼に壊されるなら本望ですわ♡)
「小猫ちゃん?朱乃?急に惚けた顔をしてどうしたんだ?」
おっといけません、つい妄想に入ってしまいました。どうやら朱乃先輩もそういう想像をしちゃったみたいですね。
「……あの話に戻ってもよろしいでしょうか?」
「あっすみません。どうぞ続きを」
アーサーさんに咳払いされてイッセー先輩は頭を下げてそう言いました。
「私とエレインの関係を認めない父は彼女を私から引き離そうとしました。当然反発した私は彼女を連れて家を飛び出したのです」
「駆け落ちですね!」
家を飛び出したと言ったアーサーさんにアーシアさんが目を輝かせながら駆け落ちと言いました。女の子なら一度は憧れるシチュエーションですね。
「その後は暫く彼女と当てのない旅をしていたのですが色々あって私はこの世界に来る事になったのです」
「急にはしょったな!?」
「これ以上話すと唯の惚けになってしまいますからね。例えば追手から身を隠す為に入った洞窟でエレインと……」
「あっ、分かりました。もう結構です」
アーサーさんの言葉に察したイッセー先輩は顔を赤くして話を中断させました。心なしかエレインさんも顔を赤くしていますし……
「でもアーサーさん、イッセー君の事を知ってるなら弟子であるルフェイさんの事も知っていたんじゃないんですか?」
「ええ、知っていましたよ。流石に最初は驚きましたが……」
「なら何で今日まで会いに行ってあげなかったんですか?彼女は貴方を探していたというのに……」
「そうですね。でも私がルフェイに何も告げずに去ったのは彼女の未来を潰したくなかったからです」
祐斗先輩がアーサーさんにそう質問すると彼はルフェイさんの未来を潰したくなかったと言いました。
「ルフェイは優しい子です。もし私が家を出ると知れば必ず私についてくると言うと思ったのです。この子には素晴らしい魔法使いとしての才能があった、その才能が生かせる道を私の我儘に突き合わせて無くしたくなかったのです」
「お兄様……」
「しかし私は貴方の執念を甘く見ていました。知ってか知らずか貴方までこの世界に来ていたんですから」
「当然です!私は師匠に鍛えてもらってメンタルもアップしていたんですから!」
ルフェイさんは胸を張ってえっへんと言いました。私より大きな胸がプルンと揺れたのにイラッとしたのは内緒です。
「ですがその頃には私には使えている人がいたためルフェイには会えませんでした。なぜならその方の活動している場所がグルメ界で私もそこに向かわなければいけなかったからです」
「えっ、お兄様は誰かに仕えているんですか!?それにグルメ界に入れるんですか!?」
「ええ、最初は何度も死にかけたので必死に環境に適応するための特訓を繰り返し行い、等々グルメ界でも活動できるほどには強くなれました」
「す、凄いです……」
なんとアーサーさんはグルメ界に入れる実力者だったそうです!私達はまだ修行中なのに……一体どんな特訓をしたのでしょうか?
「しかしルフェイも強くなってきましたし私も修行がひと段落着いたのでそろそろ会ってもいいころ合いだと思いました。そして貴方たちがメルクマウンテンに向かったという情報を得た私は必ずここに来るだろうと予想して先回りしていたという訳ですよ」
「なるほど、そういう事だったんですね」
だからヘビーホールの最下層に来ていたんですね。どこで情報を得たのかが気になりますがG×Gにはそういう情報を扱う人が多いから案外簡単に情報が手に入るのかもしれません。
「それにここにはこれがありますからね」
アーサーさんは懐から金色の石を取り出しました。
「お兄様、何ですかその石は?」
「これは『メルクの星屑』と飛ばれている砥石ですよ」
「えっ!?メルクの星屑!?食材じゃないのか!?」
アーサーさんの言ったメルクの星屑と言う言葉にイッセー先輩は仰天した様子を見せましたが私達も驚きました。だってまさか砥石だなんて思わないじゃないですか!
「もしかしてその砥石って食べられる砥石なのか?」
「試してみますか?」
「いいのか?じゃあ遠慮なく……」
イッセー先輩はアーサーさんからメルクの星屑を受け取るとガブっと噛みつきました。
「硬ったぁ……!普通に砥石じゃねえか!?」
「じゃあメルクの星屑は食べられないって事ですか!?」
イッセー先輩は涙目でそう言ったので私はメルクの星屑は食べられないのかと思ってしまいました。
「いやでもなぁ、親父が食べられない物をリストに載せるか?そこまで意地悪だとは思わねえけど……」
「確かにグルメ細胞は食べてパワーアップするのに食べれない物を探させるなんて事は一龍さんならしないと僕も思うよ」
「ならメルク本人に聞けばいいのではないですか?向こうの方で作業をされていますよ」
「えっ!?アーサーさん、貴方メルクさんに会ったの!?」
イッセー先輩は食べられない物を取りに行かせるほど一龍さんは意地悪じゃないと言い、祐斗先輩も同意しました。
私も食べてパワーアップするグルメ細胞の性質上態々食べられない物を捕獲してこいなんて一龍さんがさせるとは思わないです。
それに微かにですけどメルクの星屑からも何か声が聞こえるんですよね。だから食材だと私も思うのですがその肝心の食べ方がまだ聞けないんです。
どうしようかと思っていたらアーサーさんがメルク本人に聞いたらどうかと言い、リアス部長がメルクさんに会っているかと彼に聞きました。
「会ったというよりは見つけたという感じですね、向こうで作業をされていますよ。声をかけても反応しなかったので直に立ち去りましたが……」
「良かった、メルクさんは生きていたんですね」
「これでルキ殿に良い報告が出来るな」
「でもどうしてこんな危険な場所で作業をしているんだろう、それもルキさんに何も言わずに……おかしくない?」
「まあ本人に会って話を聞くしかないな」
アーサーさんはメルクさんに会ったのではなく見つけたと答えました。メルクさんが生きていた事を知ったアーシアさんとゼノヴィアさんはルキさんに良い報告が出来ると喜びました。
でもなぜこんな危険地帯でしかもルキさんに何も言わずに何年もいたんだとイリナさんが首を傾げました。その謎を知るにはイッセー先輩の言う通り本人に会って話を聞くしかないですね。
「あっ、そうだ。アーサーさんは異次元七色昆虫を持っているのか?」
「異次元七色昆虫?もしや七色に光る昆虫の事ですか?」
「ああ、そうだ。俺はシュウとマイっていう二匹の蝶を飼っているんだ。その昆虫たちのお蔭で俺達は二つの世界を行き来しているんだ」
「なるほど、貴方たちはそう呼んでいるのですね。結論から言えば私も異次元七色昆虫は知っています。しかし私は持っていません、私の主が所持しています」
イッセー先輩はアーサーさんに異次元七色昆虫を持っていないかと聞きました。彼がこの世界にいるのなら間違いなく関わりがあるはずです。
予想通りアーサーさんも異次元七色昆虫に心当たりがあるようですが、自分ではなく仕えている主が持っていると答えました。
「お兄様の主さんってどんな方なのですか?」
「そうですね、あの方は一言で言えば強いですね。今だに勝てた試しがありません」
「えー!?そんなに強いんですか!?お兄様は『アーサー王の再来』とまで呼ばれる凄腕の剣士なのに!?」
「ええ、彼は文字通り別格です」
アーサーさんが仕えている人は相当強いみたいですね。
「そんなに強いのか?俺も興味が湧いてきたな、名前はなんていうんだ?」
「私が仕えているお方の名前は……『ヴァーリ』と言います」
その瞬間でした。イッセー先輩は一瞬でアーサーさんから距離を取るとナイフの構えをします。私達も全員が戦闘態勢に入りました。
動けないのは思考が停止してしまったルフェイさんと事情を知らないアザゼル先生だけでした。
「お前ら、どうしたんだ?」
「……お前、美食會か」
「ええ、立場上ではそうなりますね」
アザゼル先生は最初何が起こったのか分からなかったようですが、イッセー先輩の美食會という言葉に反応してすぐに戦闘態勢に入りました。
「おいイッセー、美食會って言えば確かG×Gで暗躍してるっつう……」
「ええ、俺達の敵です」
「お兄様、嘘ですよね……?お兄様が美食會の仲間なんて……」
「嘘じゃありません。ヴァーリが美食會ならその方に仕えている私も同じく美食會なのはおかしいことではないでしょう?」
「じゃあエレインも……」
「はい、私も美食會の一員です」
「そんな……!?」
アザゼル先生は前に危険な集団として警戒するようにと説明を受けた美食會の事をイッセー先輩に確認しました。
ただルフェイさんだけは未だ信じられないのか嘘だと言いますが、無情にもアーサーさんとエレインさんは自分達が美食會の一員だと告げます。
「どうしてですか!?美食會は食材を牛耳ろうとしている悪い奴らなんですよ!」
「勘違いをしないでほしいですが私はヴァーリが美食會にいるから仲間になっているだけです。奴らの目的などには賛同していませんし興味もありません」
ルフェイさんが美食會は悪い奴らの集まりだと言うとアーサーさんはあくまでも自分はヴァーリという人がいるから美食會にいるだけで、仲間意識は無いと答えました。
「私が興味あるのは強者との戦い……特にヴァーリが期待しているという貴方は実に興味深い」
先程の優しい笑みは消えて獰猛な笑みを浮かべるアーサーさん、その目をイッセー先輩を捕えていました。
「……そっちが本性ってか?」
「ふふっ、どうでしょう?」
イッセー先輩はアーサーさんを睨みつけますが、彼は眼鏡の位置を指で直しながら楽しそうに笑いました。
「ルフェイに会いに来たって言うのも嘘なのか?」
「それは本音ですよ、あの子は私にとって可愛い妹ですから。今回は貴方の方がついでですね」
「ついで扱いかよ。まあ妹の事を真剣に心配してる兄貴なのは本当みたいだから安心した」
イッセー先輩は少なくともアーサーさんがルフェイさんを案じる兄であった事に安心した様子を見せます。流石にそれすらも嘘だったらルフェイさんが可哀想です。
「でもそんな大事な妹よりもヴァーリの方を優先するのか?」
「ええ、あの方は私が仕えたいと思った唯一の人です。騎士が王を優先するのは当たり前の事」
「成程、お前にそこまで言わせるか。益々あいつに会うのが楽しみになってきたぜ」
イッセー先輩は歩き出して同時にアーサーさんもイッセー先輩に近づいていきます。そしてお互いあと一歩までの距離まで接近しました。
「……それで戦るのか?」
「勿論、貴方を味見させていただきますよ」
アーサーさんはそう言うと光り輝く聖剣を取り出しました。
「あれはまさか噂に名高い『聖王剣コールブランド』!?」
「なんて神々しい輝き……ゼノヴィアのデュランダル以上だわ!」
ゼノヴィアさんとイリナさんは聖剣使いなのであの剣の名前を言い当てました。悪魔である私達にとってその放たれる聖なる光はあまりに強く、浴びているだけで調子が悪くなってしまいそうなくらいです……!
アーサーさんはコールブランドを振るうと次元に割れ目が生まれました。
「コールブランドは次元を斬り開く力を持っています、この先の次元に広い空間を作りました。私と貴方がここで暴れたら崩れてしまい生き埋めになってしまいますからね」
「はっ、態々うってつけの舞台を用意してくれたのか?気が利くじゃねえか」
「ではいきましょうか」
「やめてください!お兄様!師匠!」
二人はその穴に入ろうとしましたがルフェイさんが止めました。
「どうして二人が戦わなければならないんですか!」
「ルフェイ、私は貴方たちの敵である美食會なのですよ。先ほどもそう言ったでしょう」
「そんなの私は信じたくありません!」
「なら貴方は家に帰りまさい」
「えっ……」
ルフェイさんはアーサーさんのその一言で叫ぶのを止めました。
「貴方は私を見つけるために家を出た、そしてこうして目的は達成されたんです。もう貴方が旅をする必要はないでしょう」
「そ、それは……」
「それとも私に私に付いてきますか?今の貴方なら美食會でもやっていけるでしょう」
「そんなの嫌に決まってるじゃないですか!」
「なら貴方はどうしたいんですか?貴方自身は何がしたい?なぜここに居る?それを答えられるのですか?」
「……」
「答えられないのなら家に戻りなさい。この世界は己の信念を持たぬものが生きていけるほど甘い世界じゃない」
アーサーさんはそう言ってルフェイさんを突き放しました。
「……さて、お待たせしました」
「随分な言い方だな。お前を探して必死にやってきた妹にもうちょっと優しさは無いのかよ」
「大切な妹だからこそハッキリと言ったのです。それに貴方だって同じような事を思っていたのではないですか?」
「……」
アーサーさんを非難するイッセー先輩ですが、あまり強い言い方ではないです。もしかしてイッセー先輩も思う事があるのでしょうか?
「ルフェイ」
「師匠……」
「俺は今からお前の兄ちゃんと戦ってくる。その間にお前はこれからどうしたいかを考えておけ、いいな?」
イッセー先輩はそう言うとアーサーさんと共に次元の穴の中に入っていきました。
「イッセー……」
「リアス、のんびりしている暇はありませんわ!」
「まだ彼女が残っています!」
リアス部長は心配そうに次元の穴を見つめていましたが、朱乃先輩や祐斗先輩は残っているエレインさんに警戒します。勿論私達も警戒していつでも戦えるようにしています。
「なるほど、やる気は十分という事ですね。ならば僭越ながらこの私、エレインと蠍魔牛で皆様のお相手をさせていただきます」
エレインさんはそう言うと指を鳴らしました。すると上から何か大きな物体が降ってきました。
「これは……!?」
「この猛獣は『蠍魔牛』という生物です、まだ子供ですがこのヘビーホールでは最強の実力を持っています。この辺りに来た時に襲い掛かってこられたのでアーサー様が持つ『支配の聖剣』の力で大人しくなって頂きました」
「支配の聖剣だと!?教会が長年探し続けてきた失われたエクスカリバーだぞ!?」
「エクスカリバーの中でも最強と言われている支配の聖剣をアーサーさんが持っているって事!?」
エレインさんは落ちてきた猛獣の事を説明してくれましたがゼノヴィアさんとイリナさんは支配の聖剣という言葉に反応しました。
前に教えてもらったのですが教会には7本の別れた聖剣があったそうですが、支配の聖剣だけ行方知らずになっていたそうです。
それをアーサーさんが持っていたなんて想像もしませんでした。
「気を付けろ、皆!支配の聖剣はどんな存在でも操ることが出来るんだ!」
「そうみたいね、あの子目が虚ろになっているわ」
ゼノヴィアさんの注意にリアス部長は蠍魔牛の目が虚ろになっていると答えました。
「さあ、貴方たちの力を見せてください」
「ぶもぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
エレインさんと蠍魔牛はそう言って私達に襲い掛かってきました。
後書き
小猫です。まさかアーサーさんとエレインさんが美食會だなんて……ルフェイさんが心配ですが今は目の前の相手の集中しないといけません。
イッセー先輩が負けるなんて思っていませんし、ここは私達が何とかします!
次回第102話『予想していなかった再会!切れ味勝負、イッセーのナイフVS聖王剣コールブランド!後編』で会いましょう。
次回も美味しく……ってなんでしょうか、この威圧感は?
あ、貴方はまさか……!?
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